第78話・永遠(とわ)の答え
「意外とあっけなかったね……」
ゴーレムがいっぱいいたと思ったんだけど。
永遠が【ダークネス】と【ブリザード】を使ったらすぐに片付いた。
そしたら、永遠がふらついて倒れそうになったから、すぐに彼女を抱き寄せてマナポーションを飲ませたけど。
永遠強すぎぃ。
まるでチート系主人公をリアルで見ているような感じだった。
「でも。兄さんがいなかったら危険でしたよ?」
「そう?」
「はい。そもそも兄さんがいたので魔力をここまで温存できていたわけですし、それにマナポーションも持ってましたよね?」
「まあね。探索者としてのたしなみというやつだよ」
ポーションや非常食とかは常にリュックに入れている。
容量の関係で数は限られるけどね。
もちろん、携帯救急セットもあるよ?
「兄さんのことですので、避妊魔法でも使うと思ったのですが……」
「ああ。その手もあったな……」
そこまで頭が回らなかった。
避妊魔法は精液を魔力に変換するもの。
さすがにマナポーションには劣るが、それで魔力を回復できる。
ちなみに、自分自身に使う場合は赤字となるので意味がないが、他人に使う分には問題ないそうだ。
うん。
チャンスだったね。
残念。
「兄さん?」
永遠から睨まれた。
そんな顔もかわいいというか、きれいだね。
絵になるよ。
「も、申し訳ありません。篠さん、空野さん――」
パタパタと足音を立ててウィッチハットをかぶった教師が戻ってきた。
受付で対応した人で、実は永遠の担任だった。
ゴーレムを片付けた後は、ダンジョンの外で待機していた試験官たちにゴーレムの魔石を見せて事情を説明。
とりあえず俺たちはその場で待機となって今現在。
(何人かは負傷したのか……)
校庭に設けられた白いテントの野戦病院に、担架で運ばれていく探索者や生徒の姿が見えた。
――
「それは大変だったね。お兄ちゃん、永遠お姉ちゃん」
家に帰ってからミウにそのことを話した。
加害者生徒に関しては退学ということで話がまとまったけど。
警察に被害届を出したから、あとは裁判所の判断待ちだ。
個人的には密かに“処理”しようかな?と思ったが、永遠に全力で止められたので矛をおさめた。
俺も永遠にも怪我はなかったし。
平和的解決というやつだ。
「それで永遠お姉ちゃん。さっきからどうしたの? なんかそわそわしているよ?」
「い、いえ。その……」
「珍しく歯切れも悪いし。ほんとにどうしたの?」
ミウが永遠に聞き返す。
すると、永遠が大きく息を吐いた。
なんだろう?
「ミウにお願いがあります。今夜、その、一晩だけでいいので兄さんをお借りすることはできますか?」
「え、永遠お姉ちゃん? えと、それって……」
「そ、そういうことです。な、なるべく大きな音は立てないようにするので……」
「そっか。わかったよ。永遠お姉ちゃん。本気なんだね?」
ミウが頬を赤く染めながら永遠に返す。
それはつまり。
「はい。兄さんの言う通り正妻はミウで構いませんので」
「そ、そう? お兄ちゃんのことだからきっとうまくやると思うけど。お兄ちゃん、なるべく優しくしないと駄目だからね?」
「わ、わかった」
――
お風呂で身を清めてから永遠の部屋に行く。
今日は最後にミウが入ることになってしまうがそこは納得したのでいいだろう。
湯船には使ってないので問題ないだろうし。
「お待ちしていました兄さん」
「永遠?」
永遠はシースルーのネグリジェ姿だった。
下半身が透けてて下着がはっきりと見えるもの。
服も下着も黒。
たぶん色を合わせているのだろう。
思わず目が釘付けになった。
「兄さん。目つきがいやらしいですよ。昔からこのパジャマが欲しかったのです。さすがに父の前では着られませんが……」
「そ、そうか。ごめん。とても似合ってたからつい……」
「特別ですよ? 兄さん」
そして、ベッドに座った永遠の隣に腰を下ろす。
座ってから密着するように距離を詰めると、永遠が頭を預けてきた。
その温もりが伝わってくる。
好き。
「兄さん」
「どうした?」
部屋にある机を見ながら永遠に言葉を返す。
つい最近まで俺が使っていたんだけどね。
「期末試験もお願いします」
「わかった」
「それと、今日はすみませんでした。私、不器用で口下手なので。父との関係も兄さんが間に入ってくれないとうまく行きませんし、クラスメイトとトラブルになりました」
「そうか? 俺は気にしてないから大丈夫だぞ? そもそもクラスメイトのはただの嫉妬だ。永遠が悪いわけではない」
「ですが。私がもっと――」
「永遠。それは終わった話だ。蒸し返すな」
彼女の言葉を遮る。
父親の件はお互いにコミュニケーションが取れていないだけだ。
致命的な問題ではない。
「それに父親とは言え、男と仲良くされると嫉妬しそうなんだよね。だから、正直今のままでいいと思っている。それを解決する手段はあるのに。ごめんね、独占欲が強いお兄ちゃんで……」
「兄さん。それ独占欲って言いませんよ?」
「そう?」
なんか似たようなことをミウに言われた気もする。
「兄さんは本当に見返りを求めませんね?」
「俺としてはこれが見返りだからね。ブラコンな妹に甘えられるというのは昔からの夢だったし。好きな女の子に甘えられるのも嫌いじゃない」
「だから私は兄さんのことが好きなんです。不器用で口下手な私のことを甘やかしてくれる兄さんが……」
「ふふ。俺も甘えてくる永遠も好きだよ? もちろん、普段のクールな姿もね? 永遠は気にしているかもしれないけど、俺は永遠のつり目も好きだよ? かっこよくてきれいで」
「に、兄さん――」
「永遠――」
顔を真っ赤にした永遠と口づけを交わしながらベッドに押し倒した。
――
「それで永遠お姉ちゃん。昨日は大丈夫だった?」
リビングで朝食を食べ始めたら、ミウが永遠に声をかけた。
「はい」
何事もなかったかのように答える永遠。
「そっか。ついに永遠お姉ちゃんも仲間入りかぁ……」
「ええ。あと、たぶんくるみとこむぎも仲間入りします。いえ、たぶんではなくほぼ確実ですね」
「あー、だよねぇ?」
どこか遠い目をするミウ。
「ごめんね。節操がないお兄ちゃんで。どうも妹には弱くて……」
「今さらだよね」
「ですね」
「あと、永遠お姉ちゃん」
「なんですか?」
ミューズリーをスプーンですくおうとした永遠の手が止まる。
「お兄ちゃんのことが大好きなのはわかるけど。声、抑えてね? ご近所迷惑になるほどじゃないけど、その、隣の部屋から“兄さんっ”って言うのが聞こえてたから……」
「あっ――」
珍しく永遠が顔を真っ赤にしていた。
「あとお兄ちゃん? なんか激しくなかった? 今日はミウの番だから、永遠お姉ちゃんにやったことと同じことをやってね?」
「う、うん――」
どこか悟りを開いたようにそんなことを言うミウだった。




