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新生デオンの暇仕事  作者: kazfel
喜べ喜べ自らが陽光に満ちた大空を駈けるように
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ヨーロッパの火消し役

 オーストリア軍はイタリアに大軍を任せているのでロシアに援軍を頼むことにした。

 4月にフランツ・ヨーゼフ帝はワルシャワでニコライ1世と会談した。

「革命がロシアに持ち込まれてはかなわない。ヨーロッパの火消し役はいつでも引き受けるぞ!」

 すでにエルトリア国境近くのロシア軍は、進撃を開始した。西からのオーストリア軍と共にエルトリア軍を挟みうちした。

 7月にはコッシュートと政府はペシュトを離れ、ロシア軍はペシュトとブダ制圧した。

 粗暴なロシア兵たちは王宮を青白と黄色狼と赤竜が守っていたので入れなかった。

 町中を荒そうとすると金クマとパンダ、白狼の巡回で民家に入れなかった。兵士らはカフェ「テレーゼ」を目指した。

 

「いらっしゃいませ……」

 リアは汚れた軍服で垢まみれの顔、髭は手入れしてない。

 目を光らせたように凝視する兵士に後ずさりした。

 窓側まで待機した。

 広めの店内に風呂とは無縁の男たちが押し寄せ、リアを怪しい視線で見つめている。

 即座にキリルはコーヒーを兵士に渡し、リアはそのすきに調理場に入った。

 グーゲルフプフを集め、トレイに入れるだけのせ、兵士たちに配布した。腹を空かせているのか、彼らは無言でグーゲルフプフを食べ、ユーリのコーヒーもすぐに手をつけた。

 リアは調理場に駆け込んで「急いで何か作って!」と彼女たちをせかした。

「また兵士が来たの?」

「凄い厄介のがいる!」

 腐りかけのグーゲルフプフも砂糖を重ねておいて、リアは兵士に渡した。

 こまめに調理場に通い、できたてのチョコレート・タルトも配った。満員の中、コーヒーもでき次第兵士らに渡し、スイーツも数が揃ったので手当たり次第、配布し続けた。

 兵士たちは笑顔になって店を出て行った。

「終わった……」

 リアは放心した。

「ノーム! シルフ!」

 キリルは土色の小人の集団を呼んですべての窓を開けさせた。緑色の小妖精で風を送り、悪臭とホコリごと飛ばした。

「明日からパンダに入り口を見張らせるから、もう大丈夫よ」

 カムナギは笑顔でリアを抱き寄せた。

「お父さん、今まで兵隊に取られた分、王室に請求してよ!」

 ルカはカウンター席でへばっているサラマンダーマシロに怒鳴った。

「明日、行くぜ。デオン、お前も来いよ」

「いいけど、皇帝たちってウィーンにいたっけ?」

「カフェで聞けばいいんだぜぃ」

 トカゲの意見はもっともだと、リアは思った。

 7月中旬。ウィーンの町中は瓦礫があふれ、馬車も一部分しか通れなかった。

 カフェに入ると「マシロちゃん、デオンちゃん、久しぶり」とマスターが喜んだ。

「デオンさん、もう来ないと思いましたよ」

「胸どつかれて痛い目にあったからなぁ。それよか、皇帝たちって王宮にいるのか?」

「いいえ。ボヘミアのオルミュッツに新皇帝はまだいますよ」

「我々も皇帝が代わってあせったぞ。前皇帝は善良だったのに我々はやり過ぎてしまった」

 学生と労働者たちは反省会をしていた。

「善良ねぇ……」

 エルトリア侵攻を命じた現皇帝は悪人だと決まったのでデオンは文句の文言を思案した。

「前皇帝ならプラハ城にいるぞ」

「もういいぜぃ」

 マシロが断った。

 8月13日。ヴィラーゴシュでエルトリア軍は破れて降伏した。コッシュートはトルコへ亡命した。アンドラーシ伯はロンドンへ行った。

 10月6日、皇帝フランツ・ヨーゼフの名の元でオーストリア将軍ハイナウによって、銃殺と絞首刑が次々に執行された。

 前首相のバッチャーニや閣僚、要人100人以上のマジャール人が死した。

「血に染まった若き皇帝め! 好き勝手できるのは今のうちだぞ」

 客が騒ぐほど、門番のパンダが黒目で睨みをきかせたおかげで、カフェ「テレーゼ」の客足が戻っていた。

 オーストリア軍が駐留しているが、各守護聖獣の睨みで横暴を阻止できた。


 ボヘミアの暴動が鎮圧され、イタリアのヴェネツィアは共和制が倒された。


 独立戦争後のエルトリアはトランシルヴァニア及びクロアチア王国と分離され、セルビア人のいる南部ヴォイヴォデォディナも切り離された。

 エルトリア王国は国土が5分割され、それぞれを残ったハプスブルク帝国の1州となった。

 ウィーンの中央政府が派遣する知事の統治下に置かれた。

 独自の国会も内閣も奪われ、軍事的支配をうけた。

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