異世界 郵便配達員「百年後に届く恋文」
「この手紙を届けてほしい」
一人の青年が、郵便局を訪れた
カウンターにいたゴブリン郵便配達員は、宛名を見る
『エルフのリリアへ』
「配達日は……百年後?」
青年は笑ってうなずいた
「それでお願いします」
「百年も経ったら、私は定年ですよ」
「その時は、後輩に引き継いでください」
青年は配達料金を払い、深く頭を下げた
「必ず届けてください」
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百年は長い
青年は翌年、病で亡くなった
郵便局の棚には、一通の手紙だけが残った
やがてゴブリンは引退した
後輩へ手紙を託す
「大事な配達だ」
後輩も歳を重ね、また次の配達員へ
手紙は何代ものゴブリンたちに受け継がれた
封筒は新しいものへ替えられても
中の便箋だけは誰も開かなかった
郵便局の決まりだからだ
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百年後。
若いゴブリン配達員は、森の奥の家を訪ねた
白い髪のエルフが庭に立っている
「お届け物です」
「私に?」
「百年前にお預かりしました」
エルフは震える手で封を開いた
便箋には、たった一行
『君と過ごした一年は、僕の一生より長かった』
エルフは目を閉じた
涙が一粒、手紙に落ちる
ゴブリンは帽子を取り、静かに一礼した
「確かに、お届けしました」
帰り道
後輩が尋ねた
「先輩、あの手紙には何が書いてあったんですか?」
ゴブリンは笑って首を振る
「郵便配達員は手紙を読まない」
少し歩いてから 空を見上げる
「でもな」
「百年待っても届けたい手紙がこの世にはあるらしい」
そう言って、次の配達先へ向かった




