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㊳魂、売ります


 「きゃぁぁぁぁぁ!落ちていく~!!」


もうだめだと思った瞬間、ハッと目が覚めた。


そこは、見慣れた天蓋(てんがいベッドの天井だった。


ふかふかのベッドと真新しいシーツに寝かされている。


わたしが身に着けているのは、胸元に小さなリボンとレースをあしらった白いネグリジェドレスだった。


ここは、デスピオ火山城のわたしの部屋のベッドだった。


よかった~。


横になったままだがわたしは、ほっと胸をなでおろした。


またまた落下死かと怖かったのだ。


どこまでもどこまでも際限さいげんなく落ちてゆくだけなのだ。


恐る恐る目をあけて落ちていく先を見ようとしたが、真っ暗闇で見えなかったのだ。


辺り一面、真っ暗闇だった。


上下左右の感覚がなくなりそうになるが、『堕ちている』ことだけは、はっきりしていた。


これまでの遺産殺人で、落下はトラウマになっていて怖かったのだ。


「トラウマというなら、デスリープの度に、自分の死因を簡単にわすれるな」


ベッドサイドには、アスタロト様の姿があった。


「ごめんなさい。アスタロト様、わたし寝たら嫌なこと忘れるタイプなんです」


うけるかと思ったら、ヤギハシさんとシンシアちゃんにマリー様!?と心配されてしまった。


悪魔に心配かける天使って、どうなのか?大丈夫?


「お前は、天使ではない」


冷たい声のアスタロト様。


いつも態度が違っている。


なんだか態度もよそよそしい。


あんなに死の直前に情熱的に愛をかわしたはずなのに……


「情熱的に愛を交わした覚えはない」


あっ!


「心、読めるんですね。テレパシー使えるんですか?」


「……」


せっかく、聞いたのに。


無言って、なんか態度悪くない?


「我の態度は、悪くない!」


ああ!やっぱりバレている。


「マリーなぜ、戻ってきた、『人間』の姿で」


「へっ!?」


やおらわたしを起こし、ベッドヘッドにもたれても痛くないよう飾り枕を手早く敷き詰めてくれた。


いたくな~い


「話しづらいからであって、お前を思いやってのことではない!そんなことよりなぜ人間として戻ってきたかと聞いている!質問に答えろ!」


めちゃくちゃ怒っている。


女学院の風紀の先生を思い出すわ~。


「アスタロト様!目覚めたばかりのマリー様に乱暴なことしないでください!!」


「シンシアさんわが主は乱暴なことはしていませんよ。正しくは、大切にあつかいつつも、乱暴な口をきく、ツンのデレです。アスタロト様、なぜそのような余裕のない思春期男子のような態度を、グフっ」


ヤギハシさんのみぞおちにアスタロト様のパンチがきれいにきまった。


「少し黙れ、ヤギハシ!マリー!答えなさい!!」


「ワタシ、天使ダヨ」


「なんで片言でしゃべる?真面目に答えろ!なぜ、天使にならなかった!?神のもとにいないのだ!?」


アスタロト様はとっても怒っている。


せっかく、戻ってきたのにと口をとがらせて応えてしまう。


「神様には、天使にするって言われました!!でも不本意だったので、嫌と言おうとしたら、床がパかッと割れて落されました」


「堕とされたのか?」


「はい。落とし穴みたいにおちました!」


アスタロト様は、頭を抱えた。


いやぁ~、今日もアスタロト様の御髪おぐしに天使の輪ができて、髪の毛つるつるだぁ~。


どんなお手入れ


「髪のお手入れの方法など気にかけている場合か!?マリー!!真剣におのが立場を考えろ!この馬鹿め!」



プッチ―ン!


「ひどい!起き抜けにのわたしにバカだなんて!!いくらアスタロト様でもひどすぎます!!」


「当たりまえだ、朝、起床して目がさめたのとは、訳がちがうんだ!!お前は、完全に蘇生したのだ!!」


「おお!ジーザス!!」


「殴ったらダメです!アスタロト様!一応レディーなんですから相手は!!」


ちょっと、冗談がすぎたよだ。


ますますアスタロト様を怒らせてしまった。


アスタロト様にげんこつをふりあげさせてしまった。


ヤギハシさんが羽交い絞めにして、シンシアちゃんは、アスタロト様の脇に飛びつき止めてくれた。


ふぅ~、ヤレヤレ。


「一度げんこつでもくらわせないと、こいつにはわからんのだ!!死ぬたびに賢くじゃなく、面白い性格になってしまっているだろう!!」


「ユーもが大事かと」


「はぁ~、マリー。おまえは今、人間として蘇生した。だが、それは、異常事態なんだ」


「どうしてですか?」


「我は、ヤギハシの説得もあり、お前の魂が消滅する寸前に、悪魔への転身の呪いをかけたからだ」


「えっ?」


「いまさらという顔をするな!後悔したくないという念に駆れたのだ。なのに、戻ってきてお前は、人間だった」


「天使でも、悪魔でもなく、人間ですか?」


「そうだ」


「えっ!?もしかして、またタイムリープのデスリープづけの毎日ですか?」


「そうじゃない!だから、こんなに心配している」


「えっ?どういうことでしょうか?まったく、理解できないのですが」


「なぜ人間になったのかは、正直わからん。だが、人間ということは、消滅ぎりぎりの魂の状態だということだ」


「えっ?」


「マリーが亡くなる直前の状態と、なんら変わらんのだ」


ピッカ~ン!


「あああっ!わかりました!天使がプラスだと仮定し、悪魔がマイナスと仮定しましょう。プラスマイナスかけ合わせてゼロ。つまり人間に戻ったということでしょう」


みんが悲しそうな目でわたしを見ている。


「だから、なんだマリー?」


「学校の数学で習いました。数学教師は、よく『数学は世界の真理だ』とおっしゃっていました」


「あああ!」


ヤギハシさんとシンシアちゃんからは賛同をえられました。


よかった、よかった。


「のんきにするな!問題はそこではない、マリー!いいか?お前の魂は、限界にきているままだというところだ!」


そうか。


もしかしたら、また、消えちゃうかもしれなってこと?


「そうだ。だから、お前は、どうしたい?」


「どうって……」


「神のもとに送りとどけることは、可能だ」


えっ!?


せっかく戻ってきたのに。


「天使になれ!もう一度。そして、あちらで幸せに暮らせ!!」


冷たく言いすて、アスタロト様はくるっと背をむけ部屋を出ていこうとした。


「魂、売ります!!」


振りむいたアスタロト様は、目を吊り上げて鬼の形相ぎょうそうだった。


「売るだと!!売ってどうするきだ!?」


「悪魔になります」


「言っておくがなマリー。我は、お前の魂だけは絶対に買わん!、悪魔の契約もせん!」


ベッドカバーをギュっと握った。


「いいか!よく聞け!魂の契約をマリーとかわす悪魔は、簡単に見つからないぞ!!」


わたしには、わかっている。


アスタロト様は怒っているんじゃない。


悪魔の能力が、なくてもわかるのだ。


心配して声をあらげているの。


だから、わたしはがんばる。


「大丈夫です。悪魔侯爵に気に入られ、神すら天使にするほど気にったわたしの魂に、興味を持たない悪魔はいません」


アスタロト様はギクッとなさった。


どうやら図星!


悪魔の足元をみて


「買い手はいくらでもいます。ヤギハシ!ベルゼブブ様、アザゼル様それからルシファー様に連絡して、神が自らの最後の審判で天使を言い渡されたほどの貴重なわたしの魂に興味がないか、伺ってちょうだい」


脅してやるんだから~


「やめなさい!お前は、我を試す気か!?」


「試していません。足元をみて脅しているのですよ、アスタロト様。いえ、アスタロト!わたくしの魂をお前に買ってもらうわよ!」



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