幻のポーション
碧の冬休みも終わりに近付き兄貴たちの家に帰宅した。
俺はというと昨日建築物を設置した時に箱庭のレベルがあがり、それの確認をしている。
▽箱庭レベル9
【エリア】 平原 森林 鉱山 Lv2 ※拡張には100ポイント 湖
【時止めの部屋】
【ダンジョン】 ※拡張には100ポイント
【地形編集】
【畑生成】Lv2
【両替】
今回は鉱山とダンジョンの拡張だな。
アイちゃん鉱山では何が採れるようになったの?
『少量のミスリルが採れるようになります』
俺は迷わず拡張をした。
そんな中、俺はポーションが出来たと屋敷に訪れたエリオットの話を聞いているのだが正直開いた口が塞がらない。
「すまない、もう1回言ってくれ…」
「領主様から頂いた聖竜の鱗で作った不老ポーションが完成しました」
何回聞いても聞き間違いではないのか。
不老ポーション……名前はもちろん聞いたことがある。ダンジョン最下層の宝箱に稀に入っていて、海外の富裕層なんかが何億払ってでも手に入れたいポーションだとか。
不死ではないが、飲んだその時から老いることはなく早く手に入れればその時の美貌のまま一生過ごせるという幻みたいなポーションだ。
それが今俺の目の前に5本もある。
「今回頂いた鱗が3枚だったので、試しに1枚を使って5本作ってみました」
試しに作って出来るものなのかはさっぱりわからないが、あと追加で10本作れるということは頭の悪い俺でもわかった。
「そうか…ありがとうエリオット。なんせこのユグドラシルには老人ばかりだからな、助かるよ」
俺は確かに前から考えてはいた。
このユグドラシルになぜか多く集まる老人たちだが、街が発展してたった何年かで儚くなってしまうのではないかと。
せっかく俺のために尽くしてくれている従者や住民たちが長生きできる方法はないのかと。
これが若い子たちなら必要ないかもしれないが、いつポックリいってもおかしくない人たちばかりだ。
両親含めみんなには不老ポーションが行き渡るようにはしたいが、ラシオンの鱗もそんなにたくさん剥がれるわけではない。
誰から使うかよく考えなければいけないな。
「まず、エリオット。このポーションはエリオットがいなければ作れはしなかった。だからこそエリオットにはこれを飲む権利がある」
「……いいのですか?正直私はまだまだ研究もゲームも錬金術も出来ることならずっとしていたいです。ですが、これが貴重なことぐらいはわかっています」
「これからもユグドラシルの発展に役立つ物を作ってくれるんだろう?」
「っ…はい!もちろんです!」
そしてエリオットは1本目の不老ポーションをその場でゴクッと飲み干した。
「身体がじんわりと暖かく感じるぐらいで他はどこも変わりはありませんね」
しかし俺が鑑定眼鏡でエリオットのことを見ると年齢の横にはしっかりと不老と書かれている。
エリオットは感謝を告げ残りの鱗2枚分も作ってきますと駆け足で屋敷を出て行ったが、感謝したいのは俺の方だ。
その後、俺は2本のポーションを持って両親の家に向かった。
「父さん、母さんちょっといい?このポーションを飲んでほしいんだけど」
「これは?」
俺はエリオットが不老ポーションを完成させたことを説明した。
両親はきっと喜んで飲んでくれると思っていたのだが……
「本気か?」
「ああ、2人には長生きしてほしいからな」
母さんは嬉しそうに微笑み、父さんは少し考えるような仕草をする。
「ありがとな。だが、これは受け取れないな」
「なんでだ?」
「考えてみろ。父さんたちは今箱庭に住んでいるが、人との付き合いがある。10年、20年と見た目が変わらなければ必ず誰かが気付き、そしてどうして歳を取らないんだと調べられる」
俺は言葉を失った。
「そうなれば春樹や夏樹がそのポーションを手に入れるツテがあると知られることになる。金でまだ済めばいいが、世の中には力ずくで奪おうとするやつもいる」
母さんも頷く。
「私たちが老いない代わりに息子たちが危険な目に遭うくらいなら、ポーションはいらないわ」
「人間にはな、ちゃんと歳を重ねるっていう幸せもある。皺が増えたとか腰が痛いとか言いながら夫婦で笑い合うのも悪くないもんだ。親より子が長生きする、それが1番の親孝行だ」
全く……両親には敵わないな。




