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新生デオンの暇仕事  作者: kazfel
喜びに満ちた調べに共に声をあわせよう
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デオンの暇仕事

 王宮に戻るとメッテルニヒに帝国官房宮へ連れて来られた。

「マシロ様は明日からはフランツ坊やの遊び相手になってもらいます」

「ちびナポか?」

「そうです。フランツ坊やと呼ぶのですよ。外国語のできるデオン殿は輸入本の検閲を1日2,3時間でいいので手伝って欲しいのです」

「ん? 具体的にどうやるのだ?」

「有害と思われる本を国民の目に触れないように仕分けるのです。焼却処分とかね」

「はぁ……」

 何だか面倒な作業をやらされるのかとデオンは重い気分になった。

 デオンとマシロは暗い王宮に大きな部屋が与えられた。

 翌日、それぞれ出勤した。

 デオンは官房宮の検閲機関へ赴き上司のゲンツに挨拶した。

「輸入本はそのまま許可されるもの、一部を抹消して許可されるものとで分けてください」

「面倒だな。全部焼却扱いにして、本屋に横流しして、売れた本の何%かを、こっちで頂けばいいじゃないか」

「それだと書籍商が納得しますかどうか……」

 眼鏡のゲンツは戸惑っていた。

「じゃ、契約書取ってくるから本屋の地図とリストちょうだい」

 ゲンツから渡されたリストは30軒超えていた。

「こんなにあるのかよ……」

 先に徒歩で行ける本屋へデオンは向かい、書店主と交渉を開始した。

「売り上げの10%を還元しろと。まぁ本が丸まる入手できるからいいか」

「ではサインを」

 デオンは簡易な書類を作り、控えの紙に署名した。サインを受け取って店を廻り、遠くの店は麒麟に乗って書店主へ交渉して巡った。

「10%は高いなぁ……」

「では7%でどうです?」

「まぁ、いいだろう」

 デオンは渋る店主には近い要望で契約を取り、何日か後にファイルにまとめてゲンツに提出した。

「後は裏で流通させたら完了です!」

「では手配しておきましょう」

 次からデオンは本を読み漁るだけの仕事になった。

 

 白狼の頭に乗ったサラマンダーマシロはフランツ帝の執務室で5歳のフランツ坊やに会った。

 目が大きい巻き毛の男児は白狼を見つめていた。

 部屋には兵隊と騎馬の玩具があった。

「ここだぜ」

「わぁ」

 坊やが驚いてマシロは満足だった。

 小フランツはマシロを小さな机に置いて銃刀を持った兵隊の人形でマシロを突いた。

「ヨーゼフみたいな遊びをするな」

 マシロは舌で巻きついて応戦した。


 時折、次女のレオポルディナがフランツ坊やの遊び相手になっていた。フランツ帝は孫フランツと一緒に食事をとった。

 レオポルディナのそばに小フランツが座り、和やかな食卓になった。


 ある日デオンはメッテルニヒに呼ばれ彼の執務室へ来た。

「聞くところによると、かなり大胆な検閲をしているそうですね。書籍商への取り分でいくらか儲けているとか」

「まぁ、ぼちぼちってところかね」

「いいえ。あなたに小フランツの相手とカフェであのトカゲと一緒に遊んでください。むしろトカゲと一緒にカフェへ行くのが最良でしょう」

「カフェで遊ぶ? マシロと?」

 デオンはメッテルニヒから小銭をもらった。お払い箱になったのか、小遣いの使い道を探す日課に甘んじることにした。マシロを探しに執務室を出た。

(金はエルトリアでもらっていたんだけどなぁ)

 デオンはサイフから金貨を出た。サラマンダーが斜め向きで笑みを浮かべている。銀と銅貨はサラマンダーの全体像だ。

「こんなふざけたデザインのコイン、ウィーンで使えるのか?」

 王宮広場でマシロと白狼を見つけた。

「マシロ、カフェ行こう」

 デオンは降りて来た麒麟に乗った。

「ちびナポレオンはどうしたんだ?」

「ドイツ語の勉強だって。グラーベン通りを行き付けのカフェがあるから行くぜぃ」

 王宮から北のペスト記念柱が中央にある大通りは、辻馬車などで混んでいた。白狼と麒麟は宙に浮いて進んだ。

 記念柱の東側の通り向こうに淡い青緑ドームのペーター教会が見えた。記念柱から南への5階建ての建物に、テントとテーブルがあるオープンカフェがあった。

 カフェは1階の一部の店でアーチ状の門が入口だ。大通り周囲は高層建物が建ち並んでいる。

 カフェ店は白いアーチ天井とクリーム色の壁と赤絨毯の床、古いサイフォンと古式の雰囲気が良かった。

「マシロちゃん久しぶりだね」

 はげ頭のマスターが声をかけた。

「マシロじゃないか。この方はえっと……」

「ウィーン会議の人だ」

「デオンだ。よろしく」

 テーブル席で新聞を読んでいた2人の市民に挨拶した。

「まぁ、よろしくやってくれぃ」

 マシロはテーブル上に降りた。

「なぁ、ちびナポレオンはどうだい?」

「フランツなら色々勉強させられているぞ。小さいのによぉ」

 2人の市民はややブルジョワっぽく感じた。

「あの男は島で皇帝扱いされているのかねェ」

 太めの市民がナポレオンの噂をした。

「ナポちゃんはヒマになるのが辛いんじゃね」

 マシロはコーヒーの生クリームを舌ですくった。

「そのおかげで平和になって皆のんきに暮らせていいんだよ」

「ちびナポの相手とここに通えていいぜぃ」

 マシロの実家での忙しさと反比例した平穏なウィーンも理想な暮らしだとデオンは感じている。

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