11私は意外と力持ち
……。
…………。
もういったかな?
私はそっと、曲がり角の先にある廊下を確認した。
よし、いない。
ジルエン君、なんでUターンしちゃったかなぁ。何か用事があったのでは?
私の横を通るのは嫌だったかー。
でもね、私もそっちに用があったから正直、あ、戻らないでー!と言いたくなったよ。
後ろを這ってたら第二ラウンド始まりそうだし、もう待つしかないよね。
私はまた広い邸内の散歩を再開した。埃一つ落ちていない清潔な廊下をひたすら進む。
図書室は別棟にあり、邸宅と繋がる画廊から行ける。
あ、ここだ。
長い通路を見て頷いた私は、声を上げ蔦で移動しジャングルを駆け巡るアレを真似しながら進むことにした。
天井に糸状シュリンをくっつけて、びゅーんと前方斜め方向へ速度を上げて空中移動する。
そして壁に着地。
前方の天井にシュリン糸をくっつけなおして、
ひゃっほーーっ
またびゅーんと宙を移動して反対側の壁へと着地。それを繰り返しながら移動していると、不意に、画廊の壁に並ぶ一枚の絵に意識をもっていかれる。
…………?
金の豪華な額縁に収められている絵画の前に着地して、全体を眺める。
目立つのはシンボルとも言えるような巨大な樹。
キャンバス一面にこの樹が描かれていた。その樹の根元より更に上の方には立派な城が聳え立っていて、その城から下に街が広がっている。
カラフルな屋根と西洋のような街並み。
この絵のような場所がこの世界にあるのだろうか。
エルフとか住んでそう。この世界にエルフがいるのか分からないけど。
なんてファンタジー。ぜひ一度観光に行ってみたい。
などと考えていたが、本来の目的を思い出した私はピョンコピョンコうさぎのように跳ねてその場を後にした。
♢♢♢
大きな扉が自動的に開き、中に忍び込む。
ヴァンゼスどこかな?
ここの図書室はかなり広い。
一階から三階まで吹抜けになっているので天井の高さもある。上の階には、端に設置された階段から行けるようになっていた。
ここまで広いと人一人探すのも苦労する。中央に椅子と机が並んでいて、読書空間となっているため、そこにいてくれれば……と思ったのだが、いない。
仕方がない、地道に探そう。
私は高さのある書棚によじ登っては周囲を見渡しを繰り返して、ヴァンゼス君を探した。
一階にはいないようだ。
ぽよんぽよんと跳ねて階段を上り、ずらっと並んでいる書棚の間を確認していく。
漸くその姿を確認できた。
二階の端の書棚に背をつけて座り込み、本を読んでいるヴァンゼスを発見した私はゆっくり這って近づく。
彼の周囲には何冊もの本が積み上げられていたので回り込んで、足に触れた。
「リル……?」
ヴァンゼスが私に気づき、小さく声を発した。
どこかぼんやりしている彼の足にぴとっとくっつき、クイクイと引っ張る。
こんな薄暗いところじゃ読みづらくない?明るいとこ行こうよー。
私は周囲にある本をまとめて、ぽいっと頭上に放り、頭に乗せた。バランス感覚が抜群にいいな、と自画自賛しながら書棚の間から抜け出す。
振り返りヴァンゼスを見つめ、あっちで読もう!とぴょんぴょん跳ねているとヴァンゼスに笑われた。
「力もちだね」
そう言って立ち上がり、読んでいた本を閉じて私の後に続く。
階段を下りて中央へと向かい、机に本を放る。しっかり本同士が重なって積み上がっていく様に、私大道芸人になれそうだな。どこかの大手のサーカス団に所属したらいい見せ物になってお金ガッポガッポかもしれない、と考えた。
まあ、飽きられて用済みになったらどんな扱いをされるか分からないけど。
「何か、一緒によむ?……これなんかどうかな」
重なった本から一冊引き抜いて、表紙を私に見せてくる。
なになに?
絵本かな、なんかファンシーなイラストが描かれてる。うさぎと、王子さま?
…………何て書いてあるのか読めません。
首を捻って、ヴァンゼスに示した。
「絵本『旅うさぎと傷だらけの王子』。ぼく、この本が好きなんだ」




