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町の宿屋に着くとグレイさんは二部屋確保してくれた。

この町に来るまでの馬車とか宿泊費は大丈夫なのかと今更ながら心配しているとグレイさんは金貨を見せてくれた。



「これを見せると国に支払いがいく。あんたのために使っていい国庫予算から差し引かれていくだろう」


「そんなのがあるの?」


「あぁ。どうせまた百年後に聖女様を呼ばないといけない。今回の旅が終わればまた聖女予算を積み立てていくんだろ。細かいことは知らねぇが」



宿の部屋の鍵はグレイさんが管理するらしい。

勝手にウロチョロしないようにとのことだった。

どうにもグレイさんは私を子供扱いしてるような気がする。

旅の荷物という荷物はなく、グレイさんの持つ魔法のポーチくらいだけれど、それも腰下に身につけてるくらいだから部屋に置くものもない。

寝る時だけ隣の部屋を使えということなのか、グレイさんは同じ部屋にいる。

グレイさんはポーチの中を確認して必要なものをメモに書いていた。



「これはなんて書いてあるの?」


「あんた、文字読めないのか?」


「うん。この世界の言葉は聞けても文字は読めないの」



それは城にいた頃からそうだった。

これを読めと渡された聖女の魔法に関する書物が読めず、それを伝えると口頭での指導になった。

自分なりに紙とペンを借りてメモしたものの、私の使える文字とこの世界の文字は違うようで興味深そうに見られたことも。

どうして言葉は伝わるのに、文字は違うのだろうかと思ったけど異世界だからでスルーしてた。

あの時は家に帰りたい気持ちでいっぱいいっぱいだったから、そんなことを考える余裕もなかったのかもしれない。



「あんたには教えることがたくさんありそうだな」


「教えてくれるの?」


「買い物が出来る程度の知識は必要だろ?」



グレイさんが新しい紙を手のひらサイズに切って何枚かに文字と絵を描いていた。

トマトのような野菜の名前はトマリン、リンゴに似た果物の名前はイデュン。

絵がついてるから覚えやすいし、グレイさんの文字の下に読み方を私が日本語で書く。

そうすることで簡易版異世界用単語帳ができた。



「ありがとうグレイさん!大切にするね」


「買い出しに行くぞ。店で文字も確認できるだろ」



グレイさんは逃げ方といい実践ありきだ。

私がこの世界で生き抜く方法をきちんと教えてくれる感じがして、頼れるお兄さんだなって思っていたところでふと疑問に思う。



「グレイさんのこと聞いてもいい?」


「いきなり何だよ」


「年齢とか、家族のこととか知らないなって」


「歳は二十五」


「私は十七歳だから……八歳年上なんだね」


「へー、計算はできんのか」



やっぱり子どもだと思われてるのかな?

なんて思いながら宿を出てお店に向かう。

八百屋さんとかお肉屋さんとか分かれてるわけじゃなく、商店としてなんでも置いてある感じの店だった。

この世界のお金の数え方はルミスというらしく、お札はなくて全部コインでできている。

リンゴに似たイデュンは一つで二百ルミス。

一ルミスは一円と同じって考えたらいいのかも。

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