(閑話)厨二病シリーズ
Sランク冒険者パーティー鳳凰のリーダー九条光一の家に、同じくメンバーの黒瀬と白石が泊まりに来ていた。
「やはりこれは本物だった。手に入れるのにかなりの金額を使ったが、それでも買ってよかったと思える代物だ」
ミスリルの剣を見ながら話す九条。
「パーティー財産もほとんど使い切っちゃったけどこのアイテムバック大を手に入れられたのも大きいわ。買取金額も上がってすぐに元が取れそうだもの」
「それより散々ジャージに文句言ってたのに結局みんな買ってるじゃねえか」
黒瀬が周りを見渡すと、九条も白石もちゃっかり魔導ジャージを買って部屋着として着ていたのだ。
「うるさいわね!外には着ていけないけど家ならいいかと思ったのよ。それより私の気持ちが通じたのか、ローブを販売し始めたのはいいんだけどなぜ背中にでかでかと『魔王』なんて刺繍をいれたのかしら…」
「美月、買うなら『社畜』にしておけよ。効果が1番魔法使いに向いているからな。それよりこのカチューシャ可愛くないか?」
九条はネットオークションの猫耳や兎耳のカチューシャを見ながら欲しそうな顔をする。
「光一……可愛いものが好きなのはわかるが、厳つい顔にカチューシャは犯罪では?」
「だが、この狼耳のカチューシャは気配察知と嗅覚、威圧の効果が上昇するんだぞ!?このアイテム1つで探索の幅が広がるんだ」
「付けたいだけでは?」
白石に本当のことを言われ恥ずかしそうにする九条。
「しかし今日集まった理由はカチューシャではなく、こっちだ」
そう、今日新たにネットオークションではエリーの新作が販売されていたのだ。
「勝負パンツ……」
「ああ、美月は恥ずかしいかもしれないがちゃんと女性用もある。そして効果が自身より格上の相手と戦闘状態になった場合に全能力10%上昇という、やばすぎる効果だ」
「確かにやばい性能だ。さすがにこれはどの冒険者パーティーも買うだろう、特にボスに挑む日には履いていくだろうな」
ダンジョンではイレギュラーが付き物だ。その階層に見合っていないボスが現れたりして命を落とす冒険者も少なくはない。
そんな時にこの勝負パンツを履いていれば、助かる可能性だってあるのだ、履かない理由なんかないだろう。
「なんで……」
「ん?」
「なんで全てのパンツに勝負の文字が入れられてるのよ!」
美月も性能だけ見れば手放しで喜んで履きたいぐらい、いい商品なのだ。だが、問題はバックプリントに“勝負”という文字が入っているということだろう。なぜ、この製作者は文字を入れたがるのかと。なぜ普通のパンツを作らないのかと、美月は怒っているのである。
だが美月は知らない、下着に刺繍だと肌に擦れて肌が荒れるかもしれないと、今回は生地に勝負という文字をプリントしてありこだわって作られた商品だということを。
そして紫琉米星とマントに刺繍を施しているジルが嬉々として勝負パンツを履き、これは売れる!と満を持して発売された商品だということを。
「美月諦めろ……誰もダンジョンでお前のパンツを見るわけではないんだ」
「ユグドラシル商会……やっぱり連絡を取ってみるべきだろうか」
定期的にポーションや魔導具などを定価で買えないだろうか、と考えている鳳凰だがそれはどこのパーティーも同じだろう。
今のところ連絡手段はネットオークションで落札した後の取引メッセージでするしかないのだが、送ってもいいものか迷っていたのだ。
これでユグドラシル商会に嫌われて販売中止や、違う方法で他所に売られでもしたら困る。そう思って今までは様子見していたんだが。
「これで先に他の奴らがメッセージを送ってその権利を手に入れられるのも嫌だからな、今回の落札が完了したらユグドラシル商会にコンタクトを取ってみようと思う」
「わかったわ、これで失敗したら全ての責任は光一にあるわ」
「ああ、上級ポーションが手に入らなくなっても仕方ないリーダーの言うことには逆らえないからな」
「お前らそうやって都合のいい時にリーダー扱いしやがって!」
こうして、九条は残りのオークション期間中ずっとなんて送ったらいいか文章を考えるのだった。




