第84話・双子ですから
「お兄。ミウお姉と永遠お姉は大丈夫?」
お人形さんのようにこむぎを膝の上に乗せていると、そんなことを聞かれた。
「うん。大丈夫」
今日は土曜日。
くるみとこむぎは昨日の午後から遊びに来ているが、休みの日はうちに入り浸っている気がする。
まあ、俺も嫌いじゃないのでいいけど。
もちろん、親である久美子さんの了承は取ってある。
「何かあったのでしょうか?」
ぴたっと寄り添うように俺の隣に座るくるみもちょっと心配そう。
「あー。うん。そのね? ちょっと昨日の夜にちょっと夜更かししちゃったからね……」
「ならいいのですが……」
昨日なんだけど、くるみたちが来るからということで、ちょっと気合いを入れて準備してたらちょっと拗ねた感じになってしまったのだ。
だから、「ミウも永遠も大事だよ」と機嫌を取ってただけのこと。
それで今は自分の部屋でお休み中。
おかげで寝不足なんだけど、まあこれは俺のわがままだから仕方ないね。
「じゃあ、今日はお兄をこむぎたちで独占できる日?」
「そうなるね」
「お兄様。でしたら、お話したいことがありますっ――」
「ん? なんだい?」
くるみの話に耳を傾ける。
――
「それでお兄様。結局、お兄様はくるみとこむぎのことをどう思っているのですか?」
話を変えるようにくるみからそんなことを聞かれた。
「ん? それってどういう意味?」
「お兄。こむぎはお兄のことが好き。お兄も好きって言ってくれた。だから恋人」
「ちょっとこむぎちゃん。お兄様にはミウお姉様と永遠お姉様が……」
「あー、そうなるかな? 実はね。ミウと永遠とは相談したんだけど、くるみとこむぎが良かったら妻として迎えようかなと思って……」
「よろしいのですかお兄様――って、え? つ、妻? 恋人ではなくてですか?」
くるみの顔が一瞬で真っ赤になった。
ちらっとこむぎにも目をやるとこむぎも顔が赤い。
「うん。今は年齢的に恋人ってことになっているけど、ゆくゆくは結婚をね? ミウが正妻だからミウが結婚できる年齢になってからになるし、くるみとこむぎはもう1年待ってもらうことになるけど……」
「は、はい。くるみは大丈夫です」
「こむぎも大丈夫」
体の位置を変えたこむぎが顔を胸にうずめてくる。
好き。
「じゃあ、あとでミウと永遠に伝えないとね?」
「わかりました」
「あとこむぎ? くるみにも同じことやってほしいから変わってくれる? 代わりにおんぶするようにしていいから」
「むー。それなら仕方ない」
「で、では。し、失礼しますお兄様」
それからくるみとこむぎと仲良く過ごした。
途中で盛り上がってしまったので、声が漏れてないか心配だけど。
ミウも永遠も寝てると思うから大丈夫だよね?
――
「お兄ちゃんのことだから、いずれはこうなると思ってたよ。思ったよりも早かったけど。悪いのは全部お兄ちゃんなんだから――」
「ええ、そうですね。すべて兄さんが悪いのです――」
夕食のときにそのことを知ったミウと永遠がどこか悟りを開いたような顔をしながらそんなことを言ってくる。
もちろん、エッチなことはしてないよ?
でも、結婚の約束をした以上、その責任は取るからへーきへーき。
「お兄のから揚げおいしい。さすがプロ」
タルタルソースをたっぷりとつけてそれを食べるこむぎ。
気に入ってくれて何より。
タルタルソースもわざわざ手作りした甲斐がある。
「ありがと」
ついでに俺もから揚げを口に運ぶも、まだ衣がサクッとしてた。
最初に作ったものだったから、ちょっと冷めてたけど、それはそれで食べやすいので問題ない。
お肉を噛むとショウガと醤油の味が口の中に広がる。
うん、いい感じに出来たね。
昨日の昼から仕込んだ甲斐があった。
「でもさ。くるみちゃんとこむぎちゃんは二卵性双生児なんだよね? 性格もちょっと違うから、まさか同じ人を好きになるっていうか、その、お兄ちゃんを好きになるとは思わなかったよ?」
箸で千切りキャベツをつまみながらミウがそんなことを聞く。
「はい。双子ですから――」
「実は男の好みが同じ。昔から――」
くるみとこむぎが答える。
俺も初めて知った。
やっぱりそこは双子なんだね。
「それにお兄様は財産を分けてくれるだけではなく、養育費を払ってくれる上にこうして家族として温かく迎えてくれました。ですので、私たちはお兄様に感謝してもしきれないほどの恩があるのです。それにお母様も“生活が楽になった”と感謝していましたし」
「うん。お兄がいなかったらお母さんが潰れてたかも」
「え、そんなに?」
最初に見たときは、うつ病を発症して仕事を辞めるような人と雰囲気がそっくりとは思ったが。
「はい。見ているこっちが心配なほどです」
「そうだったのか……」
くるみとこむぎの母親ということもあり、少しは気にしていた。
ただ、この前に見たときは回復に向かっているように感じたので問題はないだろう。
あとは自力でなんとかできるはずだ。
くるみとこむぎは俺の妹だからいいけど、さすがにその母親の面倒までは見れない。
美人だとは思うが、俺の好みから少し外れているし。
仮に若くてタダでしてくれるのだったら、思わず飛びついてしまうかもしれないけど。
「ふーん。それでお兄ちゃんのことが気になっちゃったの?」
「はい。私たちが解決できないことをお兄様は解決したのです」
「あー、なるほど。それで?」
「はい。まあ、最初に意識したのは永遠お姉様の言葉がきっかけですけど……」
「えっ?」
すました顔でから揚げにレモンを絞りかけてた永遠の手が止まる。
「その、永遠お姉様が“兄さん、結婚しましょう”と言ってから意識しちゃいました」
「永遠お姉ちゃん……」
そう言ってミウが永遠を見る。
「あ、あれはその。し、仕方ないですよ。に、兄さんが悪いんです。私の好きなハンバーガーの味を再現するっ――」
珍しく永遠が顔を赤くしながらしどろもどろになってた。
「永遠お姉。もしかしてお兄が弱点?」
「し、知りませんっ――」
そう言って永遠がプイっとそっぽを向いた。
かわいい。
美人だから絵にもなるね。
「それでこむぎちゃんは?」
「永遠お姉の求婚で意識した。でも、一番はお兄が甘やかしてくれるから。何でもしてくれるし、何もしなくていい。だから、気づいたら好きになってた。それにお兄も楽しそうにしてるし」
「あー……」
ミウがどこか納得した表情を浮かべてうんうんと頷いていた。
たぶんそこはミウと同じなのだろう。
それからは特に問題が起きることもなく、みんなで楽しく食事をして過ごした。




