誕生日パーティー
4月を迎え季節も春になってきた頃、俺はやたらと従者たちから屋敷を追い出される日々が続いていた。
……俺は一応領主なのだが。
俺に聞かれたら困る話でもあるのか、何かをしているのか全く持ってさっぱりである。
今日も今日とて実家に追いやられているわけなのだが……
「そりゃあ春樹のためじゃないか?」
「俺のため?」
リビングで小説を読んでいた父さんが、ふと思い出したかのように呟いた。
「もうすぐ春樹の誕生日だろう?」
「そういえばそうだな」
確かに言われてみれば後1週間程で俺の25歳の誕生日だ。
ここ最近は忙しすぎて誕生日のことなどすっかり忘れていたから気付かなかったのだが、田中さんあたりが住民票を見て教えたのだろう。
それにしても、そうならそうで言ってくれればいいのに……サプライズというやつだろうか?
従者のみんなが俺のために何かを考えてしてくれるのは嬉しいが、これで誕生日のサプライズじゃなかった時が恥ずかしい。
いつも通り何も知らないままの俺でいよう。
「俺たちからもプレゼントがあるから当日取りにおいで」
「父さんも母さんもありがとう」
それから俺はラディが迎えに来るまで実家でのんびりしつつ父さんの小説を読んで過ごすのだった。
◆◆◆
あっという間に1週間が経ち、俺の誕生日当日を迎えた。
やたらと従者たちがソワソワしていたからやはり誕生日のサプライズだなと俺は確信しているが、何も知らないふりをして両親からのプレゼントを受け取りに来ていた。
そして段々屋敷に近づくにつれて俺がソワソワしてきたが、意を決して玄関の扉を開ける。
「「「「お帰りなさいませご主人様、そしてお誕生日おめでとうございます!」」」」
「誕生日おめでとう春樹」
「お誕生日おめでとうございます領主様」
廊下の両端にはずらっと並ぶ従者たちに、当たり前かのように居るエルとアス。
こんな大勢の人たちに祝われる経験など初めてで、とても嬉しいのだが……
「どうして全員がメイド服なんだ」
俺はどうやら誕生日当日も頭を抱えてツッコまなくてはいけないみたいだ。
とりあえず俺たちは食堂に移動した。今日は全員で安藤さん特製の誕生日メニューを食べようということになったからだ。
「改めましてご主人様、お誕生日おめでとうございます」
席に着くとポニーテールのウィッグを被り、パツパツのメイド服を着たセバスに祝いの言葉を改めて言われたのだが、視覚の暴力が凄い。
正直、おめでとうの言葉よりもそっちのインパクトが凄すぎて全然響いてこない。
「……ありがとうセバスにみんな。それで、その格好の意味は教えて貰えるのか?」
「従者一同プレゼントは何がいいかと話し合った結果、ご主人様が常日頃欲しているメイドに我々がなればよいのではないかという結果に至りました」
どうしてそうなった。
誰か異を唱える者はいなかったのか!?
異世界組はちょっとポンコツが多めだから仕方ないとしても、安藤さんまでコック服じゃなくてメイド服を着る意味はあったのか!?
「安藤さん……何故止めてくれなかったんですか」
「え、めちゃくちゃ面白そうなサプライズじゃない?」
だめだ、この屋敷にまともな常識人がいない。ヘレナだけが今後の希望である。
「ヘレナ、絶対ここにいる大人たちを見習わないように」
「皆さんいい人たちばかりです!」
「時すでに遅し」
俺は右を見ても歴戦の猛者みたいなメイド、左を見ても筋肉乙女のメイドでもはや視線のやり場に困りながらも、美味しい料理を食べていた。
源さんを見てみろ。もはやこれも当たり前の業務のようにメイド服を着てこの場を楽しんでいる。
俺もそのぐらい広い心を持ちたい。
25歳の目標はポーカフェイスと広い心を持ち、可愛いメイドを迎えることだな。
俺はメイドなら誰でもいい訳ではない、可愛い女の子がいいのだ。
「領主様は25歳になられましたけど、不老になったお陰で見た目は変わらないのでまだまだ赤子に変わりはないですね」
え、俺もしかしてだけど100歳になっても赤子扱いされたりするのだろうか。
もしかしたら不老ポーションを飲むタイミングを間違えたかもしれない。
「だが、25歳にもなればそろそろ夜の指南を受ける頃だろう。メイドの誰かを持ち帰るか?」
「アス……冗談でも言っていいことと悪いことがある」
「あらッ、ワタシはもちろん歓迎するわよッ!」
「っ、アスが余計なことを言うからだぞ!」
みんなが盛大に笑っているが、俺は笑えない。だって間違いなくマリーのあの時の目は捕食者の目をしていた。
俺は身震いしながらもまだまだ続く誕生日パーティーを楽しむのであった。




