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転生した侯爵家のお嬢様は人ならざるものに愛されすぎています〜自由に這って進む繭を誰もとめられない〜  作者: 白木のた
第一章

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5/16

5転生しました

 


 私の名前はリル・アシュリディク。

 アシュリディク侯爵家の一人娘。

 実は私には前世の記憶がある。地球の日本という国で育った記憶。


 その日も、いつものように仕事を終えて、スーパーに寄って帰っていたのだ。

 帰り道にある小さな公園を横切って、夕陽を見ながら『あー、今日も終わったなぁ。あとは、帰ってご飯食べて寝て……また明日も仕事か』なんて大して面白みもないことを考えてた。

 仕事が終わった後なんて、そんなものだよ。


 こうやってどんどん歳をとって、おばあちゃんになって寿命でぽっくりいくか、病気で死んじゃうか、まあ苦しくない死にかたならいいな、なんて思っていたからいけなかったのか。


 急に視界がブラックアウトして。多分その時死んだんだと思う。気づいたら、おんぎゃあおんぎゃあと泣いていた私。


 転生しました。



 生まれたばかりの時は何がどうなってこうなった!?ってパニックだよ。手足を動かして泣きまくったね。

 赤ちゃんだからか感情の赴くままだった、赤ちゃんだからね、仕方ない仕方ない。

 だんだんと落ち着いてきて、やっと人の声に耳を傾けられるようになって気付いた。あれ、ここ日本じゃない?


 ちちとはは、外国人ぽい名前じゃない?って。


 まだうまく目が開けられなかった私は周囲の人たちが話してる内容から状況を知るしかないわけです。



 誰かが私を抱いて、移動してる?

 あ、ちちか。どこいくの?って思ってたなぁ。


 そのあと私の名前が決まった。


 決まったのはいいけど、物凄く体が怠くなって、熱湯に入れられたんじゃないかと思えるくらいに全身が熱くなったんだよね。この体に巻き付いてる布邪魔!脱ぎたい!って思ったら、呻き声と、大きな音が鳴った。



 それから暫くしてやっと怠さと熱が引いて。




 あんれ、なにかあった?



 ちょっと何が起きたか確認したいなぁ、って呑気に考えていた私に『わかったー』って誰かの声が聞こえた。その時突然、目が見えるようになって。


 見えるのはベッドにある白い塊。

 何これってさっきの声に聞いてみると。


『リルだよー』


 と返事が返ってきた。

 なんと、私だった。

 声の主は大地の精霊シュリンで、どうやら沢山いるなかの一体?のシュリンの視界を、お借りしている状態だったみたい。



 私の本体はベッドにいた。



 それから出てくる単語はもう異世界ですね、分かりました。って感じのばかり。

 しんかん、神官でしょ?聖者でしょ?

 魔法、魔力、精霊。異世界きましたかぁ、ってシュリンの目を借りた状態で遠い目をした。漫画や小説で異世界ものを読んだことあるけど、まさか自分が異世界に転生するなんて思わなかった。


 ちち、動揺させたりびっくりさせたり、混乱させてしまってごめんなさい。

 そして、シュリンさんありがと!


 全てを知ったあと、私これから数年はシュリンに包まれた状態で過ごすのか。とか色々考えたけど。

 最後にはね。まあいっか!視界も私の本体視点にしてもらったし、耳も聞こえるし、動き……はまだもぞもぞとしか動けないけど、これからどうとでもなるでしょ。どこかに行きたくなったら這って進めばいい。と落ち着いた。

 楽観的にもほどがある。


 とりあえず異能は使わない!

 狙われたり、研究対象にされたりは御免です。


 ちちが切ない顔をして私を抱っこしてるので、じっと見つめていたら、聖者さんに言われてこっちを見てきた。


 うん、みえてるよ。聞こえてるよ。

 これからよろしくね、ちち。



 聖者さんは無闇に乳児をツンツンしないように。





 前世の母は、私が死んで泣いただろうか。

 シングルマザーで女手ひとつで育ててくれた母。母が泣いている姿を私は見たことがない。

 どんなに仕事で疲れていても、金銭面で苦労しても、弱音を吐かなかった母。


 きっと泣いただろうと思う。

 でも、母は私と同じで楽観的で、私以上に精神的に逞しかったから。きっと泣いた後は、しっかりと生きていってくれるはずだ。

 頼りになる友人も多かったし、恋人もいるんだったっけな。詳しくは聞いてないけど。



 だから大丈夫。

 私は新しい人生を精一杯生きなきゃ。




 そう、その日決意した。







 私は無事三歳になった。

 三歳になっても赤ちゃんサイズのまま成長していない。私の成長期はいつくるの?


 あれから動きを研究して、見事に繭のようで幼虫みたいな動きをする謎の生命体に進化を遂げました。

 シュリンと私は一心同体。そう思って動くとシュリンが手助けしてくれているのか、ぬっぬっと前に進めるようになった。ついでに壁も這えるようになった。もうまんま幼虫。どうやってひっついているのかは分かりません。


 力は、まだ自分ではどうにもできない状態である。たまにシュリンと一緒に特訓しているが、こうね。流れ込んでくるのを体の中で循環させて、多ければ地脈に返すっていうのがうまくいかない。

 シュリンが調整してくれなければ、あっという間に体内に力が溜まっていくし、体の限界まで溜まると循環せずに詰まってしまう。これがツライ。

 地脈と繋がる出入り口を狭めることで改善しようとしたが、大量に流れてくる力にこじ開けられる。


 まだまだ先は長そうだ。



 そんな私は今、居心地の良い場所を探して屋敷の中を散歩中だ。ここだ!という場所で、すやぁっと眠るのが気持ちよくてやめられない。

 あ、あそこがいいかも!


 私は応接室に入り、頭を上げてキョロキョロと辺りを見渡す。


 扉?屋敷が開けてくれたよ。

 この屋敷もシュリンと同じく精霊なのだ。精霊が宿っている屋敷が正解かな?

 だから私の意思を伝えると開けてくれる。

 いつもいつも、ありがとうございます!助かってます!



 もそもそ動いて壁を這う。

 角っこがいい。あの角にぴったりひっつく感じで。



 到着した私は天井と壁の間の角に体を押し込んだ。いい嵌り具合にうっとりする。さて寝よう。



「リルさまぁ! どちらにいらっしゃるのですか!?」



 すやぁするまであと数秒、というところで私のお世話係の、侍女の声が聞こえた。





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