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新生デオンの暇仕事  作者: kazfel
喜べ喜べ自らが陽光に満ちた大空を駈けるように
52/185

蜂起

 参考文献

フランツ・ヨーゼフ 江村洋

 国民軍の中心は市民、学生、知識人で、プロレタリア労働者の暴動に対処するのが目的だった。

 請願書が認められたので市民は外でうかれ、踊り続けた。

 王宮内では「市民に屈服するとは何事だと」巻き返しを図る貴族の声が大きくなった。市民に戦意をもやす王族、貴族たちはメッテルニヒの後任に軍総司令官ヴィンディッシュ・グレーツ元帥に決まった。

『町が再びこんな状態にならないように、ウィーン市長から皇帝一家が市民にお姿を見せて騒乱を止めるように』との親書が届いた。

「これはいい案! 皇帝もあなたも馬車に乗って!」

 ゾフィー大公妃は怯えている皇帝とフランツ・カール大公を馬車に乗せ、皇妃マリア・アンナと息子のフランツを同乗させた。

 市中一巡の馬車をデオンらは麒麟と白狼で、上空からつけると、市民は皇帝をみると万歳と叫び大歓迎であった。

「革命中のフランス国民も国王を国の父としてみていたぞ」

「どのみち悪いのはメッたんだぜぃ」

 デオン頭上のサラマンダーマシロがぼやいた。

 皇帝、皇室万歳の歓声がわきあがり、満面の笑みで皇帝は市民に手を振っていた。


 3月15日にミラノ市民の蜂起(ほうき)の報が入り、18日には市内にバリケードを築いて、オーストリア軍と戦闘に入った。

 老ラデツキー将軍の3万5000の軍隊は不意をつかれ、イタリア人とエルトリア人を含めた混成部隊なため、後方のヴェローナなどの要塞地帯に引き上げてしまった。

 ヴェネツィアの市民の反乱でオーストリア軍は降伏した。

 22日、ミラノと同じ共和政府ができた。

 ブルボン政権パルマ公国とモデナ公国は君主が逃亡して、サルディーニャ王国へ合併された。

 23日にサルディーニャのアルベルト国王は4万5千の兵を率いてロンバルディアに進出した。

 ローマ教皇も反オーストリアで同調するアルプスからシチリアまで義勇兵が集まって北イタリア奪回を企てた。


 3月15日にエルトリア国民はメッテルニヒのロンドン亡命を知った。

 町を出た大勢の青年たちは大学生を巻き込み、印刷所で検閲なしで農奴解放、貴族特権の廃止、独立政府、国防体制の改革などの要求書と民族の歌を印刷させて大衆にばらまいた。

 デモ隊はブダの総督府の検閲の廃止、政治因の釈放、軍隊の不介入を要求した。総督府は承認した。

 ペシュトでは公安委員会がつくられた。

 国防軍を編成し、公共の建物からハプスブルク帝国の旗(黒と黄色)と双頭のワシの紋章を取り外した。

 ラテン語に代えてエルトリア語を公用語とした。

 3月23日には大貴族バッチャーニ・ラヨシュを首相とする内閣ができ、皇帝は4月7日にエルトリア独自政府を認め、4月11日にはポジョニ議会が審議したすべての改革法令を承認した。


 ボヘミアも自治権を求める動きが高まり、3月11日にプラハ市民は集会を開いて、エルトリアと同じ自治権をボヘミアにも与えるようにオーストリア皇帝に請願書を出した。

 チェコ民族主義者の歴史家パラッキーはオーストリア・スラブ主義を訴え、ドイツ語とチェコ語の同等性を認めさせ、臨時の自治政府をつくった。


 4月25日、温和なフェルディナント1世は周囲のタカ派に押されて憲法制定議会の招集の約束を破り、欽定憲法を発布した。

 フランツはゾフィーの計らいでイタリアのラデツキー将軍への旅路についた。29日に帝国騎兵隊の制服に身を固めイタリア戦線に入った。

 ウィーン市民はピラースドルフ憲法に憤慨していた。

 カフェ内でも学生たちが怒りに震えていた。

「結局、選挙なんてやらないじゃないか!」

「アホの皇帝だから強硬派に担がれたんじゃね」

 マシロはコーヒークリームを舐めた。

「皇帝批判はいかんなぁ、トカゲくん。いいお方なのに」

「あいつ、キノコとコケを研究している変な奴だぜぃ」

「トカゲだって、よっぽど変じゃないか」

 学生はマシロの背を叩いた。

「デオン殿は重騎兵とやり合うなんて、大した腕じゃないか」

 労働者たちが褒めた。

「遊び相手にはいい相手だったよ。本命はメッテルニヒの本だけど」

「本じゃ持ち帰りや置いても邪魔そうだぜぃ」

「だから、しばらく借りて読むんだよ。マシロだってエルトリアの国が人間から借りているようなものじゃないか」

 デオンはチョコレート・タルトを口に運んだ。 

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