㉝今世のマリー
再び、昼夜がグルグルとまわり、ひとつに溶け合うと、そこは今世だった。
「わたしは、マリー・へスぺリデスを愛している」
アスタロト様は、明確にわたしへの思いを口にしてくれた。
わたしは、涙があふれて止まらなかった。
嬉しい気持ち。
あのアスタロト様が、わたしを愛していると明言してこれたこと。
悲しい気持ち。
わたしの嬉しいと思うこの気持ちを、アスタロト様に伝えるすべがないこと。
そして、わたしには、もうすぐお迎えが来ること。
悪魔になっていなかったから……。
……?アレ?
えっ、じゃどうして、わたし、悪魔の能力を使えたりしたの?
辻褄合わなくない?
やっぱり、本当は!
「なにかにつけ、お前は、わたしに魂を買ってくれ、買ってくれと、前世も今世もいってきた。……正直、気持ちがな、萎えたよ。店の閉店セールの売れ残りみたいに、たたき売りみたいだろう。たったひとつしかない、貴重なものを、たやすく買え買えとおしつけてくる。……マリー、純粋な魂ほど、神にとっても、悪魔にとっても、甘美なものはなのだ。お前の魂は、その純粋さをもってすれば、極上ものだ。なのに、これ見よがしにすぐ、我に売りつけようとする、そんなに悪魔がいいならと前世は思った。でもな、マリー、君には耐えられなかった。悪魔になっても、良心の呵責がつきまとった。そんな悪魔、この世に存在しないのだ」
そんなことない!!
だって、アスタロト様だって、その時も今も、こんなに憔悴して、落ち込んでるじゃない!
「だから、火山に身を投げる直前にたすけ、タイムリープさせた。それから、今回は策をねった。悪魔の基本能力のごくごく初歩を使えるようにとどめた。悪魔にだけは、決してさせないと決めた。たとえ、そのことで、我が永遠の命を持て余し、孤独を味わうはめになってもかまわなかった。マリーを失う喪失感の方が、よほど恐ろしかったのだ」
そうだったのか。
「なのに、持ち前のバイタリティーを発揮して、あんなに使いこなすとは、舌をまいたよ」
なるほど、あれは、全部初歩だったんだ。
なんだ。
アハハハハと乾いた笑い声をアスタロト様は発した。
大丈夫かしらと、思わず顔を覗き込んだ。
うん?覗き込めた?
見えました。
美貌の悪魔は、疲れた顔もまた色っぽい。
あれ~?
透明な壁みたいなのが、なくなっている。
「マリー君には、間もなく天から迎えがやってくる。このままここで、頑張り続けても、漂うだけの魂としてしばらくの間は存在できるだろう。だが、確実にマリーの魂に限界がやってくる。なぜなら、これまでにタイムリープを幾度も繰り返してきた君の魂の強度は、もう限界なのだ。そしてそれは、遠くない未来なんだ。消えてなくなるのを待つだけの身となる。マリー、どこにいる?近くにまだいてくれるのか?だが、もう間もなく、迎えが来る。君なら、天使長にだってなれるかもな。もう二度と、我の前に現れるな。もう、我の心を開放してくれ」




