挨拶回り
「こんにちは、碧です!」
「ん?ああ、来るって言ってた甥っ子か?わしはガンナーじゃ。剣が欲しくなったらわしに言うんじゃぞ」
俺たちはまずガンナーの工房に来ていた。
「剣…!僕も剣で強くなれるのかな!?」
「なんじゃ、碧は魔法より剣がいいのか?」
「魔法も使えたらかっこいいけどやっぱり僕は剣がいいな!」
男は一度は剣に憧れるよな、わかる。でも魔法の便利さを知り魔法にも憧れるんだよな。
「剣ならジルヴェスターに教わったらどうじゃ?」
「ジルか、確かにいいかもな。だけど、帰ってから友達とかに剣で攻撃したりしたらだめだぞ。わかったか?」
「僕そんなことしないよ!」
ジルとは騎士団長のことだ。名前が長くて気付いたらジルと呼ぶようになっていたのだが、それはいいとして。小学生が教わる相手としてはこの上ない人材だろう、夏休みの間だけでも頼んでおくか。
「それじゃあ次は世界樹の方に行ってみるか」
「うん!」
俺たちはガンナーに挨拶してエルディンがいる世界樹の方に向かった。
「おや、領主様じゃないですか。そちらは…子供が出来たのですか?」
「甥っ子だよ。こないだ会った時に子供がいるなんて言ってなかっただろ?」
「気が付いたら孫がいるなんてよくある事ですよ」
次元が違ったみたいだ。ハイエルフにとったら何十年はあっという間なのか…
「あの、初めまして!碧です!」
「挨拶ができて素晴らしいですね。私はエルディン、エル爺とでも呼んでください」
「綺麗なのに…おじいちゃん?」
さすがにイケメンハイエルフにエル爺は無理がある。
「碧、名前長いからエルと呼べばいい。俺もエルって呼ぶから」
「…エル様!」
「はい、エルです。可愛い赤子はこうしてあげましょう」
エルがボソッとつぶやくと碧が宙に浮いた。
すごい…大賢者はこんなことも出来るのか、俺も飛んでみたい。
「領主様も浮きたいのですか?」
「……うん」
なんか、やっぱり俺も赤子を見る目で見られている気がするが一度は飛んでみたいじゃないか。
「春樹兄ちゃん僕今空飛んでるよ!」
「ああ、すごいな!これは鳥になったみたいだ」
「ありがとうエル様!また今度魔法見せてくれる?」
空を飛び回った俺たちはついでに他の住民にも碧を紹介しようということになり、地上に降りていた。
「ええ、いつでもいいですよ。100年ぐらいならすぐですからね」
「エル様、さすがにそれは僕もう死んでるよ?」
「そうでした、人間は短命なのです。なのでもう少し早く来るのですよ」
エルは一体何人との出会いや別れを過ごしてきたんだろうか。長命なのも考えものだ。
「じゃあ、エルまた来るよ」
そして俺たちは他の人たちに挨拶と箱庭の中を碧に案内して歩いた。
「最後はここの研究所だな」
この研究所には錬金術師のエリオットがいる。最近だと、ヴァルグたちが狩ってきたモンスターの魔石やガチャから出たインゴットを使って魔導冷蔵庫を作ったり薬草を使ってポーションの予備を作ってくれたりしている。
魔導冷蔵庫が出来たことによって俺はもう冷蔵庫を買わなくて済んでありがたい限りだ。
「おーいエリオット〜」
「どうされました?領主様」
「いや、甥っ子が夏休みで来ててな、街の案内とみんなに挨拶して回ってるんだ」
「はじめまして、碧です!」
「ご丁寧にどうも、錬金術師のエリオットです。物作りがしたくなったら是非言ってくださいね」
そう言われると碧が何故かモジモジし始めた。なんだ?何か作りたい物でもあるのか?
「あの、あのね。自由研究が…」
あ、すっかり忘れてた。小学生の夏休みって宿題だけじゃなくて自由研究もあるじゃん。
俺も毎年悩んでた気がする。
「ふむ、なるほど。何か考えて作らなければならないのですね。碧くんは何が作りたいとかあるのですか?」
「あのね、お母さん赤ちゃん産むのに今頑張ってるから少しでも役に立つものがよくて」
……俺こういうのに弱いんだよ、なんかもう既に泣きそう。いつからこんなに涙腺弱くなったんだろう。
そして俺たちは何を作るか話し合い、“安眠のオルゴール”を作ることにした。
子守唄が流れることで赤ちゃんがぐっすり寝て夜泣きが落ち着く効果と紗季さんや兄貴にも疲労回復効果があるみたいだ。
碧はなるべく自分で作りたいらしく、明日の午後からエリオットと一緒に自由研究作りをすることが決まった。
「さて、屋敷に帰るか。エリオット、明日から碧のことよろしく頼む」
「ええ、碧くん一緒に頑張りましょうね」
「うん!」
そうして俺たちは屋敷に帰宅した。




