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新生デオンの暇仕事  作者: kazfel
大ドイツ帝国の興亡
102/185

オーストリア併合とヨーロッパ開戦

参考文献

エリザベート ハプスブルク家最後の皇女 塚本拓也

歴史読本 臨時増刊89-3

黒魔術の秘法 悪魔学入門 流智明

 1938年3月、オーストリア在住のドイツ人が迫害されているということでドイツ軍はオーストリアへ進駐した。

 オーストリアのドイツ系住民はむしろヒトラーを大歓迎した。

 武力衝突は起きず、失業者や不況に苦しむ民衆はナチス・ドイツに期待をかけたのだ。


 1938年3月15日。ホーフブルク新王宮のバルコニーから英雄広場の20万人の大群衆に向けてヒトラーが演説した。

 外相リッペンドロップ、親衛隊(SS)隊長兼ドイツ警察長官ヒムラー、ゲシュタポ長官ハイドリヒ、国防軍最高司令官カイテルらが勢揃いした。


 ウィーンの家々や窓にはハーケンクロイツの旗がひるがえった。

 バーデンロイター行進曲が街の至るところに据えられたスピーカーから流れ、途切れるとドイツとオーストリアの併合を祝う教会の鐘が鳴り響く。

 王宮の英雄広場とウィーン環状道路の両側、ブルク劇場と国立オペラ劇場の広場を埋め尽くした群衆は60万ともいわれる。

 ウィーンの人々は大拍手で熱狂的にヒトラーを迎えた。


「同一の血を持つ民族は、同一の国家に属するものとして、オーストリア帝国を含めて大ドイツ統一を実現する!」 

 ヒトラーは演説の最後に「1民族(アインフォルク)1国家(アインシュタート)1指導者(アインフューラー)」で締めた。

 これらがシュプレヒコールとなって英雄広場にこだました。


 ヒトラーは演説あと、マリア・テレジア銅像の前に立ち、オーストリアに進駐してきた10万人のドイツ軍と機械化部隊、新たにドイツ軍に編入されたオーストリア軍5万の兵士らの大行進を数時間かけて閲兵した。

 

 ヒトラーはウィーンにいた短時間に、旧王宮の宝物館を訪れ、ハプスブルク家に伝わる運命の聖槍を持ち出し、ニュルンベルクに運び込んだ。

 ローマの兵卒ロンギヌスが十字架かけられたキリストの胸を刺してキリストの身体を守ったという聖なる槍の穂先で、この槍を手中におさめた者は、善であれ悪であれ世界の運命を握るという伝説がある。


 だが、ハプスブルク秘蔵の聖槍はコンスタンティヌス大帝が作らせたレプリカであった。

 本物は先端部のみをルイ9世が買い取り、パリで保管されていたが、フランス革命の最中、公立図書館で目撃されたのを最後に行方知れずとなっていた。


 デオンたちはラジオのニュースでドイツのオーストリア併合を知った。

「オーストリアがなくなったのか。全く、ろくなことしないなドイツは」

「国なんかなくなるの珍しくも無いぜぃ」

 テーブル上でマシロは転がっていた。

「シェーンブルン宮とが他国の軍人に踏みにじられるんだぞ」

「外壁は金箔にしなくて良かったぜぃ。フランツ・シュテファンの奴、黄金にしようなんて言い出したからな。テレーゼのケチなおかげだぜぃ」

「へぇ、壁が剥がされなくて良かったなぁ」

 マシロは双子にさらわれボールのように投げ合って遊ばれていた。


 1938年10月1日。チェコ軍が撤退するのを待って、ドイツ軍は一斉に国境を越えて進軍した。

 ドイツ軍は10日間で占領した。

 エルトリアはドイツの後押しで南スロヴァキア地方を獲得した。


 1939年3月。サーラシ・フェレンツの矢十字党は合法化された。

 サーラシはトリアノン条約の修正、失業対策、金融・エネルギーの国有化、農民のための土地改革などの公約を掲げ、支持を集めた。

 5月の選挙では政府党が183議席を獲得したのに対し、ファシスト諸党は49議席、矢十字党は31議席を得た。


 1939年9月1日にドイツ軍はポーランド国境を破って進撃を開始した。

 ドイツ軍は戦争の準備が整っていなかったのに関わらず、ほぼ一週間でポーランド軍を一方的に破って快勝した。

 旧態依然たる騎兵中心部隊のポーランド軍は戦車(Ⅰ号、Ⅱ号、チェコ型)を中心としたドイツ軍の機甲部隊に、西半分の領土を明け渡すしかなかった。

 東半分は秘密条約によって17日に侵攻したソ連軍が占領した。

 ポーランドの街オシフィエンテム周辺は大ドイツ帝国領になってアウシュビッツと改称された。

 ドイツは英仏との戦争に突入したのだ。


 ポーランド侵攻はラジオや新聞でもエルトリアに伝えられた。

「騎兵の時代は終わったのだな。機甲部隊か……」

 とっくの昔に騎士はいなくなり、戦争に航空機が加わり、想像出来ない位、戦争の形態が変わってしまった。

 騎士の時代を生きてきたデオンには、対峙しなければならなかったポーランド軍が哀れにも果敢な戦士にも思えた。

『これからは技術、機械の進歩の時代で、世の中はこれに遅れを取ると、国家も個人も落語する』

 晩年のメッテルニヒの言葉が突き刺さる事変だった。

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