第64話・双子の妹
「ええと、その……」
久美子さんは言葉に困っていた。
まさか自分が不倫した相手の妻に隠し子がいるとは思わなかったようだ。
そして、普通に同居しているということも。
くるみとこむぎは、ちょっと緊張しているのか借りてきた猫みたいにおとなしい。
それはミウと永遠も同じだけど。
「認知の件に関しては自分の妹である以上は仕方ないと考えています。それに永遠に遺産を分ける以上、くるみとこむぎには遺産を分けないというわけにはいかないでしょう?」
改めて自分の考えを口にする。
ミウと永遠には事前に了承を取っていたので特に問題はない。
これがもしも男だったり、生意気な態度の女であったら、この話はなかったことになってたけど。
ぱっと見は品行方正に見えるし、何よりもかわいいのでヨシ。
かわいいは正義。
これで財産を食いつぶすような女だったら俺に見る目がなかったということにする。
「あ、ありがとうございます」
「それと養育費の月4万ですがそれも自分が支払いましょう。生々しい話ですが、生活に困窮して自殺や妹たちが体を売るというような話はあまり好きではないので」
どちらかと言えば、俺は買う側の人間だけど。
前世を含めて女を買ったことは一度もない。
女を買うよりも、趣味や投資にお金を回していたからね。
「よろしいのですか?」
「先ほども言いましたが1日1万円ぐらいならダンジョンで稼いでいるのです。それでも月に最低4日ほどはかかりますが、無理というほどではありません」
正直に言えばもっと稼いでいるのだが、現状で彼女たちに出せる金額はそれぐらいだ。
永遠の分は要らないと言われたけど。
実はこっそり準備している。
「ですが、さすがに未成年から取るのはさすがに……」
「しかし、それでは久美子さんの生活が厳しくなるのでは?」
「それはそうですが……」
「ならば彼女たちが困窮しないためにも自分が出すべきでしょう。まあ、もしも妹たちが家にも帰らず夜な夜な遊び歩くというような人たちでしたら、この話はなかったことになりますが……」
ちらっと、くるみとこむぎの表情をうかがうものの、特にこれと言った反応はない。
緊張しているのかな?
だから、普段から遊び歩いているというわけではないのだろう。
それならお金を出してもいい。
「わかりました。ですが、お金は用意できた時で構いませんので……」
「ええ。それともう1つ。永遠なのですが今は自分が預かっているという形なのです。ですので、仕事や家事が大変でしたら、土日などはうちにお泊りするという形で、くるみとこむぎを預かっても構いません」
「ああ。お泊りですね?」
先ほども軽くは説明したけど。
「ええ。1部屋しか空いていないのですが、2人ぐらいなら寝れるでしょう。お風呂は1つしかありませんが、トイレは2つありますし、自分は家事ができるので特に問題ないのです」
「ですが、ご負担では……」
「まあ、負担がないと言えば嘘になりますが、2人ぐらいなら問題はないでしょう。久美子さんも正社員である以上、お仕事は大変でしょう?」
「え、ええ。まあ。わかりました。では、お言葉に甘えて……」
それから細々としたことを決めて、今日は解散となった。
彼女たちはさっそく来週の土日にお泊りに来るそう。
こちらも色々と準備しないといけない。
DNA鑑定の結果よりもお泊りの方が早くなるが特に問題はないだろう。
もしも血がつながっていなかったら、母親の方から“詳しく”話を聞くことになりそうだけど。
そうなったらそうなったで、義理の妹として面倒を見よう。
義妹も嫌いではないのだ。
ラノベやエロゲでは定番だったし。
俺としては妹ではなく他人という扱いになるけどね。
――
「お兄ちゃん。くるみとこむぎちゃんたちが思ったよりもかわいかったからって恰好つけすぎー。あと、くるみちゃんのおっぱい見過ぎー」
久美子さんたちを見送った後、ミウが不機嫌そうに声をかけてきた。
「そ、そうか?」
「ええ。そうですよ兄さん。くるみとこむぎを見てデレっと鼻の下を伸ばしていました。私とミウだけでは飽き足らず彼女たちまで手を出す気でしょう?」
永遠の言葉にもどことなく棘がある感じがする。
彼女にはまだ手を出していないというのに。
なんだヤキモチか?
かわいいやつめ。
「手を出すというか、妹じゃん? “腹違い”だけど……」
かわいくないかと言われたら嘘になるけど。
ミウや永遠とはまたちょっと違う感じでかわいかったし。
くるみは真面目な感じで、こむぎは不思議系って感じだ。
「へー。“腹違い”って言っても、お兄ちゃんの大好きな妹には変わりないでしょ?」
「そうです。信用できませんね。恋人がいないのならしれっと立候補する気ですよね? 私のときも兄さんはそうでした」
「だよね、永遠お姉ちゃん。お兄ちゃんのことだから、しれっとくるみとこむぎちゃんのことも口説いてそう」
「はい。玄関で回復魔法を使ったようですが、それでしれっと口説くのが兄さんです。絶対、きれいとかかわいいとか言ってます。私に言ったように」
「ねー」
妙なところで意見が一致していた。
なんだかんだで姉妹で通じるところがあるのだろう。
いがみ合うよりは十分マシなので別に構わないが。
――
「お兄様。今日からよろしくお願いします」
「よろしく、お願いします。お兄」
あっという間に土曜日になり、くるみとこむぎがやってきた。
今日は中学校の制服ではなかった。
くるみは襟とフリルが付いたブラウスにミニスカート、こむぎは襟の無いブラウスにジャンパスカートだった。
共にブラウスは白色で、スカートの色は黒色だ。
気合いを入れてきたのだろう。
どちらも甲乙つけがたい。
「ああ、こちらこそよろしくね。くるみ、こむぎ。それよりも2人ともかわいい服だね。とてもよく似合っているよ」
「そ、そうですか?」
「あ、ありがと……」
「ささ。どうぞ」
ちょっと顔を赤くしてたくるみとこむぎをリビングに案内すると、ミウと永遠がジト目で俺を見てた。
「お兄ちゃん。やっぱり口説いてたね」
「まったく兄さんは油断も隙もないですね。しれっと椅子も引いて座らせましたし」
ミウと永遠の小言をスルーしながらも自分の席に着く。
くるみとこむぎはちょっと緊張した顔つきになってたけど。
「さてと。じゃあ、改めて自己紹介かな?」
「では。私は永遠と書いて“とわ”と呼びます。名字は空野。兄さんの種違い――父親が違う妹です」
「ミウはカタカナでミウって書きます。お兄ちゃんとはお父さんもお母さんも同じです。ですので、名字はお兄ちゃんと同じ篠と言います」
永遠に釣られて、ミウがちょっと緊張気味に自己紹介した。
そして、くるみとこむぎが俺を見る。
「じゃあ、次は俺か。俺の名前は篠忍。忍者の忍と書いて“しのぶ”と言う――」




