魔道具鑑定人【呪われた指輪】
「この指輪を外してください」
朝一番の依頼人は、六十歳くらいの男性だった
左手の薬指には、銀色の古い指輪
男は困ったように笑う
「どんな魔法でも外れないんです」
私は魔道具鑑定人
魔法の宿った品物を調べ、その正体を見極める仕事だ
私は指輪にそっと手をかざした
淡い青い光が浮かび上がる
「なるほど」
依頼人が身を乗り出す
「やはり呪いですか?」
私は首を横に振った
「いいえ」
「え?」
「この指輪は、呪われてはいません。」
男は目を丸くした。
「ですが、何十年も外れないんです」
私は鑑定結果を読み上げる
『契約の指輪』
効果
『互いが生涯愛し合う限り、決して外れない』
男はしばらく黙っていた
そして、小さく笑った。
「そんな魔道具を、若いころ妻と買いました」
「奥様は?」
「十年前に病気で」
店の中が静かになった…
私はもう一度、指輪を調べた
おかしい
魔法は、まだ続いている
「失礼ですが……」
私は尋ねた
「あなたは今も奥様を愛していますか?」
男は迷わず答えた
「もちろんです」
私は静かにうなずいた
「では、外れません」
「……え?」
「この指輪は、あなたの気持ちだけで動く魔道具ではありません」
私は指輪を見つめる
「奥様も、今もあなたを愛していると、この魔道具は判断しています」
男の目に涙が浮かんだ
「そんな……」
帰り際
男は指輪を外そうとはしなかった
「ありがとう」
そう言って、何度も指輪を優しく撫でていた
私は鑑定書を書き終え、依頼内容の欄に一行だけ付け加えた
『呪われた指輪ではない 祝福され続けている指輪である』




