サウナで語らう男たち
何とか捕食されずに済んだ誕生日パーティーの翌日、俺はエルとアスと一緒に銭湯に来ていた。
昨日の誕生日パーティーの最中にサウナに行こうと誘われたからである。
ちなみにジルも後で来る予定なのだが、マリーに仕事を与えてから来るらしい。さすがにサウナでマリーと一緒になったら俺の危険が増しそうな気がするからな。
アスは上段でエルは中段、俺はもちろん下段に座り、サウナの中に設置されたテレビで俺たちは異世界もののアニメを観ていた。
……俺はスポーツ観戦かドキュメンタリーでいいんじゃないかと言ったのだが、2人がアニメを観るといって多数決で負けたんだ。
「最近アニメや漫画を観ていて思うのですが、どうしてエルフはみんな金髪で野菜や木の実しか食べないのでしょう」
「言われてみればエルはどちらかというと銀髪よりで肉も食べるよな」
「ふむ、お前は偽物なのではないか?」
「やたらと笑顔がキラキラしてますし、日本人から見たエルフのイメージなのでしょうか?」
……とりあえずエルはアスの偽物扱いを無視するみたいだ。
それよりもハイエルフであるエルの偽物って何?
それなら大賢者の偽物って言われた方がまだ現実味がある。
「日本には人間以外の種族がいないからな。あくまでも空想の御伽噺でしか知らない。俺も最初はエルフが歩くとそこは聖域みたいな空気になり、周りには精霊が舞う。何をしても完璧にこなすスパダリみたいな存在だと思っていたしな」
「今は違うと言いたいのですか?」
「む、スパダリとは何だ。スパークリングワインみたいな飲み物か?それともスパゲッティみたいな食べ物か?」
……よし、一旦アスの頭を冷やすためにも水風呂に行こう。
「ああ〜、これこれ。最高に気持ちいい」
俺たちは水風呂の後、少しだけ横になれる椅子で休憩をしていた。
元々ここはただの銭湯だから椅子はなかったのだが、気付いたら用意されていたのだ。きっと他にも整ってる人がいるのだろう。
そして、エルと一緒に来るともれなくいい事が1つだけある。
それは風魔法で周囲を涼しくしてくれるということだ。
この銭湯に露天風呂があれば外に風を当たりに行くのだが、ここにはないからな。
こういうところはハイエルフらしい。
そのうちこのユグドラシルで温泉を掘り当てて露天風呂が作れたりしないだろうか、もちろん混浴で。
そしてすっかり整うことを覚えた異世界人2人が2セット目に行こうとしたところでジルがやって来た。どうやらマリーを何とか出来たみたいだ。
ジルはアスと一緒に上段に座る。何やらこの2人はいつもサウナでどちらが長く耐えられるか競っているらしい。
……危ないから他のみんなは真似しないように壁紙でも貼らなければいけないな。あくまでも、自己責任でこの2人だから出来ることである。
「ジルヴェスターよそろそろ限界なのではないか?人間にこの暑さは耐えられまい。我には物足りないがな」
「くっ、俺だってこの程度大したことはない」
絶対見栄を張っているだろうジルよ……もうその辺でやめておけ。
「ふむ、その心意気はよし。エルよ、ロウリュがぬるい。もっと熱波を浴びせるんだ」
すると、この流れもいつも通りなのかエルがやれやれといった感じで風魔法を使いサウナ内を地獄のように変える。
俺は誰よりも早く出て、水風呂を浴びているが他の3人は出てこない。
それから数分後、3人が出てきたがアスやエルは平気な顔をしてジルだけがフラフラしていた。
さすがにまだ1セット目だが危ないジルはそのままあがり、俺たちは最後の3セット目のサウナに入る。
「どうして2人はそんなに平気そうなんだ?さっきの熱波はかなり熱かっただろう?」
「私は自分の体のまわりに風魔法を纏い、ちょうどいい温度にしていましたので」
ただのズルだった。
「我は元々暑さに強いのだ。魔国には色々な魔族が居てな、里や村が火に覆われているようなところも少なくはない」
それは生活出来ているのか……?
俺ならすぐにこんがり焼けてしまうだろう。
行ける機会があっても魔国にだけは行かない方がよさそうである。
「それよりも先程のスパダリとは何だったのだ?気になり過ぎて我はこのサウナから出られなくなりそうだぞ」
忘れてはいなかったアスの話に付き合わされた俺は、気付けばのぼせてしまいアスに抱えられて屋敷に戻ることとなった。
……翌日、体調が良くなった俺とジルはセバスに当分サウナ禁止令が出されたのは言うまでもない。




