大食い大会
結局、未来の妻のための結婚指輪の製作は辞めておいた。
妻が気に入ったデザインで作ってもらうのが1番だと気付いたからな。
……まあ彼女すらいないのだが。
「まずは彼女を作るところからでございますね」
「俺の考えを読むなセバス」
思考を読み取るスキルでも持っているのではないか?
「持っていませんよ」
「絶対嘘だ」
今だって考えを読んでいる。
「ご主人様の顔が分かりやすすぎるのです」
くっ、今年の目標はポーカーフェイスをマスターすることだな。
「頑張ってくださいませ」
「だから考えていることを読むな!」
これだから有能な家令は困るんだ。隠し事が出来ないではないか!
エロ本なんかを隠しても翌日にはしれっと机の上に綺麗に置かれていそうだ。
……俺は読まないけどな?
「…………」
「何か言いたそうな目で見てくるのはやめてくれ」
「明日は部屋の隅々まで確認してみましょうか」
「もはやなんでもわかるスキルがあると言ってくれ。そうでなければ怖いぞ」
「おほほ」
誤魔化して逃げるとは全く逃げ足が早い爺さんだ。
俺はそんなセバスを放っておいて、厨房へ向かう。今は彼女の代わりに安藤さんにたくさん貢ぐと決めているからだ。
「安藤さーん!また100キロシリーズでフライドポテトが出たんですけど貰ってくれませんか?」
「また100キロか。調味料じゃないだけいいが、付け合わせにしては多いな」
安藤さんには蟹セットのような良いものを貢いで調理してほしいのだが、どうしても100キロシリーズが出てしまう。
これだと貢いでるっていうより在庫を押し付けてるっていう方が正しいかもしれない。
ガチャの神様、修正はまだですかね?
「どうせなら参加者募って大食い大会でもしたらどうだ?1位には春樹くんからの豪華景品付きとかで」
確かにそれは面白そうだ。在庫消費にもいいし、イベントとしても楽しそうだしその案採用!
俺はさっそくアルトに声を掛け、住民たちに参加の有無を聞きに行ってもらった。
「ヴァルグやジル、マリーなんかはわかるが吉田さんまで……?」
参加者は思ったより多く、ガンナーや大司教様、カイザー、それに加えてエリオットや五十嵐くん、もちろんエルやアスといった食べるのに自信がある男たちに加えて郵便局で受付をしてくれている吉田さんが参加の意を示した。
唯一の女性参加でそれなりの年齢だが大丈夫だろうか?
しかもフライドポテトという揚げ物なのだが……
1人に肩入れしたくはないがこれは吉田さんを応援したくなる。
でもまずは、1位の人のために豪華景品を考えることにしよう。
大食い大会だから景品も食べ物に関係したのがいいよな。
ガチャから出た高級食材を提供するか、1回だけ好きな料理を安藤さんに作ってもらえる券とかどうだろうか?安藤さんには頑張ってもらうしかないが。
後はラグナスに頼んで金メダルを作ってもらおう。
よし、そうと決まれば安藤さんとラグナスにお願いしに行くか。
◆◆◆
あれから1週間後、ラグナスに頼んでいた金メダルが完成して大食い大会当日を迎えた。
ちなみに安藤さんは異世界でのわからないメニューが頼まれませんようにとお祈りをしていたが俺は見なかったことにしておく。
会場は集会所で参加者たちみんなが食べている横で安藤さんはひたすらフライドポテトを揚げる係、その補助としてマーサが配膳係だ。
やはり参加者の中で一際目立っているのは吉田さんだな……みんなが張り切っている中、いつも通りの顔つきで座っている。
「ご主人様、開始の合図をお願い致します」
「それでは制限時間1時間。よーいスタート!」
俺はセバスに言われ開始の合図を任されたのだが、もう長いと言われないように簡潔に出来ただろう?
チラリとセバスを見れば、よく出来ましたと言わんばかりの顔で微笑まれた。
また心を読んだな?
それはそうとして、みんないいペースで食べ始めている。
ヴァルグはさすが獣人とでもいうようにガツガツと食べているし、カイザーやジルなんかもまだ若い。胃もたれなんて知らないような食いつきっぷりだ。
エル……お前はどうして参加した?大食い大会だというのに1人だけ優雅なランチみたいにゆっくり食べている。近くにいるマーサにケチャップやマヨネーズを貰い味変までして楽しんでいるではないか。
そしてガンナーと大司教様はただ酒のツマミが欲しかっただけだな?フライドポテトがメインだというのに自前の酒の方が多い。
ただ単にこの会場が聖なる祈りの儀式に使われただけだ。
アスと五十嵐くんは普通の量だ。特に多くも少なくもない、頑張ってくれ。
マリーは……その屈強な男の身体でもう食べられないと可愛こぶるのはやめてくれ。そして安藤さんをチラチラ見るな。
そしてダークホースの吉田さん、あなたの胃はブラックホールですか?
次々とフライドポテトが消えていき、さすがに周りの観戦してる住民たちも驚きが隠せない。
俺は見ているだけでお腹いっぱいだな……
1時間後、食べた皿の枚数をセバスが計算し順位が発表された。
3位はジル、堅実に止まらずただひたすらと食べ続けて3キロのフライドポテトを食べた。
2位はヴァルグ、エルの真似をしてマヨネーズを貰ってからが加速してジルより少し多く3.5キロのフライドポテトを食べていた。
そして1位はダークホースの吉田さん、常に3本ぐらいのまとめ食いをしていてヴァルグたちみたいな速さはないのにトップになり、なんと4キロのフライドポテトを食べきった。
セバスから食べた量の発表を聞く吉田さんは昔ならもっと食べられたのに……と小さく呟いたのを俺は聞き逃さなかった。
これからも100キロシリーズの消化の際には吉田さんの力を借りることにしよう。
俺はそんな吉田さんの首にラグナス特製金メダルを掛け、1回だけ安藤さんに好きな料理を作ってもらえる券を贈呈したのだった。




