乙女ゲーム
結局両親はポーションを飲まず、他の誰にしようか迷ったが従者たちからにした。
セバスにマーサ、ラディに源さんだ。
比較的若めのジルやハンスなどはまだ余裕があるからな、今度鱗が剥がれた時でも大丈夫だろう。
ちなみにセバスには俺が1番先に飲むべきだと言われたが、セバスたちがいないと俺は何も出来ない領主だと説明してなんとか飲んでもらえた。
……追加で10本出来た時には必ず飲むという約束を取り付けられたのだが。
◆◆◆
そして翌日、俺は父さんが知り合いに貰ったというちょっとお高いお茶をエルにもあげようと思い、出かける支度をしていた。
エルの家に行くといつもお茶が出てくるし、勝手な偏見だがハイエルフはお茶が好きそうである。
俺はついでにお茶に合いそうなスイーツをコンビニで買ってからエルの家に向かった。
「エル、これはお土産だ」
エルの家に着きさっそくお茶を手渡すとエルはポケットから取り出したメモを見ながらブツブツと呟き出した。
「これは第3章に出てきたプレゼントイベントというやつですね。コホン……べ、別に貰っても嬉しくなんかないんだからね!」
最初の方は小さすぎて聞き取れなかったが、後半はなんかツンデレがいなかったか?
俺は差し出した手を何事もなかったかのように引っ込めた。
多分聞き間違いだろう。いや、そうであってほしい。
「早く椅子に座りなさい!私があなたみたいな凡人に話しかけてあげてるのよ?感謝することね」
「あ、ああ……ところでその話し方はいつまで続くんだ?」
「あなたみたいな凡人が私に話しかけるなんて1000年早いわよ!」
大変だ。元々ポンコツだったが、更におかしくなったぞ!大賢者がどこぞの悪役令嬢みたいになってしまった。
誰だ!このポンコツに変な知識を与えたのは!
「あの……私のツンデレの熟練度はいかがでしょうか?好感度はあがりましたか?」
全て何もかも間違えてる気がするが、熟練度とは何だ?好感度を聞くってゲームか何かか?
「まず何をしていたんだ?」
「エリオットから乙女ゲームというのがおすすめらしいと聞き、始めてみたのです。それを実践してみたのですがどうでしたか?」
このポンコツハイエルフ、男性側じゃなくて女性側の実践をしていなかったか?
「頬を赤めながらツンデレというのを選択すると攻略対象たちが惚れやすくなり効果が覿面だったのですが間違えてしまったのでしょうか?」
俺はどこからツッコめばいいだろうか。
なぜ女性側なのだとか、ツンデレは人それぞれだとか言いたいことは多々あるが、1番言いたいことはなぜそれを俺に実践をしたかってことだ。
まさか俺を攻略したいわけでもあるまい。
意図が全く分からない……
「……なぜ俺に実践したんだ?」
「この乙女ゲームというのは最高権力者(領主)を攻略しハッピーエンド(平和な街つくり)のためのシュミレーターではないのですか?」
……やはりこのハイエルフは何をしてもポンコツだった。
そして1番の戦犯はエルに乙女ゲームを渡したエリオットである。
俺はエルに乙女ゲーム禁止令を出し、屋敷に帰宅した。
お土産を渡しに行っただけなのに、なぜこんなにも疲れているのだろうか。
「セバス、その手に持っているのは何だ?」
俺はふと、屋敷の中を歩くセバスが手に持っている紙が気になってしまった。
いつもなら素通りして気付きもしないのだが。
「何やら子供たちが授業で箱庭新聞というものを作ったらしく、それを記念に飾ろうかと思いまして」
俺はセバスからその箱庭新聞を受け取り、中を読むと思わず握り潰すところだった。
そこにはでかでかと『領主様、またもやガチャで大爆死!』と見出しが書かれている。
他のちょっとした出来事などは小さく書かれているのになぜ俺のガチャ情報は見開きで書かれているのか。
子供たちには1度お説教が必要だろうか?
他にも『大司教様、飲みすぎによりお酒を隠される』『鶏脱走事件』『聖竜のラシオンは世界樹の下で昼寝』などどれもよく上手くまとめて書かれている。
俺の爆死は余計だが、今後も不定期でこの箱庭新聞は発行されるらしい。
今は子供たちが書いているがそのうち広報担当の住民が来たら、街の発展を新聞にしてもらうのもいいかもしれない。
うん、楽しみだ。
楽しみではあるが……やはり子供たちに爆死情報は載せないように言いに行こうか迷う俺だった。




