『眠り姫』
グリム童話、眠り姫をアレンジしてスリーピング・・・。魔女が異世界に転生しちゃうお話。
むかし、むかし、王様とお妃様の間に女の赤ちゃんが生まれました。
お祝いの席には魔女も招かれましたが、その国には13人の魔女がいました。
しかし、魔女に使う特別なグラスが12個しかなかったため、12人の魔女を招くことにしました。
面白くないのは仲間外れにされた魔女です。
その魔女はガチムチの筋肉魔法を操る魔女というか、筋肉の塊でした。
魔女、もとい筋肉はプロテインを飲みながら不服そうに呟きます。
「土産にと用意した鳥のササミ10年分が無駄になってしまうではないか。さらには私の肉を赤子に見せてやろうと思っていたが」
鏡の前で自慢の肉をピクピクと脈動させます。
こんなものを目の前で見せられてしまった暁には赤ちゃんはトラウマを刷り込まれる事になるでしょう。
この筋肉を呼ばなかったのは英断です。
「腹立たしい!斯くなる上は、呪いを授けてくれるわ!」
筋肉はプリプリと怒りながら愛馬であるマッスル28号(実はロバ)に跨り、お城を目指しました。
途中でマッスル28号がつまずき、落馬した後に大根おろしのように地面に削られた筋肉でしたが、何とかお城に到着しました。
お城では盛大な宴が開かれています。
12人の魔女もそれぞれ赤ちゃんに祝福の魔法を掛けていました。
そこに颯爽と現れた血だるま筋肉。
「この子が15歳になる日、プロテインを飲んではち切れんばかりの筋肉に身を包むだろう」
なんと残酷な魔法でしょう。
愛らしい女の子がビスケット・オ○バのようになるというのです。
王様とお妃様は戦慄しました。
しかし、12人の魔女は筋肉から掛けられた魔法にある魔法を上書きしました。
「この子は15歳になってもオ○バになりません。ただ、ただ100年間眠るだけです」
王様は直ぐに国中のプロテインを燃やしました。
ボディビル教会から凄まじいクレームが寄せられましたが、王族の権力でねじ伏せました。
それから月日は流れ、王女様が15歳になる日が来ました。
この日、王女様はお城のお庭を散歩していました。
「今日はいい天気、お花も綺麗に咲いてるわ」
どうでもいいです。
王女様が景色を楽しみながら歩いていると、お庭の片隅にローブ姿、ですが溢れる筋肉が所々からはみ出た、傍に涎を垂らしながら寝ているロバを従えた人が佇んでいました。
「可愛い王女様、喉は渇いておらぬか。良ければこれを飲みなさい」
筋肉ローブはおもむろにプロテインシェイカーを取り出すと、ずいっと王女様に差し出しました。
王女様は一瞬呆気に取られましたが、人懐っこい笑顔を浮かべるとプロテインシェイカーを受け取りました。
「ありがとう。いただきます」
人を疑う事を知らない王女様は一気にプロテインをあおります。
すると、王女様を急激な睡魔が襲い、その場でパタリと倒れると、そのまま眠ってしまいました。
それからというもの、眠り続ける王女様を人々は眠り姫と呼ぶようになりました。
それからたくさんの人が眠り姫を起こそうとしましたが、誰一人として起こす事ができませんでした。
それから100年後、ある国の王子様がお城を訪れました。
王子様はお城で眠り続ける眠り姫を一目見ると、その美しさに心奪われました。
王子様は眠り姫の頬をそっと撫でると優しくキスをしました。
すると、どうでしょう。
100年間目覚める事のなかった眠り姫の目がゆるゆると開きました。
しかし、変化はそれだけではありませんでした。
細く形のよかった眉毛は太く凛々しくなり、顎は二つに割れました。
控えめだった胸はモリモリと厚くなり、腕も丸太のように太く太くなりました。
脚はカモシカのように太く逞しく、身長もぐぐっと伸びました。
全体的に丸みを帯びた女の子らしい体は見事なカットの筋肉達磨へと変貌したのです。
王子様は世界の神秘を目の当たりにしました。
眠り姫は筋肉姫へ進化を遂げると漢らしい声で王子様にこう言いました。
「我を目覚めさせてくれた事、心より礼をいう。結婚シナイカ?」
疑問系ではありますが、有無を言わせない圧力を王子様は感じました。
王子様と眠り筋肉は結婚して末長く幸せに暮らしましたが、時折王子様は星空を見つめながら呟きます。
こんな筈では・・・と。
ちなみに魔法を掛けた筋肉は眠り筋肉が目覚めた2日後に飼っていたマッスル31号(虎)に首筋を噛まれて死にました。
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数年後、異世界に転生した筋肉はマッスル魔女として名を馳せましたが、カロリー不足に悩まされる日々を過ごしました。
おしまい
王子様が気の毒・・・一番の被害者かもしれない・・・。
この作品は「起きたら筋肉になっちゃった」を書きたかっただけです。
ごめんなさい。




