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好奇心は猫を殺す

事件の真相に近づこうとしたエミリーの動きは、意外なほど早く察知された。


ギルド内の報告書を控えめに閲覧し、当日の出発手配を担当した下級職員に声をかけたその日の夕刻。彼女は支部副長セルマ・ディルノから「執務室に来るように」と一報を受けた。


執務室の扉を開くと、セルマ副長はいつもの冷静な表情で机に向かっていた。銀縁の眼鏡越しに、書類ではなく彼女の顔をじっと見つめている。


「エミリー・フラー。君にしては珍しく、好奇心が過ぎるようだ」


エミリーは姿勢を正したが、返す言葉は選ばざるを得なかった。副長は静かに、しかしはっきりと語り始めた。


「今日は善意で忠告する。職務命令ではない。ただ、君の立場を思えば、耳を傾けるべき内容だ」


セルマは一枚の書簡を机の上に置いたが、それを見せることはなかった。その上に手を重ね、続けた。


「君は冒険者ギルドの職員であると同時に、スィニ商会クナー支店長の娘でもある。この件に深入りすれば、君の身が危ない。それはスィニ商会との関係にも影響が発生する」


エミリーは唇を引き結び、言葉を飲んだ。副長はさらに、言葉を簡素に、そして重たく続けた。


「“好奇心は猫を殺す”という言葉を知っているだろう?」


その一言に、室内の空気が凍りついたように感じられた。


「知りたければ、出世しろ。立場が上がれば、見える景色も変わる。だが今の君では、その先を覗くには早すぎる」


沈黙が続いたあと、セルマは静かに結んだ。


「これは警告ではない。忠告だ。私個人として、君を失いたくない。それだけだよ」


エミリーは頭を下げるしかなかった。副長の言葉が脅しでないことはわかっていた。それでも、自分の中で灯った疑念と怒りの火は、消えることなく残っていた。


執務室を出た後、ギルドの中庭に降りたエミリーは、夜風に晒されながら深く息を吐いた。


──ならば、出世してでも真相に辿り着いてみせる。


それが若者たちの死に報いる、唯一の道なのだと、彼女は静かに心に刻んだ。

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