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部屋で教わってない単語をグレイさんに教わりつつ買い物を終える。

荷物整理は宿に戻ってからとのことで魔法のポーチは使わず、買ったものを抱えたグレイさんと宿に戻る道を歩いていた。



「グレイさん、荷物重くない?」


「あんたよりは軽い」


「デリカシーないね?」


「でりかしー?」



なんで日本語は通じるのに変なところで伝わらないんだろう。

そんな風にグレイさんと歩いていると、やっぱり感じる嫌な視線。



「グレイさん」


「今度はなんだ」


「グレイさんって王国軍の騎士なんだよね?国軍騎士と町の騎士って仲悪いの?」


「それほどではない」



じゃあなんで、と続ける前にグレイさんの目が今は聞くなというから黙り込む。

宿の部屋に戻るとグレイさんは荷物を広げて魔法のポーチに買ったものを仕舞い込んでいく。



「気になるんだろ、あの目が」


「……うん」



ポーチの中に全部片付けたグレイさんが椅子に座るから私も向かい側に座る。

今は防具も外して、剣だけは手元にある程度のラフな格好をしてるグレイさんは一つ息を吐き出した



「王都の軍と地方の軍で確執はない。だが、俺に関しては王国軍内でも地方でも変わらないだろう」


「グレイさんに関して?」


「俺は孤児のガキだった。そこから成り上がっていったもんで、騎士として教育を受けた貴族のお坊ちゃんにも、地方で燻ってる平民出身の奴らからも嫌われてるんだよ」



吐き捨てるように言ったグレイさんは、そう言われることに関して諦めてるようだった。

孤児なんて聞きなれない言葉だった。

グレイさんには親がいなかったということなんだろうか。

それなのに私は、両親に会いたいと……大泣きしてしまった。

グレイさんはどんな気持ちで私を見てたんだろう。



「そんな顔するな。あんたが気にすることじゃない」



空気を誤魔化すようにグレイさんは立ち上がると部屋に備え付けのティーセットで紅茶を淹れていた。

グレイさんが料理ができたのは、野営に抵抗なかったのは、軍で慣れてたからじゃなくてもっと幼い時から、そうするしかなかったから?

魔法学校に通えなかったのも、剣が強いのも、ひとりで生きてきたから?

危険な旅に護衛騎士が一人なのは、グレイさんが死んでもいいってことだったりするの?

紅茶の茶色に波紋が広がる。

私なんかが泣いちゃだめなのに、どうしたって止められなかった。



「なんであんたが泣くんだよ」


「グレイさんっ……私、グレイさんの前で、帰りたいとか…甘えたことばっかでっ…!」


「あんたが言ってたように、無理矢理連れてこられて聖女にさせられたんだろ」


「でも、だって……グレイさんは、すごいのに…どうしてっ、あんな目で見られないといけないの…っ」



もう私は思考もぐちゃぐちゃだった。

私は今でさえこの世界で一人で生きていけないのに、グレイさんはずっと一人で頑張って生きてきて、国で一番強い騎士になった。

それはすごいことなのに、悔しくて仕方ない。

こんなに優しくて強い人が、蔑まれていいわけじゃない。

ぐずぐずと泣く私にグレイさんがどんな顔をしてるかなんて知る由もなかった。


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