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㉜マリーとアスタロトの記憶その3


 オイジュス王太子から、信書が届いた。


アスタロト様との宣戦布告状だった。


「悪魔退治が目的だが、真の狙いは、マリーの命だろう」


「わたしですか?」


「ああ。おまえには、こんなことは言いたくないが、マリーが生きていることは、ヤツにとっては、都合が悪いだろうからな」


「アスタロト様に恐れをなして、あきらめたのかと思いました」


だってあれから2ヶ月が過ぎていた。


「やつは、俺から武功を買っているくらいだ。腕前はたかが知れている。おそらく、宗主国の神の子の国に泣きついたのだろう」


「信心深くないのですよ、オイジュスは。」


「こーゆー時だからだろう」


「都合のいい信仰心ですわね」


「その程度の奴だ。マリーは、ヤツをどうしたい?」


「どうって……」


らしめたいか、それとも殺したいのか……」


「鼻をあかしてやりたいです」


「それだけでいいのか!?」


「もう二度と、関わりあいになりたいくないです」


「わかった。その望みかなえよう。あああ、言っておくが魂は、売らなくていいからな」


「へぇ?いらないですか?」


「マリー。魂は、もっと大事にあつかいなさい」




 オイジュスとの戦いは、あっという間に決着をみた。


悪魔に転身しただけで、わたしは、オイジュスが率いる騎士の軍勢をものともしなかった。


つまり、数の問題ではなく、武力の差は、圧倒的だった。



アスタロト様とわたしのふたりがかりで、王太子軍を撃破したのだ。


敗戦の将は、命をとらるのが常だ。


けれど、わたしは、オイジュス王太子の命までは取るつもりはなかった。


そですりあうも他生たしょうの縁ではないけれど、間違ってはいたが、初恋の人だったからだ。


わたしの目の前で、情けない姿を見せられ、姉のエリス王女ともども泣きながら、命乞いをされては、気持ちもいでゆく。


「わかりましたわ。命までは取りません」


「あっありがとう、恩に着るよ、マリー。やっぱり君は……」


「それ以上は、言わないくていいわ。あなたのその軽はずみなひとことが、どれほどエリス王女を傷つけるか、よく考えてちょうだい。 オイジュス、あなたは王太子よ、次期国王になるひとなよ。私利私欲ではなく、国民にとって良き国王になって、それから、わたしとへスぺリデス家には、もうかかわらないで、それだけが、わたしの願いよ」


「わかったよ、マリー」


「ありがとう。……さよなら」


背を向け、わたしはオイジュスに永遠の別れをした。


やっと終わった。


これからは、悪魔として生きる。


そして、愛するアスタロト様の妻として生きていくのだ!


「マリー!!!」


背を向けていたから、わたしは気づかなかった。


オイジュスの性根は、腐りきっていたことに。


私の隣にいた、アスタロト様だけが、いち早く反応し、オイジュスをとっさに切り捨てた。


オイジュスの死は、自業自得じごうじとくだった。


でも、ことは、これだけでは終わらなかった。


エリス王女は、ひとりスオカ王国に戻った。


それ以外に道はなかったからだ。


オイジュスとエリスのふたりの悪事は、生き残ったエリスひとりがかぶることになった。


エリス王女は、世紀の大悪女として国民っ宗主国から徹底的に断罪された。


彼女には、弁解の余地も、本音を吐露とろする機会も与えられなかった。


衆人環視しゅうじんかんしのなかで、ギロチンにかけられた。


エリスの最後の言葉は、わたしへのうらみの言葉だった。


二人の死は、わたしの心に変化をもたらした。


悪い方に。


日々、わたしは二人の死の原因の一端いったんが、わたしにあると考えるようになっていた。


オイジュスの気性きしょうを理解していれば、防げたのではないかという考えにさいなまれていった。


スオカ王国は、結局、主を失った。


主を失った王国は、宗主国にほしいままにされた。


政治の名のもとに蹂躙じゅうりんされ、属国におとしめられた。


スオカ王国の国民たちは、厳しい生活を余儀なくされた。


また、そのことも、わたしの心の負荷を大きくした。


自分だけ、幸せになっていいの?


気持ちは、理性を凌駕りょうがし、行動を支配していく。


アスタロト様と幸せの日々は泡沫うたかたの泡と消えた。


わたしたちの関係は、すれ違いをうみ、ふたりのあいだには、溝ができた。


わたしが、悪魔でも死ぬ方法があると知ったのは、そんな頃だった。


地獄の業火で、未来永劫えいごう焼き殺され続ける。


神の国にも、輪廻転生りんねてんしょうすることもできない。


永遠に自分の罪をつぐないつづけるらしい。


わたしは、地獄の業火にむかうため、デスピオ火山に身を投げた。


アスタロト様のこの後の苦しみに、わたしは、気づきもしなかったのだ。



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