第61話・永遠(とわ)との共同生活
「あなたたち。いつもそれをやっているのですか?」
永遠を預かった翌日。
彼女は目元をピクピクと引きつらせて俺たちを見てた。
目が鋭いのでちょっと怖い。
「毎回ではないけど、ミウがやりたいと言った時は……」
ミウを抱っこしてミューズリーにヨーグルトをかけたものを食べさせてただけである。
今日は生のパイナップル入りだけど。
朝食の内容については永遠もそれで満足したみたいので特に何も言われなかった。
「永遠もする? ミウが食べ終わってからになるけど……」
ちらっと時計を見るも時間帯的にはまだ大丈夫だと思う。
今日は月曜日なのでこれから学校があるけど。
「いえ。私は大丈夫です」
「お兄ちゃん。ごはん」
「あ、ごめんごめん。はい、あーん……」
スプーンですくってミューズリーをミウの口に運ぶ。
最初はミウも遠慮するかな?と思ったんだけど、特にそういうこともなかった。
「お兄ちゃん好き」
「ふふ。俺もだよミウ」
「……」
なんミウが永遠にこの関係を見せつけているような感じがするのだが、まあいいだろう。
深く気にしたら負けだ。
「それと永遠も甘えたくなったら遠慮しなくてもいいからね? 俺も永遠のお兄ちゃんとしてできる限りのことはするから」
「そ、そうですか……」
「むぅ。お兄ちゃんのすけこましー、じごろー、へんたいー。永遠お姉ちゃんだって実の妹なんだよ?」
「別にエッチなことするわけじゃないから大丈夫じゃない? というか、妹を甘やかす方法がこれ以外にわからない」
これ以外に妹を甘やかす方法があるのなら俺も知りたい。
「ふーん。そっか。じゃあ、永遠お姉ちゃんも交換するね?」
「だから私はしなくて結構です」
「いいの? じゃあ、ミウがお兄ちゃんを独占するよ?」
「どうぞご自由に――」
「じゃあ、次は永遠の番だね」
居心地が悪くなったように食事を途中で止めて席を立とうとした彼女を引き留める。
「だから私はしなくても……」
「俺がしたいの。1回だけでいいからさ。“どうしても”ということで。この通り……」
「このとーり」
ミウを抱っこしたまま頭を下げるも、ミウもその真似する。
「……仕方ないですね。今回だけですよ」
それから永遠を抱っこして、彼女に食べさせてみた。
ちょっと顔を赤くしてたけど、「意外と悪くない」と言わんばかりの表情を浮かべており、ちょっと楽しかった。
まあ、それを見てたミウはちょっと頬を膨らませていたけど。
あとでたっぷりかわいがってあげよう。
――
「それが永遠の制服なんだね。初めて見たけど似合ってるね。きれいだよ?」
左足側にスリットが入った黒いドレス。
動くと偶にガーターベルトがちらっと見える。
正直、学生服というよりもパーティー用のドレスに近い。
申し訳なさそうに魔女学園の校章が左胸に入っているので、それがドレスではなく制服というのはわかるけど。
魔女学園の校章は黄色の盾の中に立ち上がった黒い猫が描かれている。
ちなみに、俺が通う探索者高校の校章は、桜の花の真ん中に「探」という文字があるものだ。
「兄さん。目がエッチですよ。あと胸を見過ぎです」
「いやだって……」
えちぃもん。
特にスリット。
こんな服装を中学生にさせるのは問題があるんじゃないの?
まあ、できるのならこの服のままそういうことをしてみたいけど。
「これは伝統的な服装なので仕方ないのですよ」
「そうなの?」
「はい。スリット入りのものはアレンジとされますが、学校で公式に認められているものですよ? 探索者にもいませんか?」
「まあ、探索者はねぇ。普通に際どい服装をしているのもいるけど、あれは例外じゃん?」
ダンジョンは神の試練をうたうところなのだ。
そういう事情から、ちょっと変な条件が設定されているところがあり、偶に男がそういう格好をしないといけないところがある。
そのため、ダンジョンによってはちょっとしたコスプレ会場になっているところもあるとか。
あとは動画配信をやっている人が視聴者数やアクセス数を稼ぐためにそういう格好だったりすることがある。
そこらへんは前世と変わらないと思うけど。
前世と違って、装備ボーナスが乗るのが明確にわかるから、みんな積極的なんだよね。
だから、動画サイトにはそういう動画が溢れているし、街中でビキニアーマー姿の女性と遭遇することも割とある。
「それと同じですよ。こちらには歴史というか伝統がありますからね……」
「伝統ねぇ……」
「それで兄さんは先ほどから手を広げて何をしているのですか?」
「何ってハグ待ちだけど?」
いわゆる行ってきますのハグ待ち。
最初はミウも戸惑ってたけど、今となっては自分からハグしてくる。
「それはする必要があるのですか?」
「嫌ならいいけど。ミウにはしているから必要かな?と思って」
「そうですか。ですが私は別にいりません」
「そう? じゃあ、今回だけどうしてもということでいい? 初めてうちから学校に行く日だからさ。特別に……」
「はぁ。仕方ないですね。今回だけですからね?」
永遠が鋭いつり目をふいと逸らし、折れるように許可を出してきた。
やった。
すかさず一歩前に出て彼女の背中に手を回して軽くハグする。
「行ってらっしゃい永遠。今日も学校頑張ってね?」
ミウと同じようにハグしたまま彼女に声をかける。
胸の柔らかさは圧倒的に永遠の方が上だけど
やっぱり女の子の体は柔らかいね。
ミウとはちょっと違うけど、女の子らしいいい匂いがする。
「は、はい」
永遠が声を返してきたところでハグを終わらせて彼女を見送った。
ちょっと顔が赤くなってた気がする。
恥ずかしかったのかな?
学園バスの都合から俺たちよりも先に出ることになるけど、やっぱり女の子を1人で送るのはちょっと不安だ。
過保護と言われるかもしれないけど、魔法がある分、前世の日本に比べると、治安がちょっと悪い気がするんだよね。
リビングに戻ろうとしたら、物陰からジトっとした目でこちらを見ていたミウと目が合った。
「おにーちゃん。やっぱり永遠おねーちゃんにもハグしたんだ」
「だってミウにもしているから永遠も仲間外れは駄目かな?と思って……」
「ふーん。じゃあ、ミウもする」
「OK。わかった」
手を広げて近づいてきたミウをぎゅっとハグする。
家を出るのはちょっと早いから、そのままミウとハグして過ごす。
ダンスではないけど、偶に体を左右に揺らしてみる。
ついでにちゅっと頭にキスしてみたら、ミウが顔を真っ赤にしてた。
かわいい。
そして、家を出る時間になったら、仲良くミウと手をつないで学校へと向かった。




