第67話・妹たちの世話をするのは兄として当たり前
「今日はミューズリーに生のイチゴを入れてみたんだけど大丈夫だった?」
くるみとこむぎに聞いてみる。
イチゴはヘタを取って適当にくし切りにしたものだけど。
大粒で有名な品種のやつだから味に問題はないはずだ。
「はい。私は大丈夫です」
「うん。私も問題ない」
くるみとこむぎの表情をうかがうも無理しているようには感じない。
なら大丈夫かな?
前世にいた弟たちは果物が苦手でほとんど食べなかったんだよね。
イチゴは果実的野菜だけど。
それからくるみとこむぎを交えてみんなで食事をする。
最初は口に合うかどうかわからなかったから不安だったが、母親が朝早くに仕事に行く都合から、朝食は菓子パンになることが多いそうなのだ。
だから、こういうのは新鮮らしい。
ちょっと心配だが、事情が事情だから仕方ないだろう。
朝は何かと忙しいからね。
栄養バランスの問題はあるが、朝食後の後片付けを減らすという意味では合理的だ。
菓子パンだと少しは日持ちするし、持ち運びもできるから、お昼ご飯やおやつに回すこともできる。
「くるみ、こむぎ。何かあったら、気軽にお兄ちゃんのところに遊びに来ていいからね? 歓迎するよ?」
「は、はい。わかりましたお兄様」
「わかったお兄」
ふと視線を感じたのでミウと永遠を見るも、2人そろってジト目だった。
「おにーちゃん」
「兄さん」
「え? 俺何かした?」
特に変なことを言った気はないんだけど。
「何かあったときに頼れる人がいるというのは心強いのですよ、兄さん?」
「え? そう?」
「そうだよお兄ちゃん。ミウのときだって永遠お姉ちゃんのときだってそうだったでしょ?」
「そうか? 妹の世話をするのは兄として当たり前じゃないか? まあ、彼氏がいるとかだったらしないけど……」
「当たり前……」
こむぎが復唱するようにつぶやく。
そそ、当たり前だよ。
何よりもこんなにかわいい妹たちだからね。
彼氏がいない以上、そのお世話をするのは当然。
「お兄ちゃん。世の中にはね。お兄ちゃんの言う“当たり前”が出来ない人が多いんだよ?」
「そうか?」
「そうですよ。兄さんはそれが自然とできるから私は兄さんに結婚を申し込んだんです。少しは自覚してください。そのうち変な女にひっかかりますよ」
「だよね永遠お姉ちゃん? だから、くるみちゃんとこむぎちゃんも協力してね? ミウのお兄ちゃん、ラノベとかにいる無自覚系主人公を地で行くタイプだから」
「はい。わかってますミウお姉様」
「わかったミウ姉」
なんかそこだけ意見が一致したように全員がうなずいていた。
そこまで無自覚系な気はないんだけどなぁ。
――
朝食を終えてミウと洗い物をしようとしたらくるみも手伝ってくれた。
永遠とこむぎは食後のコーヒーを飲みながら一服しているけど。
こむぎはコーヒーというよりも牛乳と砂糖をたっぷりと入れたコーヒー牛乳に近いものだった。
ちなみに、永遠は無糖派。
「助かったよ。くるみ。ありがとね?」
「いえ。当然のことをしたまでです」
「さてと。じゃあ、みんなで少しお話しようかな?」
「お兄ちゃん。コーヒーいれたよ? もちろん、くるみちゃんの分もね? あ、お砂糖と牛乳も出しといたから」
「ありがとミウ」
「ありがとうございますミウお姉様」
それからみんなで色々と話したり、ミウが持ってきた億万長者を目指すボードゲームで遊んだりした。
そして、一通り遊んだら解散。
永遠とこむぎは自分たちの部屋で休み、俺とミウとくるみはたまった家事をこなす。
くるみの話では、こむぎは面倒臭がってあまり家事をしないらしい。
永遠も家事はあまりしないが、家庭教師の代わりに俺やミウの魔法や勉強を見てもらっていたり、偶に魔法を使って掃除とかをしてもらうから、完全に何もしないというわけではないのだ。
――
「むむむ。これがお兄様の装備なのですか?」
くるみが俺の茶色いミリタリーリュックを見る。
そこまで珍しいものではないんだけど、探索者の装備に興味があったみたいなのだ。
だから、俺の部屋で彼女たちにそれを見せている。
「それでお兄。武器とか鎧は?」
「学校から借りてるから今はもってないね。あ、鎧は革の鎧で、剣はブロードソードっていう標準的なやつだけど……」
「そうなんだ……」
ちょっと残念そうな表情を浮かべるこむぎ。
「それでお兄様。偶に探索者の動画とかを見るのですが、お兄様よりも小さめのリュックを背負っている人が多い気がします。あと動画配信とかはしないのですか?」
「ああ。俺の場合はソロというか、単独で動いているから、どうしても荷物が多くなるんだよね。それに撮影できるほどの余裕もないし、何よりも戦う時の癖とかも全世界に公開するわけだから、配信はしたくないかな。あとはうっかり口を滑らせて炎上したりするかもしれないし」
「なるほど……」
前世と同じように些細なことで炎上する人は多いのだ。
正直、動画配信は考えたんだけど、編集する時間とかも必要になるし、デメリットの方が多いと判断して見送った。
「それでお兄。こっちの黒のショルダーバッグは?」
「それは普段使い用」
机の隣に置いてた鞄を見るこむぎ。
メッセンジャーバッグに分類されるもので、ちょっと大きめのやつ。
普段使い用であるが、色々と入るからミウや永遠とデートするときに使うこともあるし、ダンジョンが解禁されるまではその鞄を持って学校に行ってた。
ただ、ダンジョンが解禁されてからは、水や食料などをダンジョン内に持ち込んだり、ドロップアイテムなどを持ち帰る必要があったから、大型のミリタリーリュックを用意したんだよね。
軍用モデルらしいから、鎧を着けた上からでも背負いやすいし、動きやすい。
より大きい超大型とかもあったが、剣で戦いながらとなるとさすがに無理があったので、一回り小さいが大型のものにした。
ゲームやポーターだったら、迷わず超大型のものを選ぶのだが。
これが現実ってやつだよね。
ゲームでは気にならないところが気になるというか、問題になるというか。
「お兄ちゃん。ご飯できたよ?」
引き戸を横にスライドさせつつ、ピンク色のエプロンを着けたミウから声をかけてくる。
「ああ。わかった」
今日の夕食はミウが「妹たちに自分の手料理を振る舞いたい」と言ってきたので彼女に任せたのだ。
「それでミウお姉。今日のご飯は何?」
「ふふ。今日はみんな大好きなカレーだよ?」
「カレーですか? 久しぶりです」
なんかくるみが喜んでいた。
「そうなの?」
「はい。洗い物が意外と大変なので普段はレトルトなんです」
「あー、確かに……」
ミウがうんうんとうなずく。
今の時代は電子レンジ対応のレトルト食品も多くなったからね。
しかも手頃な価格で非常食にもなるから、今世でもよく世話になっている。
「じゃあ、永遠を呼んでくるね?」
「うん。お願いお兄ちゃん――」




