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至高の白

クナー港に、久方ぶりの喧騒が巻き起こった。


「クリフトンが帰ってきた!」


その名がギルド内を駆け巡った瞬間、受付の職員も訓練中の冒険者も一斉に顔を上げた。サファイア級──冒険者としての上位三番目の階梯。高難度依頼を成功させて名を馳せ、三年前に姿を消して以降、一部では「海の底に沈んだ」とまで噂されていた男の帰還だった。


エミリー・フラーが執務室から出てくると、ちょうど玄関から入ってきた大柄な男と目が合った。日に焼けた肌に風に晒された長髪、だがその笑みは変わらなかった。


「おう、フラー嬢。久しいな。俺がいない間にクナーは沈んでないようで、何よりだ」


「沈ませるのはいつもあなたの方でしょう、クリフトンさん」


軽口を返すと、彼は愉快そうに笑った。だが、今回の帰還にはそれ以上の意味があった。


「見つけたんだよ、“至高の白”を。70年前、魚人族との戦いで失われた真珠のネックレスだ。エインズワース侯爵の依頼だった」


その名に、ギルドの空気が一瞬張り詰めた。侯爵家──王国でも屈指の名門であり、その遺失物を取り戻したとなれば、国に名を刻む功績といえる。


「侯爵殿は、金貨と土地、そして一代貴族の地位を報酬に出すって約束してたんだ。俺も、いよいよ“サー・クリフトン”様ってわけだな」


クリフトンは胸を張り、勝利宣言のように笑った。


「ただ……鑑定と正式な認定には、専門家の審査が要るってさ。最短でも二ヶ月、三ヶ月はかかるらしい」


エミリーは頷いた。その間に事実確認、品の真正性、保管状態、そして政治的な諸調整も含めた手続きが必要になるだろう。


「でもまあ、長旅の疲れもあるし、しばらくはクナーに腰を据えるさ。地元に錦を飾るってやつだ」


その背を見つめながら、エミリーはふと思った。


──これで、クリフトンは本当に貴族になるのだろうか? それとも、その輝きの影に何かが潜んでいるのか。


彼の帰還が、ただの凱旋に終わらない予感が、どこかでエミリーの胸に芽生えていた。

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