第73話・ケーキとパスタ
「ケーキですか兄さん?」
「ああ。永遠のおかげで稼ぐことができたからね。もちろん、ミウの分もあるよ? 仲間外れはいけないからね」
「わーい。お兄ちゃん大好きー」
冷蔵庫に入れていたケーキを取り出して2人に見せる。
ミウは満面の笑みだけど、永遠はいつもと変わらない様子だ。
まあ、その視線は確実にケーキをロックオンしているけど。
やっぱり女の子は甘いものに目がないだね。
「あれ、お兄ちゃん。1つ多くない?」
「ああ、それは永遠の分だからね。どれが食べたいのかわからなかったから、とりあえず色々なものを買ってきた」
「そうなんだ」
ミウがどれにしようかなとケーキを見比べる。
「兄さん。もしかして私を太らせようとしてませんか?」
「はは。永遠ぐらいなら少し増えても大丈夫だろ?」
「それで豚のよう丸々と太ったらどうするんですか? 兄さん」
「そーだよ。お兄ちゃん。デリカシーがないよー」
「ご、ごめん」
なんか集中砲火を浴びてしまった。
「それと兄さん。この封筒は?」
ケーキとは別に、机に出した茶色い封筒を見る永遠。
もちろん、ミウの分もある。
「ん? 今月のお小遣いだけど。あ、5000円じゃ足りなかった?」
「いえ、金額の問題ではなくて。一応、父からも、もらっているのですが……」
「女の子だから色々と必要なものはあるだろ? もちろん、ミウにもあるよ? あとはほかに必要なものがあるなら言ってね、買ってあげるから」
「わーい。お兄ちゃん大好きー」
それからは3人でケーキを食べることになったものの、せっかくだからとみんなで一口ずつシェアした。
もちろん、ミウと永遠にはそれぞれが食べてたフォークを借りてあーんで食べさせたけど。
満足したならいいかな?
――
「あ、お兄ちゃん。明日なんだけどさ。くるみちゃんとこむぎちゃんが学校が終わったらまっすぐうちに来たいって言ってるよ?」
「え、そうなの?」
ミウから声をかけられた。
皿を洗う手を止め、自分の携帯を見みると1通のメールが届いていた。
時間を見ると1時間も前に届いてたみたい。
SNSアプリの設定が面倒でメールでのやりとりになっているが、アプリを入れることも考えないとな。
「ごめん。ご飯食べてて気づかなかった。ミウから話を聞いたから遠慮せずにうちにおいで。お迎えは必要?」と文字を打って返しておく。
すると、すぐに返信が来た。
笑顔の絵文字のみ。
これは「必要」ということでいいのかな?
「おにーちゃん。くるみちゃんとこむぎちゃんが来るからってテンション上がってなぁい?」
なんかミウに呆れられた。
「そう? まあ、彼女たちと会えるのは土日ぐらいだからね。気合いは入るかな?」
「なんかそのうちうちに同居しそうですね。私のように……」
いつの間にか永遠がいた。
手にはデフォルメされた黒猫の絵が描かれている白いマグカップ。
俺たちのものと間違えないように絵柄があるものを買ったらしい。
「コーヒー? それとも紅茶?」
「はい。コーヒーのお代わりを――って兄さん。そういうところが駄目なんですよ?」
「え?」
俺なにかやった?
「そうだよお兄ちゃん。今のは普通に駄目だよ?」
「え? いやだって、コーヒー飲むんじゃない?」
「自分でやるので大丈夫です。まったく。兄さんがいるとついやってもらいたくなります」
「だよねー。そうやってすぐに女の子と仲良くなるんだから。でも、それがお兄ちゃんの良いところなんだけど……」
「ですね」
「そうか?」
特に意識してやっているというわけではないんだが。
「まったく。これだから無自覚系は……」
「ねー」
なんか俺が悪いことになってた。
――
それから色々と調整して金曜日の放課後。
「来てしまいましたお兄様」
「お兄来たよ」
玄関でくるみとこむぎを迎える。
「ごめんねー。時間帯が被らなかったらお兄ちゃんが迎えに行ったんだけど……」
残念ながらミウと被ったというか、時間帯的に迎えが間に合わなかったんだよね。
中学校だから終わる時間帯が大体同じだし。
車がなー。
車が使えればこの問題は一発で解決するけど、法律的に難しいらしいんだよね。
この前、イザナミ様に相談したけど、「さすがにそこまでは特別扱いできない」と言われたし。
「そんなに心配しなくても大丈夫ですよ、お兄様」
「お兄。あとこれお菓子。差し入れ」
「ああ。悪いねぇ……」
袋に入ったお菓子も持ってきてくれた。
コンビニで買ってきてくれたみたい。
あとでみんなで食べよう。
携帯電話を操作して、くるみたちの母親である久美子さんに「無事に2人を預かりました」とメールを入れておく。
「久しぶりです。ミウお姉様」
「うん。久しぶりだねくるみちゃん。こむぎちゃんもね?」
「うん。久しぶり。永遠お姉も」
「はい」
一気に家の中が賑やかになる。
ああ、いいねぇ。
美少女という理由が大きいけど、やっぱり華やかになる。
――
「それでさー。お兄ちゃんがさー」
「それは大変ですねミウお姉様。お兄様、あまり見知らぬ女性に粉をかけるのはいけません」
「え? 俺?」
カルボナーラを食べてたら唐突に話を振られた。
みんな同じ味だけど、今日の夕食はパスタにした。
「お兄。あーんしてほしいって言ったら食べさせてくれる?」
「ん? いいけど。今からする?」
「する」
「「はぁ……」」
「これがお兄様なのですね。さすがです」
「え?」
ミウと永遠が呆れて、くるみが笑みを浮かべていた。
こむぎの方は早く食べさせてと言わんばかりに口を開けてるし。
こむぎの傍に行ってから、気持ち少なめにフォークで巻いたカルボナーラを彼女に食べさせる。
「どう? おいしい?」
「おいしい。もっと――」
「はいよ。あーん」
頬を少し赤くしたこむぎの口にカルボナーラを追加する。
ふふ、かわいい。
「むぅ。じゃあ、ミウがお兄ちゃんにお兄ちゃんの分を食べさせてあげます」
「わかった。あとくるみは?」
「え? 私もですか?」
「こむぎばかりだと不公平だからね」
ちゃんとみんな平等にするよ?
「じゃ、じゃあ、お願いしますお兄様」
「わかった。それが終わったら永遠ね?」
「兄さん。私は自分で食べれますよ。あとパスタが冷めます」
「駄目。俺がやりたいから」
「はぁ、仕方ないですね……」
それからみんなでわいわいやって家族水入らずの時間を過ごした。




