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宝箱補充係

勇者が宝箱を開ける。



その瞬間、世界中の誰もが歓声を上げる


だが、その宝箱を補充する人のことは、誰も知らない。



私は宝箱補充係だ



毎晩、冒険者が帰ったあとに迷宮へ入り、空になった宝箱へ新しい中身を入れて歩く



「三階、回復薬ひとつ」


「五階、銀貨三十枚」


「十階……また空箱か」



思わずため息が漏れた。


昨日、伝説の剣を入れた宝箱である




「まさか、一日で持っていくなんて」




台車を押しながら迷宮を歩いていると、後ろから小さな声がした


「すみませーん」




振り返ると、宝箱が一つ、ふたをぱたぱたと揺らしている



「あの、私、中身が空なんですけど」


「君は昨日補充したばかりだろう」




「でも最初に来た冒険者が全部持っていっちゃいました」




「人気箱も大変だなあ…」




また帳簿を開き、新しい回復薬を入れてやる。



宝箱は満足そうに、ぱたんとふたを閉じた。




その夜は忙しかった


「鍵が壊れました」




「ミミックさんと場所が入れ替わっています」



「金貨を入れすぎて重くて閉まりません」



迷宮中から次々に苦情が届く


私は工具箱を抱え、汗だくで走り回った



夜明け前。



ようやく最後の宝箱へ金貨を入れ終える



「これで今日も終わり……」



そうつぶやいた瞬間だった


遠くから、元気な声が響く





「やったー! ダンジョン一番乗りだ!」


私はゆっくりと空を見上げた


そして、まだ温かい宝箱をそっとなでる


「……今日は残業だな」




迷宮の朝は、勇者たちの冒険とともに始まる





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