両親
「橋本さんどうしたんですか?」
橋本さんが屋敷に来たので、俺はラシオンに一芸を教えるのは一旦中断した。
「ギルドを作り終わって次に何を作るかガンナーと考えていてふと思ったのだが、屋敷の周りに塀は作らないのか?」
「考えたこともなかったんですけど、塀ってやっぱり必要ですか?」
特に今まで塀の必要性とかを感じていなかったのだが。
「そうだな。まだ住民の数は少ないかもしれないが鳳凰みたいに現実世界から人を呼ぶことも今後増えるだろ?それなのに領主の屋敷がどこからでも狙える状態なのはまずいんじゃないかと思ってな」
確かにそれもそうだな。ジルやバル……マリーに警備をお願いするにしても入口が1箇所の方が警備もしやすいか。
「それじゃあお願いしてもいいですか?」
「よし、わかった。ガンナーと時々エルディンの手を借りて立派な塀を完成させてみせるよ」
こうして新たに屋敷の塀が作られることになった。
そして塀が作られてる最中、今まで手付かずだった庭が元庭師の源田さんによって整えられ始めていた。
その過程を俺は見に来たのだが、なぜか庭師に怒られている大賢者を発見してしまう。
「お前さん、確かに魔法は素晴らしいし便利かもしれないがな、雑草は風魔法で吹き飛ばせばいいってもんじゃないんだ」
「……すみません。こちらの方が効率がいいかと思いまして…」
「罰としてあっちの雑草を1本ずつ丁寧に抜いてこい」
「……わかりました」
大賢者に雑草を抜かせる庭師、1番最強説あるか?そして言うことを聞いてちゃんと雑草を抜き始めるエルも偉いな。
「なるほど。土の状態に植物の生命力、季節による変化……魔法で一瞬で整えるより多くの情報が得られるということですね!」
雑草を抜くという作業を嬉しそうに研究し始めた大賢者がいるって本当ですか?
それから度々塀を作りに来ているはずのエルが、庭で目撃されるようになったのは言うまでもない。
◆◆◆
そういえばブラック企業を辞めてかなりの日数が経ち、両親に会いに行こうと思っていたのを忘れていた。
兄貴と買い物に行った時に、心配してると言っていたから安心させるためにも息子の顔を見せに行こう。
実家はタクシーですぐ着く距離だが、一応護衛は影からラディに頼むことにする。
「おかえり春樹」
「ただいま父さん、母さん」
両親に連絡を取り、2人揃って休みの日に俺は会いに来た。
「夏樹から元気にやってるとは聞いていたけどちゃんとご飯は食べられてるの?」
「ちゃんと食べてるよ」
母さんが昼ごはんを作ってくれるらしく、その間俺は父さんと話していた。
「覚醒者になれたんだってな、おめでとう」
「ありがとう父さん。中々帰って来られなくてごめん」
俺はブラック企業を辞めて、今は箱庭で従者や住民たちと好きなことをして過ごしていることを説明した。
「それは俺たちも住みたいと言ったら住めるのか?」
「え、住めるけど急にどうしたの?」
「母さんも楽しく過ごせて俺もネタが降りてきて楽しそうじゃないか?」
俺の父さんは小説家で、そこそこの人気がある。人気になるまでは母さんも看護師として働いて父さんを支えていたんだが、今は父さんの小説家の仕事だけでやっていけているみたいだ。
「わかった。こっちはいつでも受け入れられる準備をしとくよ。俺もその方が父さんと母さんの老後とかの心配がしやすいからね」
「俺たちはまだ50歳になったばかりだ!」
「私たちはまだ50歳よ!」
母さんもキッチンで話を聞いていたのだろう、同じタイミングで同じツッコミが返ってきた。仲がいい両親だ。
そして母さんが作ってくれた昔ながらのオムライスをみんなで食べ、俺は屋敷に帰宅した。
それから2週間後、本格的な冬が始まる前にラディの影収納で両親の引越しが完了する。
引越しだけならもう少し早かったのだが、編集さんとの話し合いが少し長引いてしまったみたいだ。
こうして両親が箱庭の住民となったことで住民の数が40人になり、箱庭のレベルもあがったのだが俺はまず両親にユグドラシルの案内をするのだった。




