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魔王軍のダンジョン管理人


魔王軍には、あまり知られていない職業がある。


ダンジョン管理人。


仕事は、魔物を指揮することではない。


落とし穴の点検。


たいまつの交換。


壁のひび割れ修理。


宝箱の補充。


そして――


勇者アンケートの回収。


---


「ご攻略、ありがとうございました。」


ダンジョンを脱出してきた勇者に、管理人は笑顔で一枚の紙を差し出した。


勇者は首をかしげる。


「……何これ?」


「今後のダンジョン運営の参考にさせていただきます。」


「運営?」


「はい。」


勇者は戸惑いながらも記入した。


---


翌日。


魔王軍の会議室。


管理人はアンケートを読み上げる。


「ご意見、一件目です。」


«『第一階層が暗すぎます。』»


魔王はうなずく。


「照明を増やそう。」


「二件目です。」


«『階段が多く、足が疲れました。』»


大臣が言う。


「エスカレーターを……。」


「却下です!」


管理人が慌てて止めた。


「三件目です。」


«『ボス戦の前に休憩所があると助かります。』»


魔王は腕を組んだ。


「……給水所くらいなら。」


「魔王様!」


「四件目です。」


«『宝箱が少ないです。』»


財務大臣が青ざめる。


「それは予算が……。」


「五件目です。」


«『スライムがかわいかったので倒せませんでした。』»


スライム隊長が涙ぐむ。


「評価されました……。」


---


一か月後。


ダンジョンは生まれ変わった。


通路は明るくなり、


休憩用のベンチが置かれ、


ボス部屋の前には、


「ここから先、ラスボスです。」


という立て札まで設置された。


---


その結果。


勇者たちは口々に言った。


「前より攻略しやすい!」


「親切!」


「初心者にもおすすめ!」


管理人は満足そうにうなずく。


---


しかし翌月のアンケートには、


こう書かれていた。


«『簡単すぎます。もっと歯ごたえが欲しい。』»


管理人は頭を抱えた。


「また改装か……。」


---


魔王は苦笑しながら言った。


「敵というのは、難しいものだな。」


管理人は真剣な顔で答える。


「はい。」


「満足していただけるダンジョン作りに終わりはありません。」


その言葉を聞いた勇者は思わず吹き出した。


「……あんた、本当に魔王軍なのか?」


管理人は胸を張って名札を見せる。


そこにはこう書かれていた。


『魔王軍ダンジョン管理部 勇者満足度向上課』


翌年、そのダンジョンは冒険者向け雑誌で見事一位を獲得した。


評価は――


★★★★★「また攻略したくなる魔王城!」

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