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魔法道具修理職人


王都の裏通りに、一軒の小さな工房があった。


看板にはこう書かれている。


「魔法道具修理 承ります」


今日も朝から扉が勢いよく開いた。


「助けてください!」


若い魔法使いが一本の杖を抱えて飛び込んできた。


「この杖、昨日まで雷が出たんです!」


修理職人は眼鏡を押し上げる。


「それで?」


「今日はシャボン玉しか出ません!」


「ほう。」


職人は杖を受け取り、軽く振ってみた。


「サンダー。」


ぽん。


ふわふわ。


七色のシャボン玉が店いっぱいに浮かんだ。


「……きれいですね。」


「きれいじゃ困るんです!」


---


職人は杖を分解した。


魔力回路。


雷石。


風の結晶。


どれも異常はない。


「おかしいな。」


その時、小さな紙切れが落ちた。


職人は拾い上げる。


そこには細い字で書かれていた。


«『お子様モード』»


「……なるほど。」


---


職人は魔法使いを見た。


「失礼ですが、この杖を誰かに貸しましたか?」


「はい。」


「昨日、姪っ子が『魔法使いごっこ』をしたいって。」


職人は深くうなずいた。


「最近の杖には安全装置が付いています。」


「子どもが持つと、自動的に危険な魔法は出ません。」


「代わりにシャボン玉や花びらが出る仕組みです。」


魔法使いはぽかんとした。


「そんな機能が?」


「最新版です。」


---


職人は杖の柄を軽くひねった。


「カチッ」


小さな音が鳴る。


「これで解除です。」


魔法使いは恐る恐る杖を構えた。


「サンダー!」


バリバリバリッ!


店の外に一本の雷が走る。


「戻った!」


魔法使いは大喜びした。


---


代金を払い、帰ろうとしたその時。


職人は一枚の紙を手渡した。


『取扱説明書』


魔法使いは苦笑いした。


「……読まなきゃ駄目ですか?」


職人は真顔で答えた。


「魔王より恐ろしいのは、説明書を読まないお客様です。」


その瞬間、工房中の修理待ちの客たちが、一斉に目をそらした。


どうやら全員、説明書を読まずに壊したらしい。


職人は今日も静かに工具箱を開く。


明日はどんな"故障"が運ばれてくるのだろうか。

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