鳳凰はユグドラシルを知る
みんなで焼き芋を食べてから数日後、橋本さんからギルドが完成したとの報告を受けた。
これで今まで集会所で働いてもらっていたアリアナと田中さんの新しい職場が出来たということである。
……アリアナはこのギルドで唯一の受付嬢、きっと看板受付嬢になることだろう。
そしてそろそろこの箱庭に鳳凰のメンバーを招待しようかと思っている。
あれから何回か現実世界の方で元商人のジークフリートを連れて取引をしているのだが、特に問題はないと判断したからだ。
これで俺はユグドラシル商会の商会長、ジークは商会長補佐として働くことになり、今後の取引はジークに任せることになるだろう。
……実際、会長というのは名ばかりの肩書きでジークにほとんどを任せて俺は屋敷でのんびりするだけなんだが。
◆◆◆
「ここがユグドラシル……」
あれから数日後、連絡をすると是非と言ってくれた鳳凰のメンバーがユグドラシルにやってきた。
「みんな、ようこそユグドラシルへ。是非楽しんでいってくれ」
今回鳳凰には魔導スマホを提供しようと思っている。
その代わりにダンジョンで電波が問題なく使えるか、衝撃などに耐えられるかなどの実験に付き合ってもらうということだ。
「な、なあ。あれってアスタリオンさんだよな?」
今日はいつもみたいに現実世界での交渉ではなくユグドラシルだからジャージ姿でいるアスに鳳凰のメンバーは困惑している。
なんていうかこれって、VTuberの本当の姿やアイドルのすっぴんを知った時の反応に似ている。なんか申し訳ない……
「いや、確かにあのジャージ着心地良いものね…」
魔導ジャージの良さは俺も知っている。
白石さんはしっかり買ってくれているみたいだ。
俺がユグドラシルを案内しているとメンバーの足が止まった。
「ここが俺の剣を作ってくれた工房か…」
そういえば九条さんの持っている剣はどこかで見たことあるなとは思ったがガンナーが作ったミスリルの剣だったか。
俺たちはついでに工房の中に入りガンナーに挨拶をしていくことにした。
「ガンナー!ちょっといいか?」
「なんじゃ、新しい住民か?」
「我々はSランク冒険者パーティーの鳳凰と申します。貴方が作られたミスリルの剣を買わせて頂いたリーダーの九条です」
「そうかそうか、坊主が買ってくれたのか!よっぽどのことがない限り壊れたりはしないが、メンテナンスは怠るなよ!ここにいる間わしでよければ見てやるぞ」
「是非お願いしたい!物が物なだけに簡単にメンテナンスに預けることもできなくて困っていたのです」
確かに、店側も万が一壊しても困るし強盗なんかに入られて盗まれても困るよな。いい武器というのも困りものだ。
九条さんの剣を預け、ガンナーの工房を出た俺たちは次の場所へ向かった。
「このユグドラシルって空を飛ぶのが流行りなのかしら…?」
今、俺たちの目の前にはアスやエル、そしてフィンとフィアとエレナまで空を飛んでいる。
アスやエルなら飛べるからわかるのだが、他のみんなはエルの魔法か?
そう思い近付いてみると、何やら子供たちは羽根を付けていた。
何を言ってるかわからないよな?大丈夫だ、俺もわかっていない。
「おや、領主様と……そちらは今日来ると言っていた鳳凰の皆さんですか?」
エルが俺たちに気付いて話しかけてきた。
「ああ、今ユグドラシルを案内していたんだが……子供たちのその羽根は何なんだ?」
どうしても気になり俺は聞かずにはいられなかった。
「これはエリーの新作だ。我らが飛んでいるのが羨ましいと子供たちが言ったのでな、我とお揃いの羽根に飛行魔法をエリオットに付与してもらったのだ」
「一応聞くがなぜ羽根なんだ?ブレスレットとかには出来なかったのか?」
「む、飛ぶといったら羽根だろう?」
エルは羽根が無くても飛べるじゃないかとツッコミたくなったが、これでも便利な物に変わりはない。またネットオークションで新作として売りに出されるのだろう。
「なるほど……こうやって厨二病シリーズが出来ていくんだな」
なぜか鳳凰のみんなが納得しているが、それよりも俺は聞き逃さなかった。
現実世界の方でも厨二病シリーズって呼ばれているらしい。
それからギルドに行き手土産として持ってきてくれていたモンスターを丸ごと買い取ったあと、ギルドの訓練場で身体を動かしていた鳳凰のところにジルがやってきたのだった。




