表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
51/111

瞑想スライムのリラクゼーションサロン

都会の喧騒から遠く離れた山奥で、私は小さなリラクゼーションサロンを営んでいる


今日の予約客は、全身に無数の古傷を刻んだベテラン戦士だった。


「おい、本当にこんなスライムで疲れが取れるのか?」


 腕を組み、いかにも疑わしそうな目で、水色のスライムを見下ろしている。



「もちろんです。彼らは『瞑想スライム』戦うことも、獲物を追うこともなく、ただ静かに心を空っぽにして生きる、とても珍しい種族なんですよ」


 私は戦士をふかふかの座布団へ案内し、その両脇へ二匹の瞑想スライムを置いた



 スライムたちは「ぽよん」と丸くなると、それきり動かない。



 ただ、ゆっくりと身体を膨らませ、ゆっくりと縮ませる。


 まるで呼吸そのものだった。


「目を閉じて、彼らの呼吸に合わせてみてください。焦りも、怒りも、後悔も……今だけは手放しましょう」



 戦士は渋々目を閉じる。



 最初は浅かった呼吸が、やがて深く、穏やかなものへ変わっていく。


 部屋には「ぽよぉ……ぽよぉ……」という小さな音だけが響く。



 何も考えない。


 何も求めない。


 ただ、そこに在る。



 その静けさは、不思議と人の心まで静かにしてくれるのだ。


     ◇


 一時間後。


戦士は目を開けると、まるで別人のように穏やかな表情になっていた。


「……驚いたな。剣ばかり握って生きてきたが、心を休ませるというのも悪くない」



 そう言って瞑想スライムを優しく撫でる。



 スライムは気持ちよさそうに、ぷるんと震えた。



「来週も頼む」



「ありがとうございます。またお待ちしております」


 戦士は軽く手を振り、晴れやかな足取りで帰っていった。



 私は深く一礼し、予約帳へ彼の名前を書き込む。


 そのときだった。


「先生。」


 受付係のゴブリンが、小声で私を呼んだ。


「……はい?」


「実は前から気になってたんですが。」


 ゴブリンは、部屋で丸くなったままの瞑想スライムを指差した。


「あの子たち、瞑想じゃなくて昼寝してるだけですよ。」


私はしばらく黙ってスライムたちを見つめた。


二匹とも、小さく寝息を立てながら、幸せそうにぷるぷる揺れていた。


 ……まあ、お客様が癒やされるなら、それでいいか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ