6/39
古びた街を守るゴーレム
夜明けとともに、古い城門が静かに開く
きしむ音だけが、誰もいない街へ響いた
私は門番のゴーレム
三百年前、この街を守るためにつくられた
主人が最後に残した命令は、たった一つ
「街を守れ」
それ以来、一日も休んだことはない
朝になれば門を開け、石畳を掃き、橋の落ち葉を集める
噴水を磨き、花壇の手入れをし、夕暮れには門を閉じる
街にはもう誰も住んでいない
市場は風だけが歩き、時計塔は時を数える相手もなく鐘を鳴らし続けている
それでも私は、毎日同じ仕事を繰り返した
命令だからではない
いつか誰かが帰ってくる日、この街が「おかえり」と迎えられるように
そう信じていた
ある朝、小さな足音が聞こえた
振り返ると、一人の旅人が門の前に立っている
驚いた顔で、私を見上げていた
私は胸に手を当て、三百年前と変わらぬ礼をする
「ようこそ」
少しだけ声が震えた
「三百年ぶりのお客様です」
その日、街には久しぶりに人の笑い声が響いた
噴水の水は朝日にきらめき、石畳はどこか誇らしげに光って見えた
三百年続けた仕事は、たった一人を迎えるためだったのかもしれない
そう思うと、長い年月もほんの一日のように感じられた




