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18.メーセン侯爵

「三年前の事件、やはり父は謀反など考えてはいなかった。これがその証拠です」


 そういって、ペールは懐から手紙のようなものを取り出し、メーセン侯爵へ差し出した。


「これは……」


 受け取ったメーセン侯爵が、書面に目を走らせる。 


「マジェームの部屋で見つけました。父を嵌めるための策謀内容やその段取りが説明されており、協力者のサインが記されています」


「なるほど、な。こういうことだったか」


 ふむ、とメーセン侯爵が白くて長い髭をなでながら頷く。


 襲撃から一夜明け、メーセンへ着くまでのあいだに、レヒテンでいったいなにがあったのかをペールから詳しく説明してもらった。


 ペールは父親の汚名を雪ぐ為、真実を明らかにしたいが為にレヒテン宮廷に乗り込んだのだということ、そして三年前の一連の事件はマジェームによる企みであるという証拠を手に入れたこと。


 ところがその現場を見られ、マジェームに額を斬られたということ。


 当時、放浪していたペールが父親の一件を知ったのは全てが終わってから半年ほども経ってからだったらしい。


 その時には既に、姉以外の家族はみな死んでしまっていた。

 けれど、そのまま家族の運命を受け入れることはできなかった。


 何か手段は……と考え、頼ったのが、メーセン侯爵だったのだという。

 ペールの父親とメーセン侯爵は旧知の間柄で、親交が深かったらしい。


 ペールはそのままメーセンに身を寄せ、そこで楽師をしながら父親の事件について調べ続けた。

 そして三年前の事件の首謀者としてマジェームに行き当たった。


 そこでペールはマジェームの懐に入り込み、ずっと証拠となるものやその情報を集めていたのだという。


「それから……近々、南イエーラ地方の諸侯が集まる会議がありますね? 恐らく、マジェームは三年前と同じように、そこでなにかを仕掛けるつもりでいます。卿、会議では充分に気をつけてください。マジェームはメーセンの地に並々ならぬ関心を抱いています」


「そこまで調べてきてくれたのか」


「当時マジェームに協力した者を探し当てることができました。彼らを利用して上手く立ち回ることができれば、勝機はあります」


「なるほど、よくわかった。長期にわたってご苦労だったな。またすぐに忙しくなるだろうが、今は休息をとれ」


「ありがとうございます。それと……こちらのふたりには旅の道中色々と助けてもらいました。卿の話をしたところ、一度演奏を聴いていただきたい、ということで……」


「リ、リヒーナと申します」

「ルッチェです。よろしくお願いします」


「ペールが世話になったようで、感謝している。もしよければ、君たちもしばらくここに滞在していってくれたまえ。私は諸侯会議まで忙しくて時間がとれないのだが、それが終わり全てに片がつけば、宴をひらこうと思っている。その折にはぜひ君たちの演奏を聞かせてほしい」


 以前ペールは、紹介なんてしないといっていたのに、しっかりリヒーナたちを紹介してくれた。


「ありがとうございます!」


 リヒーナとルッチェは揃って感謝の言葉を述べた。

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