甥っ子の夏休み
優秀な従者と優秀な住民たちに囲まれて気付けば勝手に街が発展していって数日、兄貴から連絡がきた。
奥さんの紗季さんが出産のために入院するから息子の碧を預かってほしいと。今年小学生になったばかりで学校はいいのかと思ったが、そういえば今は夏休み始まったばかり。それなら夏休み終わるまで預かるから奥さんをゆっくり休ませてあげなさいということで話がついた。赤ちゃんのお世話で休めることはないと思うが、碧を預かるだけでだいぶ違うと思う。
「それじゃあすまんが1ヶ月程頼む」
「ああ、兄貴も大変だとは思うけど紗季さんにもよろしく伝えておいてくれ」
そして今日、我が家に宿題やら着替えを持ってやってきた碧を箱庭に承認した。
「お家でかい!ねえねえ!春樹兄ちゃんが遊んでくれるって本当!?」
屋敷に入るとあまりの広さに目を輝かせている甥っ子。やんちゃなところもあるが可愛いんだよな。
「ああ、公園もあるし他にも碧と同じぐらいの男の子や女の子もいる。仲良くしなきゃだめだぞ」
「もちろんだよ!お父さんから遊ぶなら先に宿題終わらせなさいって言われたから、やってもいい?あと少しなんだ!」
俺なんて最終日に全部やってたが、どうやら碧は真面目らしい。紗季さんの子育てが優秀なのか…
「わからないところがあれば俺かセバス…いや田中さんの方が教えられるか?」
セバスは日本の宿題、小学生ぐらいのなら多分わかると思うが異世界とは違うかもしれないしな。それなら日本人の田中さんの方が教え方が上手いかもしれない。
俺の頭はよくないがさすがに小1の問題ぐらいは解けるはずだ。
「ふぅ、終わったー!」
朝早くから勉強を始め、2時間ぐらいで残りの宿題を全部終わらせたみたいだ。
「坊っちゃま、休憩のクッキーとジュースをお持ちしました」
「ありがとう、マーサ。碧、疲れただろ?クッキーを食べて少し休もう」
「ありがとう!えっと…マーサさん!」
「碧様、私のことは呼び捨てでかまいませんよ」
「でも、お父さんが年上の人にはさんを付けなさいって言ってた!」
おお、兄貴もちゃんとしているみたいだ。本来なら使用人だからさん付けはしなくてもいいんだが、それを碧に言ってもよくわからないし現実世界に戻れば使用人などいないからな。
「マーサ、戻った時のことも考えてさん付けのままで頼む」
「かしこまりましたわ」
「よし。碧、フィンとフィアも誘って公園に行くか」
「行く!」
俺たちはヴァルグ家に行きフィンとフィアを誘った。家の中ではしゃぎすぎてシルヴィアが少し疲れていそうだったからこの間に少しでも休めるといいんだが。
「フィンくんとフィアちゃんって言うんだね、僕は碧!よろしくね」
「「よろしくー!」」
獣人だから普通の3歳児より大きく、ほぼ碧と変わらない。そのおかげで随分と楽しめているみたいだ。
シーソーやブランコ、鬼ごっこなどで遊んでいるとそろそろ昼ごはんの時間になった。
「昼ごはんの時間だから1回帰るぞ、また明日にでも遊べるんだからな」
「わかった!」
「「お腹ペコペコだよー」」
フィンとフィアをヴァルグ家に送り届け、俺たちも屋敷に帰宅した。
「春樹兄ちゃん、フィンとフィアって獣人っていう種族?」
そういえばこの箱庭に慣れすぎて現実世界には人間しかいないの忘れてたな。前もって説明しとくべきだった。
「ああ、獣人だ。だが、碧たちが住んでいるところには獣人はいないだろう?だから俺たちだけの秘密だ」
「わかった!アニメで観たことある獣人と仲良くなれたなんて他の誰にも言わない!またここに来れなくなったら嫌だもん!」
確かに最近だと異世界もののアニメが流行っていて獣人やエルフ、ドワーフなんかも普通に出てくるもんな。そりゃ憧れるか。
「昼ごはん食べたら何するの!?」
「そうだな…他にもエルフやドワーフを見に行くか?」
「っ……行きたい!」
他にもエルフやドワーフがいると知って目を輝かせているがエルディンからしたら碧なんて産まれたばかりと変わらないんだろうな。
「じゃあ、ちゃんと昼ごはんをいっぱい食べてからな」
「うん!」
そうして俺たちはまずガンナーがいる工房へ向かった。




