リアの冬の舞踏会デビュー
1818年、冬になると舞踏会の季節でもあった。
皇帝夫妻はフランツ、この時にはライヒシュタット公爵として宮中席次に従って、舞踏会に参加させた。
皇帝一家の次席で、白い上着に聖シュテファン大勲章を胸につけ、青ズボンのライヒシュタット公爵は、人形のようでもあり凛々しい少年のようであった。
さっそく彼は舞踏会の注目の的となった。
舞踏会は宮廷舞踏会を頂点とし、各貴族主催の舞踏かいくつもあった。
デオンはメッテルニヒ主催の舞踏会に招待された。サラマンダーマシロはデオンの頭上に乗っかった。
淡い緑色のゆったりとしたドレスのスカートは繊細なレース刺繍で気品ある華やかさであった。
白い長手袋と金のブレスレット、首飾りはブダ王宮自慢のエメラルドで、貴顕たちを魅力した。
(ルカがこんなに手はずが上手いとは)
マシロの子供や守り人も面白がって用意してくれたのだ。
「これは呼んだかいがありましたね」
メッテルニヒは身長差のある貴人たちとダンスにはげむ、愛しのフロイライン・リアに注視した。
「あの方が女性だったら、いくらでも口説けたのに……」
デオンもといリアならうまくはぐらかしたり、いい気にさせたり、告白もうまくかわし続けていただろう。
そんな気ままなデオンをうらやましく感じた。
「メッたん、リアはすげーな」
マシロが声をかけた。
155cmのリアからは2cmものメッテルニヒは巨人であった。
「もう疲れたから踊れないわよ」
「いやぁ、冬の舞踏会ではライヒシュタット公爵とあなたで話題がもちきりですなぁ」
「じゃあ、リアの身分を保証してよ。宮廷はデオンでいいから、貴族のパーティに出れるよう細工して」
「なら男爵夫人と細工しましょう」
デオンは久しぶりのダンスで気分が舞い上がっていた。
貴族の舞踏会にリアとして出続け、ウィーンと長い冬を踊り続けた。
1819年にはフランツ少年もダンスに熱中していた。
宮中主催では騎士デオンとして白いクロックコートに、マリア・テレジア十字勲章と騎士十字勲章を付けて、7歳の公爵と競うように踊った。
「あんなガキを意識しても仕方ねーだろうに」
デオン頭上のマシロが愚痴った。
「7歳で公爵だなんて、悔しい!」
大きい女性が多い中でデオンは健闘し続けた。
1820年春には9歳のライヒシュタット公爵は基礎科目課程修了試験を受けていた。
口頭試問には、皇帝皇妃と皇族、有力貴族が列席した。
試験は好成績で歴史、地理、数学が優れた成績だった。
「良くやったぞ」
フランツ帝は公爵を抱き上げて大喜びした。
マシロを頭上に乗せたデオンはメッテルニヒの執務室に来た。
「カフェ代ちょーだい」
デオンは子供のように手を出した。
マシロは長い舌を伸ばした。
「はいはい、お小遣いですよ」
メッテルニヒはデオンの右手とマシロの舌に小銭を置いた。
デオンたちは王宮へ出て麒麟でグラーベン通りへひとっ飛びした。
カフェでデオンはタブルのエスプレッソにたくさんのホイップクリームが乗った、アインシュペンナーをデオンらは頼んだ。
「あなたは貴族なのにそんな庶民的なコーヒーなんて……」
「それは御者が飲むものですよ」
「この甘みを抑えたクリームがいいのだよ。甘味はスイーツで補うからさ」
デオンは砂糖がけのクグロフを食らった。
「ちびナポレオンは試験に受かったぞ」
クリームを舌でからめたマシロ彼が2人に近況を伝えた。
「そりゃ賢いお子様だ」
「結構ダンスがうまくて焦るよ」
デオンは舞踏会の様子を話した。
「こりゃ大変なお子様だなぁ……」
彼らとよもやま話をしながらデオンはカフェでのんきに過ごした。




