異世界ハローワーク「一番人気の求人」
異世界ハローワークの朝は早い
開庁前から長蛇の列ができている
「今日は魔導研究所の募集ですか?」
「王宮騎士団の追加採用でしょうか?」
そんな期待の声を聞き流しながら、職員のリーナは求人票を掲示板に貼った
その瞬間だった
「出たーーっ!」
冒険者、魔法使い、エルフ、ドワーフ、獣人まで、一斉に掲示板へ駆け出す
「整理券! 整理券ください!」
「押さないでください! 一列に並んで!」
わずか三十秒
求人票は「募集終了」の札に変わった
隣の新人職員が目を丸くする。
「すごい人気ですね……勇者募集ですか?」
ベテラン職員は首を振った
「違います」
「じゃあ王宮勤務?」
「違います」
「伝説の賢者の弟子?」
「もっと人気です」
新人は求人票を見て固まった
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魔王城 食堂スタッフ募集
仕事内容:料理の配膳、食器洗い
勤務時間:八時間
残業:なし
休日:週二日
社会保険完備
有給休暇あり
まかない付き
ボーナス年二回
勇者襲来時は避難手当支給
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「……え?」
新人は思わず聞いた
「魔王城って、もっと危険な職場じゃないんですか?」
ベテラン職員は苦笑する
「昔はね」
「今は違うんですか?」
「魔王様が『部下が幸せじゃないと世界征服なんて成功しない』って経営方針を変えたの」
「ずいぶん現代的ですね」
「働き方改革の結果、離職率はゼロよ」
そのとき、受付に一人の男が飛び込んできた
「まだ間に合いますか!?」
「申し訳ありません。本日の募集は締め切りました」
男は肩を落とした
「またダメか……」
「そんなに人気なんですか?」
男は遠くを見る目でつぶやく
「前の職場が勇者パーティーだったんです」
「それは立派なお仕事では?」
「ええ、でも休日なし、回復役不足、宿代は自腹、食事は干し肉ばかり……」
新人は黙って求人票を見つめた
その横には、小さな文字が書かれていた
※職場見学歓迎(魔王様がお茶をお出しします)
新人は静かに自分の履歴書を取り出した




