第三話
チョン君には、気に入らないことがありました。日本が経済大国と言われていることです。
日本が豊かな国と言われるたびに、自分が否定されているような気持になってしまうのです。チョン君は日本に住んでいますが、こんなに差別がひどくて嫌な国はないと思っていました。
「サヨク先生、日本は調子に乗っていますね」
「どういうことでしょう」
「日本は今、ウサギとカメのウサギになっているのです。外国からは豊かな国だと思われているかもしれませんが、それは真実ではありません」
「ウサギですか……」
「そうです。ちょっと運がよかっただけで、調子に乗って昼寝をしています。本当なら、一生懸命に過去の清算をしなくてはならないのに……」
「本当ですね。何を調子に乗っているのでしょうか」
サヨク先生も日本が大嫌いだったので、二人でとても盛り上がりました。
それから、二人は日本がいかに調子に乗っているかということを、日本の国内だけでなく、外国でも盛んに言いふらしました。日本は過去を反省せずに昼寝ばかりしているので、ウサギのように他の国にどんどん抜かれていくだろう、と言いました。
日本人も、あんまり日本はダメだと言われるので、ちょっと自信がなくなっています。
*
カメさんは、ウサギさんに競争で勝ったあと、そっとウサギさんのところに行きました。
「ウサギさん、僕は気づいていたよ。君は本当は居眠りなんかしていなかったんだ。どうして僕にわざと負けるようなことをしたのさ」
「カメさんは、するどいね。実はね、最近、僕が足が速いからって調子に乗っている、って悪評が立ってるんだ。僕はそういうことを誰かに言われると、どうにも心がさびしくなって、何かすごく悪いことをしているような気がして、全力が出せなくなってしまうんだよ……」




