可愛い乙女?
「ご主人様!僕、果樹園のお手伝いに行ってきます!」
「気を付けて行くんだぞ」
ある日の午前中、アルトがカイザー一家の果樹園に手伝いに行った。今年の桃の収穫時期は過ぎてしまったので、今は新しくエルに成長させてもらったリンゴの木のお世話しているところだ。
「それにしても最近やたらとアルトが手伝いに行くな?」
誰かが指示したわけではないのだが、気付いたらアルトが手伝いに行くようになっていた。果樹園の仕事にでも興味が出てきたのか?
「主様」
そんなことを考えているとどこからか現れたラディに声を掛けられた。
「どうしたラディ」
「どうやらアルトは果樹園のお手伝いというよりエレナに会いにいっていると思われます」
え?なぜそんなことをラディが知っているのかとか気になることはあるが、それよりもエレナに会いに行っている?
「それってつまり……恋?」
「主様より先に彼女が出来そうですね」
「喧嘩売ってる?」
「私に勝てるとでも?」
「反論出来ないのが悔しい」
いや、世界がひっくり返っても元暗殺部隊隊長に勝てるわけがない。悔しくもなかったわ。
それよりも彼女……彼女か。7歳児同士だもんな、そりゃあお似合いだよな。
授業で仲良くなってお互い気になりだしたのだろうか。
ハンスと五十嵐くんよ、すまない。貴重な彼女候補が1人減ってしまったみたいだ。
俺は2人のためにも可愛いメイドをガチャで引き当てたいが、俺の運は相当悪いということに気が付いた。
だから俺は考えた。
可愛いメイド自身が出てきたい!と思うような状況じゃなければもはや出てこないんじゃないかと。
……もうそうするぐらいしか方法は思いつかなかったんだ。
まず何をするべきか考えた結果、可愛いメイド服をオーダーメイドで作ることにした。
決して俺の目の保養目的じゃないぞ?これは立派な福利厚生だ。
俺はエリーの服飾店へ向かった。
「あら?領主様いらっしゃい」
「ああ、エリーに作って欲しい服があって来たのだが」
「新しい新作ですか!?」
「いや、可愛いメイド服だ」
「…………」
その無言はやめてくれないか?言いたいことがあるならはっきり言ってくれ。
「普通のメイド服ではだめなのですか?」
「だめだな、とびきり可愛いのを頼む」
「仕方ありませんね」
それから数日後、俺の要望を伝えまくったメイド服が完成したと連絡を受け服飾店まで取りに行った。
「エリー最高の出来だ。この谷間が強調される感じと、スカートのフリルやリボンも可愛く出来ている」
「…………」
いいじゃないかこれは男のロマンなんだ。
……間違えた、立派な福利厚生である。
俺はダメな男を見る目で見てくるエリーと別れ、屋敷に帰宅した。
住民ガチャもするならギルドで説明してもらうんだが、今日はあくまでも可愛いメイドのためのガチャ。従者ガチャしか引かないと決めたんだ。
俺は執務室でラシオンと一緒に新しく来る可愛いメイドに思いを馳せていた。
『ぼくの……ままってこと?』
「そうだな、ラシオンのママと俺の奥さんになってくれたらいいのだが」
『たのしみ!』
俺はセバスを呼び、従者ガチャを回し新しく可愛いメイドを増やすことを伝えた。
「かしこまりました。いつも通りということでございますね」
「今日はいつもとは違う。なんていったって出迎える覚悟が違うからな」
『あたらしいままがくるの!』
よし、いつもは55連しかしない従者ガチャだが今日は大盤振る舞いで111連だ。これで出なかったら俺はもう神頼みでもするしかなくなるぞ。
いけ!俺の1000ポイント!
・元庭師 源田 62歳
・元近衛騎士団副団長 バルマリーク 35歳
「呼んだのはお前さんか?」
「あら?アナタがワタシの新しい主なのかしらッ?」
つなぎ姿の源田さんは、いかにも庭師みたいな格好でわかる。だが副団長のバルマリークは……オネエだな。
「ご主人様、この作ったメイド服は封印ということでよろしいでしょうか?」
セバスのやつ、いつも通りとでも言わんばかりの顔で……
「それはワタシが着ればいいのかしらッ?」
俺が前もってこのメイド服を作ってもらったせいで頭が痛くなってきた。
確かに大胸筋がムキムキで強調はされるだろうが、犯罪臭がするのは気のせいだろうか?
源田さんが出たことだけが唯一の救い。
『あたらしい……まま?』
「ええ、そうよッ!」
絶対に違うからラシオンに間違った知識を与えるのはやめてくれ…
「バルマリーク、メイド服も着なくていいし新しいママでもないからな。セバス、後でジルに明日からバルマリークも狩りに参加すると伝えておいてくれ」
「かしこまりました」
「もう!マリーって呼んでよッ!」
どうやら俺は可愛いメイドを呼ぼうとしたつもりが乙女を呼んでしまったみたいだ。




