ガラスと宝石が魅せるもの
数日後追加で10本の不老ポーションが出来て俺の他にエルとアス、ガンナーに大司教様がポーションを飲んだ。
郵便局で働いてる吉田さんやギルドで働いている田中さんにアリアナ、橋本さんにも声をかけたのだが今はまだ受け取って貰えなかった。
魅力的ではあるがこの先何十年、何百年と生きていく気持ちの整理がまだ出来ていないと言われてしまっては俺も無理に飲んでくれとは言えない。
そしてヴァルグ一家とカイザー一家は、飲むとしたら子供たちも大きくなって同じ時に一緒に飲みたいと言った。自分たちが今飲んで、子供たちの分が無かったら自分より先に子供たちが儚くなることを意味するからだろう。
フィンとフィア、エレナが大きくなってからになるがその時は家族分用意出来たらみんなに飲んでもらうことにしよう。
ちなみに福田さんは両親と同じで現実世界での戸籍なんかがあるからいつかはバレるという理由で遠慮している。
俺もギリギリまで迷ってはいたのだが、俺が不老にならないで儚くなったら箱庭の住民たちはそのまま消えてしまうのではないかという思いが消えず、結局俺も不老になることにした。
俺1人ぐらいならもし権力者などにバレてもダンジョンでたまたま手に入れられたと誤魔化せるか、最悪箱庭に引き篭ればいいと思ったからだ。
結局残りの5本はジルとマリーとエリー、そしてハンスに五十嵐くんに決まった。
ハンスと五十嵐くんは若ければ若いほどいいらしく、もう少し大人になるのを待たずに飲むみたいだ。
新しく来たばかりの住民は申し訳ないが次回にしてもらう。交流もまだ全然していないのに急に不老ポーションを渡すのもどうかと思うからな。
そんな不老になった俺がやることはいつもと変わらない。
いつも通りのんびりハーレムを目指しつつ、ユグドラシルの発展のために住民たちの手助けをするだけである。
今はラグナスの宝飾店で飾る用のガラスケースをガラス職人の池内さんと一緒に考えている最中だ。
ラグナスは最近ジルやマリーがダンジョンの宝箱から持ち帰る宝石などを加工して色々な商品を作り始めているのだが、それを飾るガラスケースをどうせなら池内さんに作ってもらうのはどうかと俺が声を掛けたからだ。
「ガラスケースは簡単に出来るがどうせなら魔法で割れないガラスとかに出来ないだろうか?」
「エリオットに破壊不可を付与してもらえれば可能じゃないか?」
それから俺たちはさらに意見を出し合い作るものは決定した。
ところでガラスって優秀過ぎないか?
教会もステンドグラスにしたいし、酒飲みたちのためにいいグラスも作りたい。
星がよく見える展望台の望遠鏡や時計職人の堀田さんと一緒にガラス時計、未だにボールペンではなく羽根ペンを使ってる異世界人には、ガラスペンも試してみてほしい。
これはガラス革命が起きるかもしれない。
俺たちはセバスに声を掛けられるまで夕方だとは気付かないぐらい話し合いに夢中になっていた。
◆◆◆
数日後、俺は完成したというガラスケースと宝飾品を見に来ている。
ちなみに店の名前は漢字で“竜の息吹”と書かれているのだが、少し安心した。
大司教様やジルに店の名前を相談していたらきっと今頃はヤンキーの溜まり場になりそうな名前だっただろう。
「ラグナス、どれもシンプルだが美しく輝いているように見えるな」
「ええ、宝石は着飾るためだけのものではなく持ち主を輝かせるためのものですからね」
どの作品も手の大きな竜人が作ったとは思えないほど細かく綺麗なものばかりだ。
「この指輪やペンダントに魔法は付与しなかったのか?」
「頼めばしてくれるとは思いますが私の仕事は宝石を最も美しく魅せることですので」
そう呟くラグナスの顔は自分の仕事に凄く誇りを持った、いい職人の顔をしている。
「シリーズものとして竜の息吹シリーズや星巡りシリーズ、四季シリーズを作って私もオークションに売ってみようかと思ってます。後は世界樹の葉をモチーフにしたのもこのユグドラシル限定みたいで良さそうです」
詳しく聞くと竜の息吹シリーズは店の名前にもなっている通り常設にするらしく、指輪やペンダントに竜のデザインが施されている。
星巡りシリーズは指輪やイヤリング、ピアスなどに細かな宝石を散りばめて夜空をイメージした、女性人気になりそうな商品だ。
四季シリーズは春には桜色、夏は青だったり四季それぞれにあった色で作る限定商品らしい。
そしてこのユグドラシルのシンボルとも言える世界樹。その葉っぱをモチーフにして宝石を加工し、ピアスやペンダントとして売るみたいだ。
俺と池内さんはラグナスの説明を聞いて、ただただラグナスは凄いなと感心することしか出来なかった。
そんな凄い商品を綺麗に飾り、守るためのガラスケースを作れたと池内さんも満面の笑みである。
住民同士が協力し合って凄いものがどんどんこのユグドラシルから誕生していく。
領主として嬉しいことこの上ない。
……俺は今から未来の妻のために結婚指輪の製作をお願いしておいてもいいだろうか?




