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機密

クナー支部の上階にある会議室。その扉の向こうからは、重々しい声と時折交差する鋭い口調がわずかに漏れ聞こえていた。


会議に出席しているのは、クナー冒険者ギルド副長セルマ・ディルノと、鉱山都市バルベラのギルド副長オルグレン・マスティア。文書強奪事件を受け、急遽セッティングされた非公開の会談だった。


エミリー・フラーは、扉からやや離れた廊下の端で書類を片手に待機していたが、実際のところ心ここにあらずだった。文書搬送任務の依頼者でありながら、今回の文書の内容には一切アクセス権がなかった。上位機密として扱われていたからだ。


「……いったい、何が書かれていたの……?」


思わず、誰にともなく呟く。あの四人の若者たち──「種蒔きの星」が命を賭して運ぼうとしていたその文書。初級の銅級冒険者に託すには、あまりに重大な結果を招いた。


「どう考えてもおかしい。今行われている会談のレベルのを考えると、少なくとも銀級以上の護衛が付いてしかるべきだったはず」


自らの記憶をたどる限り、あの封筒に特筆すべき印も注意事項も見当たらなかった。ただの文書搬送として処理され、彼らは通常の任務として送り出された。それが──何故、命を落とさなければならなかったのか。


エミリーの背筋に、じわりと冷たいものが這い上がる。


──あるいは、最初から彼らが狙われることを前提にされていたのでは?


その考えにたどり着いた瞬間、胸の奥が苦しくなった。そんなはずはない──と否定するには、四人の死があまりにも不自然だった。


「エミリー。副長から連絡があるまで、誰にも近づけさせるな」


背後から声をかけられ、彼女は反射的に頷いた。だが、心のなかには一つの疑念が渦を巻いていた。


──あの文書には、何が記されていたのか。


──そして、それは本当に「冒険者に運ばせる」べきものだったのか。


答えはまだ、暗い扉の向こうに閉ざされていた。だがその重みは、エミリーの肩にも静かにのしかかっていた。

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