食欲の秋と芸術の秋
「それはいいですね、是非やりましょう」
俺は福田さんに授業で子供たちにユグドラシルでの思い出や好きなことを絵に描いてもらうのはどうだろうかという提案をしに来ていた。
色鉛筆やクレヨンで色を塗って、覚えた文字で一言、二言書いて絵日記みたいな感じで。
それを住民みんなが見えるところに飾るのはどうだろうか?
みんなが子供たちの成長を感じられるはずだ。
「じゃあ俺はガンナーと橋本さんに絵日記を飾る掲示板の制作を頼んでくるよ」
またガンナーたちに頼むことにはなるが、簡単なものでいいんだ。集会所の横とかに絵が貼れるようなもので。
「それはいい、チビたちのためにもわしが作ってやる」
「ああ、俺も手伝おう」
ガンナーと橋本さんは、二つ返事でOKしてくれた。
今2人は冒険者ギルドの制作中で、今後冒険者パーティー鳳凰や他のパーティーとも仲良くなればこのユグドラシルに招待した時にギルドが必要になるだろうということらしい。
そしてこの建築の力仕事を頑張っているのが五十嵐くんで、本当に頼もしい限りである。
「でも五十嵐くん働きすぎて倒れないように気をつけてね」
「大丈夫です!お金貯めたいんで!」
どうやら五十嵐くんは元々働いてお金を貯めることが趣味だったらしく、今は将来のためにお金を貯めるのを目標にしているんだとか。
「いつか結婚したときのために……」
そうはにかむ笑顔が眩しいが五十嵐くんはまだ知らない。若い女の子は3歳のフィアと7歳のエレナしかいないということを。
俺は少しだけ申し訳なくなりつつも屋敷に帰宅した。
それから更に数日後、本格的に秋になり焼き芋日和となった日の午後。
俺は子供たちとラシオンも一緒に世界樹の落ち葉を集めていた。
『くしゅん!……ごめん、なさい』
「大丈夫ですよ、こうすればいいのです」
ラシオンが盛大にくしゃみをしてしまい、せっかく集めた落ち葉が散らばったのだがエルが風魔法で何事もなかったかのように集め直してくれた。
こういうときは頼りになる大賢者だ。
集めた落ち葉にアルミホイルで包んださつまいもを入れ、エルに火をつけてもらう。
焼き上がるのを待っている間にみんなで子供たちの作品を見に行った。
「みんなよく描けてますね」
福田さんが完成した絵をみて嬉しそうに呟く。
公園で暗い顔をしていた面影はもうない。
フィンが描いたのはみんなと公園で遊んでいる絵で、フィアは夏祭りでスイカ割りをしている絵だ。
3歳児だというのに器用にクレヨンを使って上手く描けている。
これは飾り終わったらヴァルグとシルヴィアにあげよう。
我が子の成長がわかる、記念品になるだろう。
「またお祭りしたい!」
次開催するとしたら何祭りがいいだろうか?
冬の雪まつりか桜の苗木を植えて咲かせることが出来たら桜まつりなんかもいいかもしれない。
最近来たばっかりのエレナは果樹園の絵を描いていた。桃の木に囲まれた家族の絵で、見ているみんながほっこりするような絵だ。
アルトは屋敷と屋敷で働いている従者たちみんなを描いてくれたみたいで、こうやって見ると最初はセバスとアルトしかいなかったのが懐かしい。
今ではマーサにジル、ハンスにラディ。みんな大事な従者たちだ。
「俺まで描いてくれているのか…」
普段はモンスターを狩りに行っていて屋敷にいないジルも嬉しそうにしている。
そして何故か子供たちだけではなく授業に参加していたエルとアスも絵を描いていた。
「エル、これは何をしている絵なんだ?」
世界樹の絵なのはわかるのだが…
「これは世界樹の木の上でお昼寝している私です。天気が良いと暖かくて気持ちいいのですよ」
凄いなハイエルフになると昼寝はハンモックも使わずに木の枝の上でするみたいだ。
「アスのこれは温泉か?」
「ああ、サウナの後の水風呂が最高だ」
すっかり整うことの良さを覚えたらしい。
絵はラシオンと一緒に湯船に入っている絵だが、やっぱりなんだかんだ仲がいいみたいだ。
「そろそろ焼き芋が焼けた頃だ。みんなで食べよう」
絵を見終わって、世界樹のところまで戻るとちょうど焼き芋が食べ頃になっていた。
「甘くて美味しい!」
子供たちは美味しそうに頬張っている。
大人になってから焼き芋を食べること自体が少なくなって久しぶりに食べたけど美味いな。
来年は畑でさつまいもを作るのもありか?
「これは美味しいです。来年はさつまいもをたくさん作りましょう」
誰よりも焼き芋を気に入ったエルと同じことを考えているなんてなんかちょっと悔しい。
俺もポンコツの仲間入りをしたみたいではないか。
その後も大量にあった焼き芋は余すことなく全員で食べ、俺たちは食欲の秋と芸術の秋を堪能したのだった。




