第71話・装備更新
「へー。それでこれがお兄ちゃんの装備なんだね?」
自分の部屋で、買ってきた装備を装着した姿をミウにお披露目する。
じろじろと見られてちょっと恥ずかしい。
「はい。予算の関係で作業用ヘルメットになっていますが、防弾ベストに脇差し、棒手裏剣、サバイバルナイフとなってます。兄さんの名前に因んで忍者をイメージした装備もありましたが、どうもコスプレ感が抜けずこちらにしました。あ、ミリタリーリュックはそのままですが、靴はスニーカーから戦闘靴にしてます」
永遠がミウに説明する。
ミウの迎えに行った後、永遠と一緒に雑居ビルの1階にあった武器屋に行き、そこで装備を取り揃えてきた。
最初は脇差しじゃなくて、自分の名前に因んで忍者刀でも買おうと思っていたんだけど。
武器屋の女店主さんに聞いてみたら、「それはコスプレ用しかない」と言われてしまい、脇差しになったのだ。
あとは自動拳銃も欲しかったが、手続きと予算の関係から今日は見送った。
それでも申請書は出したから、あとは許可待ち。
許可が下りたら下りたで、今度は教習を受けないといけないけど。
ちなみに、棒手裏剣は飛び道具というか、拳銃の代わりだ。
クロスボウも法改正で規制され、おもちゃ以外持てないから意味ないし。
「永遠お姉ちゃん。これは探索者として普通なの?」
「いえ、違いますね。普通でしたら刀、いわゆる打刀と脇差しになります。時代劇の侍のような感じですね。まあ、私のように魔法使いでしたら、近接装備はナイフが1本あれば十分ですし。兄さんは意外と器用でしたので、このような装備となっています」
「へー、なるほどぉ。じゃあ、お兄ちゃん。一緒に写真撮ろ?」
ミウが俺の携帯電話を両手で持つ。
一応、ミウもスマホは持っているが、俺のやつは俺が意識を取り戻した後に買った最新モデルだ。
だから、ミウのスマホよりもカメラの性能が上で、写真を撮る際は俺の携帯がよく使われるのだ。
「わかった。永遠もこっちね?」
「私もですか?」
眉にしわを寄せてどこか嫌そうな顔をする永遠。
「せっかくだからさ? 一緒に撮ろうよ?」
「うん。永遠お姉ちゃんも一緒に写ろ?」
「仕方ないですね……」
ミウの言葉に妥協するように許可を出す永遠。
そして、一緒に俺の携帯で写真を撮る。
最初は普通に撮った。
2枚目はスマホ用の三脚にスマホを置いて、ミウと永遠を抱き寄せるようにしてパシャリ。
つり目を大きく見開いた永遠の姿が映ってた。
驚いた姿もやっぱり美人だね、永遠は。
その一方、ミウは慣れてますよと言わんばかりに笑顔を浮かべていた。
ちょっと顔が赤いけど、これはこれで良いと思う。
「兄さん。いつもこんなことしてるんですか?」
永遠の携帯に写真を送信すると、呆れた様子の彼女からそんなことを言われた。
「うん。ほら、前にミウと撮った写真だけどかわいいでしょ?」
ミウを抱っこして撮った写真を永遠に見せる。
「ミウ……」
「永遠お姉ちゃん。人生諦めるのも肝心だよ?」
ミウに視線を移す永遠であったが、にこにこと笑みを浮かべたミウにそう返されていた。
――
それから自室に戻り、動画サイトで武器の使い方や整備の方法などを学んだ。
そして、寝る前に片膝を地面に着いて、不死の選ばれし者のようにイザナミ様へと祈りを捧げる。
『久しぶりですね忍』
ふとイザナミ様と繋がった気がした。
体が動かないものの、内心で深々と礼をする。
『はい。それで本日はどのようなご用件でしょうか?』
『今日は定期連絡ってやつかな。ちょっと時間がかかったみたいだけど、約束通りハーレム作ったみたいだからね? 私たちは満足しているわ』
『ありがとうございます』
『チート能力とか加護とかは与えられないけど、サホビメちゃんとアナトちゃんからも“素晴らしいです”とのお褒めの言葉もあるわよ?』
『はは。ありがたき幸せ』
たぶん俺が異世界転生する際に協力した神様たちだろう。
チート能力がないのは残念だが、神様からお褒めの言葉を頂いて悪い気はしない。
『それと。忍は私との約束を果たしたから、私の信者として正式に認めることになったの。だから、女神教の教会で書類手続きしてほしいんだけど大丈夫? もちろん、手続きは時間があるときでいいんだけど……』
『そうなんですか?』
『うん。実は異世界転生したときから私の信者にしてたんだけど、女神教での正式な手続きしてなかったじゃん? だから、この際に正式な手続きしてもらおうと思って。もちろん、年会費とかは一切かからないから安心してね?』
『わかりました。それで、どこの教会に行けばいいのでしょうか?』
『基本はどこでもいいから、忍の家から一番近いところでいいわよ? 女神教の方に私から話を通しておくから。あっ、でも、本人確認のために身分証明書とかは持って行ってね? 書類は女神教で用意している専用のやつがあるからいいんだけど――』
それから、イザナミ様と話す。
久しぶりだったこともあり、イザナミ様との会話が少し弾んでしまったから、その夫であるイザナギ様から不興を買わないかちょっと心配になったけど。
イザナミ様としては問題ないと言ってたが、夫がいる以上、ちょっとは気を使うのだ。
――
翌朝、ミウを送ってから女神教の教会による。
とんがり屋根の白い洋風の建物だ。
十字架がないことをのぞけば、標準的な教会と言えるだろう。
玄関で掃き掃除をしていた若いシスターさんに声をかけて事情を話したら、すぐに案内されて手続きとなった。
さすがイザナミ様だね。
用意がいい。
教会で手続きを終えた後は、そのまま学校に行って校内にある探索者協会で手続きをする。
普段よりも1時間半ほど遅かったが、受付には例の茶髪を三つ編みにした受付担当者さんがいて。
武装した俺の姿を上から下まで見た後に「ようやく装備を整えて来たんですね?」と声をかけられた。
装備を買ってきたから今日は遅かったんだろうと思っているみたいだったけど。
まあいいや。
遅れた分、少しペースを上げて行かないといけない。
(さてと。今日もお仕事を頑張らないとな――)
白い作業用ヘルメットをかぶってダンジョンへと足を踏み入れた。




