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転生した侯爵家のお嬢様は人ならざるものに愛されすぎています〜自由に這って進む繭を誰もとめられない〜  作者: 白木のた
序章

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4警告

 


 誓約魔法をかけられた後。


 ホーファードは、逸る気持ちを抑えてサシャテが話すのを待つ。喉をコクリと上下させ、緊張した面持ちをみせるホーファードに視線を送ったサシャテが、ゆっくりと話しだした。


「地脈には魔素が流れてるが、後一つ、世間には知られていない力も一緒に流れてるんだ。……ーー“アルネラレシュテ”の力。リルの中に流れ込んできた力はそれだ」


 聞いたことのない名が耳に残る。

 疑問が頭をよぎったが、話しを中断させるわけにはいかないとホーファードは再度聞く姿勢を整えた。


「アルネラレシュテの力を身に宿せるヤツは魔法じゃなく、異能と呼ばれる特殊な能力を使えるようになる。感知出来ないのはそのせいだ。魔力で異能を使うわけじゃないからな」


「異能、ですか」


 ボソリと呟いたホーファードにサシャテが頷く。


「普通、魔力や神力は個人で体内に保持できる量が決まってっけど、アルネラレシュテの力は際限がない。いくらでも地脈から引っ張ってこれるからな。身体が保つ限り使いたい放題だ」


 片手で髪をクシャリと掻き乱したサシャテは険しい表情をして、ふっと息を漏らした。重たい口を無理矢理開いて話しを続ける。


「それに加えて、地の下に眠ってるアルネラレシュテの力を引き出せるものは人智を超えた異能を手に入れてるんだよ。過去二人異能を使えた人間がいるが、どちらともその時代では最強を誇り、歴史に名を残してる。……まあもう百年以上前の話だ。そういう人智を超えた能力をばんばん使えるってなったら当然狙われる」


 ドクリ、とホーファードの心臓が跳ねた。全身を巡っている血液が途端に冷えていくような感覚に、指先が震える。

 狙われる、という言葉が頭の中を占めた。


「ここからは警告だ。リルがどんな異能を手にしてるのか分からないけどな、力を使えることを知られないほうがいい。もし身を守れないような異能だったりしたら、捕まって利用されるか、最悪研究対象にされて悲惨な末路を辿ることになる。とくにアルネラレシュテの力を知っている奴らに見つかると厄介だ」


「アルネラレシュテの力というのは知られていないのでは?」


 微かな希望を胸に、ホーファードは前のめりに言った。

 しかしサシャテの反応は思わしくない。首を左右に振られてしまう。


「世間には知らされていない。けどな、知っている奴らはいる。独自で地脈調査して発見した研究者や、過去アルネラレシュテの力を使えた人間が属する国や親族、友人知人。他にも知ってるやつがいないとは限らない」


「現時点で誰が、どの国が知っているのですか、分かっているのならば教えてください!」


「対象を絞るのは危険だ。視野を狭める。誰もが知っていると思って警戒した方がいい。一番いいのは力を使わせないことだ」


 確かにそうだ。リルが異能を使わなければ知られることはない。己に言い聞かせるように、そっと胸の内でホーファードは思った。



 しかし、意図せず使ってしまったら?



 やむを得ず、ということもあるではないか。


 思わず頭を抱え込む。


「神殿はアルネラレシュテの力を使えるものとその関係者を保護対象にしてる、なにかあったら神殿に駆け込めばいい。俺も、時間が空いた時は様子を見にくる」


 思い悩むホーファードに、優しい言葉で助言したサシャテは笑みを向けた。


「はい」


 その笑みに、漸く息を吐き出せたホーファードはリルのもとに向かった。

 時折動く繭に微笑み、大事に抱き抱える。


 ホーファードはいい父親になれるだろうか。


 普通の子とは違うこの子に何をしてやればいいだろうと、心が揺れ表情が歪んでいく。


「なんだかんだ言ったけどな、シュリンもいるし重く考えてへんな顔ばっかしない方がいい。……ほら、あんたを見てる」


 いつの間にかホーファードの横にいたサシャテにそう注意され、勢いよく腕の中の我が子を見る。


「リルは、この中にいても見えるのですか」


 驚きを露わにするホーファード。

 サシャテはクックッと笑いながら白い繭に手を伸ばした。指先で突くと思いの外柔らかかったのか何度も突いて感触を確かめていたが、繭がやめろと言わんばかりに蠢き手を下ろした。


「ああ、耳も聞こえてるみたいだ」


 サシャテの肩に乗っていたシュリンがコクコクと頷いている。その仕草にカチンと体を硬直させたが、本当なのだと、ホーファードは満面の笑みを浮かべた。


「夜が明けたな」


 窓から陽の光が差し込み、朝を告げる。

 その光景を目を細めて眺めたサシャテは、心の中でそっと呟いた。




 この親子に幸福を。
















 ーーーー別大陸。

 大神殿の中庭には花々が咲き乱れている。

 それを白く太い柱の下で静かに眺めているのはこの大神殿の頂点に立つ大聖女だ。

 豪奢な聖女服を身に纏った彼女に、声がかけられた。


「大聖女、ケシトカニエミ様。聖者サシャテ様よりご報告したき事があると」


 彼女が立ち上がると、白い上質な衣がフワリと揺れ、金の刺繍が美しく煌めく。

 少しの間をおいて、小さな唇が動いた。


「聞きましょう」


 その透き通った綺麗な声は、まだ幼さが残る少女が発したもの。



 大聖女が振り向くと、動きに合わせて金の髪が靡いた。




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