㉓王太子の残酷な報告と真の目的
エーデンバッハには、人の気配が全くしない。
小さな村だが、それなりに村人が、いるはずだ。
今日のために、オイジュス王太子によって、人払いがされているようだ。
オイジュスが、人払いをするときは、都合の悪い時と今までの経験からわかってしまう。
エーデンバッハの教会にいるのは、アスタロト様、ヤギハシさん、そしてわたしだった。
本来は二人で十分とのことだったが、無理矢理ついてくるとい暴挙にでた。
「反対だ!!」
何度もキッパリと言われ続けたけれど、自分に関わってしていることだからと、お願いして連れてきてもらった。
「危ないことはするな」
「いうことをきくこと」
以上が、アスタロト様からの絶対条件だった。
「最近覚えた技があるのですが……」
「ダメだ!どこで、そんなもの覚えた」
ちらりとヤギハシさんを見てしまった。
「ろくでもないことを!危ないことをおしえるな!!」
「なにをそんなに、心配されているのですか?」
「あたりまえだろう!!」
「囮にでも使えばいいではありませんか?マリー様は悪魔なのですから、死ぬ心配はないでしょう?」
ギョッとした。
いつものヤギハシさんらしからぬ発言だ。
「そんなことをせずともー」
「悪魔の力で、チョチョイのチョイ。怪我をしてもチョチョイのチョイです」
「お前!ふざけているのか!?」
「ふざけてなど、アスタロト様こそ、らしからぬその態度、おかしいではありませんか?」
「おかしくなどない!!」
「わたしは、ヤギハシさんに頼み込んで、新たな技を習得したんです。『悪魔の業火』です」
「業火?マリー、おまえがか!?」
「心配ならば、アスタロト様が、じかに手ほどきをして差し上げればよかったのですよ。どうせ、あの王太子が相手です」
押し問答の末に、この場に連れてきてもらった。
エーデンバッハ村に、正午の鐘が鳴り響く。
教会の中から、オイジュス王太子と大勢の甲冑にみをつつんだ騎士たちが出てきた。
「やぁ、よくぞ逃げずにやってきたな。褒めてつかわす」
以前にもまして尊大な物言いをするようになっていた。
「おやぁ?そこにいるのは、淫乱マリーじゃないか?戻ってくる気になったかな?」
「なにを馬鹿なことを!絶対に戻りません!!」
「おやぁまぁ困った奥様だ。髪の色変えたんだね。黒いのもいいねぇ」
ゾゾゾっとした。
「黒より金髪の方がお好きなんおではないのですか?エリス王女様のような!」
「アハハハハハ。そうだね!朝露の白薔薇の方が、美しいもの」
「みさげた奴ですね~」
いかにもあきれ果てた様子でヤギハシさんが言い捨てた。
「人間とはおもえん、見下げた奴だ」
「なに~?何か言った?ぼくはね素直なんだ。自分の欲望に。それで他人がどうなろうと知ったことじゃない。マリー、君だってそうだろう?王太子だからぼくと結婚したかったんだろう?」
違うといいたかった。
初恋だったから。
でも今ではそのことを、アスタロト様に知られたくなかった。
ーだから来るなと言ったんだ。おまえが嫌な思いをするだけだとわかっていた……ー
ーアスタロト様ー
「帰ってくるなら許してあげるよ~」
ブチッ!
堪忍袋の緒が切れる音がした。
「帰るわけないでしょう!人殺し!!」
「殺してないよ~。失敗してるじゃん~」
アハハハハハハ。
馬鹿みたいによくも笑えたものだ。
「あんまり、すげない態度はよくないよ。マリー。家族がどうなってもいいの?」
「!!!」
「あれれれ?ぼくから、逃げ切れると思った?商人風情が?」
「何をしたの!!」
嫌な予感がする。
アスタロト様が、わたしの肩に手をまわしてはげますように支えてくれた。
テレパシーなんかなくても伝わってくる。
「宗主国に、なんか~、お手紙を持っていこうとしていたから~、宗主国の大臣に頼んで捕まえてもらったんだ。大臣は、エリスのことを気に入ってるから、なんでも言うことを聞いてくれるよ~」
その直後、わたしは怒りに体をふるわせた。
街での噂は、ほんとうだったのだ。
お父様たちは、逃げ切れなかったのだ。
「もちろん、私財は、すべて没収。あっイヤ、没収中なんだ。たっくさんあるから。あんなにあったら、使い切れないね」
「お父様たちは、どうしてるの!?」
「牢獄にいるよぼくの口添えで、ねぇ、助けてあげられるかもよマリー?」
うそだ!
ーマリーお前の家族は、こちらで助けるー
「マリー、君を遺産めあててで殺す必要はないんだ。でもね」
「でも何よ!?」
ー落ち着けマリー挑発になるなー
「でも!?」
オイジュスは薄ら笑いを浮かべながら、本当の目的を語りだした。
「マリー、君に生きててもらっちゃ困るんだ。君は、頭がいいから、知り過ぎた。ぼくの悪事の数々を。王妃毒殺、国王暗殺未遂、汚職に、横領、実の姉のエリス王女との関係。アハっ!ぼくってなんてずる賢いんだろうね」
「悪魔も真っ青だな」
「そうでしょう?けど生き証人のマリーを野放しにはできないよね。ぼくの欲望をまだまだ叶えなくちゃならないから。それと、初夜に花嫁に逃げらたことになってるけど、ぼく、我慢ならないんだ。お姉さまは、その方がいいと言うけれど、かっこ悪いじゃないか!!新妻に逃げられるなんてさ!」
気がふれたように激しく地団駄を踏むオイジュスの姿は、狂気に満ちていた。
アスタロト様がわたしの肩に置いた手が、しかっりとつかんでいた。
ー大丈夫か?毒気にあてれただろう?もうこれ以上はなすな。アイツはもう正気ではないー
「こんな大勢の騎士たちに聞かれてもいいの!!」
「構わないよ~み~んな、お金で雇ったった宗主国からの騎士ばかり」
「!!!」
「当たり前だろう。王国の騎士を連れてくるわけない。アスタロトに歯が立たないうえ、意外とへスぺリデス家の当主をかっている奴が多くて、いうことなんか聞きやしなし。だから、心配ないよマリー。君を仕留め損ねた暗殺者よりみんな腕が立つから、安心して殺されな」




