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ゴーレム【宝物】


昔々。

 



……といっても、ぼくにとっては、ほんの五百年ほど前のお話です

 


その日、ぼくは宝物を埋めました


宝箱ではありません


木箱です


少しだけ立派な木箱


中には、大切なものを入れました


きれいな丸い石


虹色に光る鉱石


鳥が落としていった青い羽


川で見つけたガラスのような石


そして、春になると甘い香りのする花の種


どれも、お金にはならないものばかりです


でも、ぼくには全部、宝物でした


「また五百年くらいしたら見てみましょう」


そう思って、土をかぶせました


目印には、小さな若木を一本


これなら忘れません


だって、木は一本しかありませんから







それから五百年


今日は宝物を掘り返す日にしました


あの若木は、きっと立派な大木になっているでしょう


ぼくは森へ向かいました


ありました


大木です


……たくさん


右にも


左にも


前にも


後ろにも


全部、大木です


「あれ?」


ぼくは首をかしげました





そうでした


木は育つだけではありません


種を落とします


その種も育ちます


また種を落とします





五百年もあれば、小さな一本の木は、大きな森になるのでした


「困りました」


どれが目印だったのでしょう


一本ずつ見て回ります


「ちがいます」


「ここでもありません」


「こちらでも……」


半日ほど歩きました


ぼくにとって半日は、少し急ぎ足です


それでも見つかりません


休憩することにしました


木にもたれて空を見上げます


風が葉を揺らします


鳥が歌っています


リスが木の実を運びます


遠くでは、小鹿が水を飲んでいました


静かな森です


そういえば


五百年前は、こんな森ではありませんでした


鳥も少なく


木陰も小さく


夏になると、地面はすぐ熱くなっていました


「大きくなりましたね」


思わず、森につぶやきます


返事の代わりに、風が吹きました


葉っぱが、ぱちぱちと拍手をしているようでした


宝物は見つかりません


でも、不思議と残念ではありませんでした


ぼくが埋めた種は、きっとどこかで花を咲かせたでしょう


鳥の羽は土へ還り


丸い石は、今も眠っています


宝箱は見つからなくても


この森は、ちゃんと残っていました


ぼくは立ち上がり、服についた葉っぱを払います


「また五百年後に探しましょう」


そのころには、もっと見つからないかもしれません


でも、それも楽しそうです


帰り道


足元に、小さなどんぐりが落ちていました


つやつやしていて、とてもきれいです


ぼくは拾って、そっとポケットへ入れました


「新しい宝物です」


次は、目印を石にしましょう


……そう思いましたが


五百年もたてば、石のまわりにも、きっと森ができるのでしょう


まあ、その時はその時です


宝物は探している時間も宝物です

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