時止めの部屋
「えっと、春樹くんこの方は……?」
狩りを終え、鳳凰が来ていると知り訓練場にやってきたジル。
「元近衛騎士団団長のジルヴェスターだ。ジルはどうしたんだ?」
「今日は狩りが早く終わったのでな、少しばかり相手をしてもらおうかと思って来たのだ」
ジルが元近衛騎士団団長だと知り、手合わせを願ったのは同じ剣士の九条さんだ。
俺や黒瀬さん、白石さんは巻き込まれないように端で2人を見守っていた。
「光一の剣技も凄いんだがジルヴェスターさんを見るとな……」
「ええ……初心者冒険者と高ランク冒険者ぐらいの違いがあるわね」
俺にはどちらも凄いことしかわからないのだが上手い人から見るとそのぐらい違うらしい。
それから数分が経ち、模擬戦を終えた2人が戻ってきた。
「手も足も出なかった……俺がもっと若い頃に出会って師事させてもらえてれば」
「今のままでも十分訓練してきたことがわかる。だからこそ余計にもったいないと思ってしまうな、貴殿にもっと時間と師匠と呼べる者がいればまた違ったのだろう」
なんか凄いしんみりとして、九条さんは後悔してもしきれないみたいな顔をしているんだが、俺実はいい機能知っているんだよな。
俺には使い道がないと思われていた機能だが、今こそがその使うタイミングなのではなかろうか。
「あ〜、ちょっといいか?その……さらに強くなれるかもしれない機能がこの箱庭にはあるんだが」
「春樹くんそれはどういうことだい?」
俺はジルも含めてみんなに時止めの部屋の説明をした。中では時間が進まないが、食料はないのでアイテムバックに持っていかなければいけないことも。
「こちらとしてはありがたい申し出だが、ジルヴェスターさんはいいのだろうか?」
「もちろんだ。箱庭の発展に支障があるなら断ってたところだが、時間が変わらないというのなら俺が持つ技術を教えられるだけ教えよう」
黒瀬さんと白石さんは特にジルから教わることはないのだが、中で自分たちなりに訓練するらしく全員が時止めの部屋に入ることになった。
それからジルのアイテムバックに入ってるモンスター肉の他に追加で簡単に食べられそうなものをスーパーで買っていった。
「それじゃあ行ってくるよ」
俺は時止めの部屋を念じ扉を出した。
「満足するまで訓練して来てください。俺にとったら一瞬なので」
そして全員が時止めの部屋に入って行ったのだが、それと同時に出てきた。
俺からしたら忘れ物でもしたのか?って言いたくなるが彼らはどのぐらいの期間を訓練して出てきたのだろうか。
「……おかえり、でいいのか?」
「ただいま春樹くん」
「戻りました」
みんなどこか疲れているような雰囲気があるが、顔は満足している顔だ。
とりあえず鳳凰のメンバーには疲れを取ってもらうためにホテルに案内して、俺はジルと一緒に屋敷に帰宅した。
「ジルも疲れただろう?話はまた明日にでも聞くとして今日はゆっくり休んでくれ」
「すまない、そうさせてもらおう」
◆◆◆
よっぽど疲れていたのか鳳凰のメンバーは翌日の昼過ぎに起きたらしく、みんなで屋敷にやってきた。ジルはさすがと言うべきか朝いつも通り起きて狩りに行こうとしていたが、さすがに俺が止めた。
このまま働かせてはブラック企業まっしぐらだと俺の勘が言っていた。
「それでどのぐらいの期間訓練していたんですか?」
「そうだな……スマホの日付と時間が止まっていたから正確な時間はわからないのだが、寝た日数から察するに半年程だろうか」
俺には一瞬でもあの部屋で半年も過ごしていたのか…
俺も可愛いメイドがガチャから出てきたら時止めの部屋で過ごそうかな?そしたら永遠に……いや、やめておこう。
「皆さんが満足出来たのなら良かったです。また必要になったらいつでも言ってください」
「ありがとう、そうさせてもらうよ。それで俺たちは元々の予定だった今日帰る予定だが、この魔導スマホを使ってみればいいんだな?」
「そうですね、ダンジョンでの使用感や改善があれば教えてください」
「了解した。それではまたな」
こうして鳳凰のメンバーは現実世界へ帰っていった。
……帰り際、黒瀬さんの“俺は帰らないでここに残る”という呟きは聞かなかったことにしておいた。




